ファームアニマルウェルフェア・インパクト評価 2026
Farm Animal Welfare Impact & Sustainability Evaluation

FARMWISE Impact 2026

FARMWISE Impact 2026(ファームワイズインパクト2026)は、日本の主要企業を対象に、ファームアニマルウェルフェアに関する取り組みが実際の福祉改善につながる「影響力(インパクト)」をどの程度備えているかを評価する、NGO主導の企業評価です。 本評価における「インパクト」とは、理念や宣言の有無にとどまらず、方針の具体性、実施状況、サプライチェーンへの適用範囲、リスク管理、情報公開の水準などを通じて、飼育環境や管理の改善に結びつく仕組みが構築されているかを指します。 また、アニマルウェルフェアへの対応は、社会の持続可能性とも接続しており、本評価は、その社会的影響を明らかにする枠組みでもあります。
FARMWISE Impact 2026は、単純な順位付けを目的とするものではありません。国際的に求められるアニマルウェルフェア水準と比較しながら、日本企業の到達度、課題、構造的ギャップを可視化することを目的としています。

識者コメント

畜産AWに関係する人々にとって意義深いものになる可能性

大木茂教授
麻布大学 動物応用科学科 動物資源経済学研究室

レポートの画期的な意義

 私は畜産物を美味しく気持ちよくいただくためにそしてこの産業を担う人材を応援するためにアニマルウェルフェア(AW)は最も重要な考え方であると思い教育研究に取り組んでいる。

 まだ業界などでは余計な手間とコストが増えるばかりという経営経済的な理由を始め様々な考えからAWを敬遠する向きも少なくなく、畜種ごとの業界団体も概ね政府の技術的指針(2023年7月)に取り組んでいこうとしている段階にある。

 そうした中で、主に生産以外の各企業がどのようなAW政策や具体的取組みを行っているかを業種横断的に107社(商社・小売・外食・製造)にわたり評価を試みたこのレポートは、日本における畜産AWに関係する人々にとって意義深いものになる可能性を秘めている。

レポートは、主として各企業の公開文書に依拠して評価している点で公平性が担保されていると思われる。項目ごとに業種・企業を横並びで公表されることは、評価される企業にとってはあまり愉快ではないだろう。しかし懸命に取組む企業にとってはそれを可視化して評価してもらえることはさらなる励みになると思われる。そして何より消費者(世間)からみてとても役立つ資料になる。多くの企業や組織で「こういうデータもありますね」として、畜産AWの取組み進捗状況を認識することになるからである。

こうした作業は世界的にはいくつか存在しておりよく知られている。一つは、投資家への情報提供を目的として世界の主要企業を評価したBBFAWやFAIRR。もう一つはAW政策・法律の進展を動物保護指数として世界50カ国を評価したWAPである。また英国内のスーパーマーケット28社(2022年)のAW政策などを評価したCIWFのウェルフェアポリシーサーベイなどもよく知られている。BBFAWやFAIRRで取り上げられている日本企業はわずかであるが、こういう文書でしか日本の畜産食品に関わる企業のAWの取組みを理解する方法は存在しなかった。その意味で、これは、日本における畜産AW推進にとって画期的なレポートと言っていい。

レポートの信頼性を高めていくのは社会の役割

とはいえ、あくまでもARCが設定した評価項目・基準・配点での判断である点は、気になるところである。とくに各畜種におけるAW評価に関し、質問6から13に記された内容が、「現時点で」AW推進にとって「最もふさわしいか」という点は畜産AW推進系でも議論が分かれる点もありそうである。

出来ればこれをたたき台に、いくつかの畜産AW団体などが協力して内容の議論をし、日本版畜産AW企業評価項目を畜種ごとステージごとに、動物・施設・管理の各側面に関して議論してほしいと思う。困難も伴うかもしれないが、その過程を経て初めて日本における真に社会的影響力のある動物擁護団体・ネットワークが形成されるのではないか。その芽を育ててほしい。

評価内容から見る企業取組みのばらつき

【全体】

評価項目は「1.畜産物・水産物のアニマルウェルフェアの全体方針」(5問11点)。「2.閉鎖的監禁・集約的システムからくる動物性素材を切り替えるための調達方針」(8問51点)。「3.動物性素材からの転換」(2問8点)「4.ガバナンス」(1問1点)。合計4分野16項目71点からなる。業種として「畜産+水産+代替タンパク質」の各分野について、「AW方針」「AW素材の調達実態」「動物性素材からの転換方針」を評価しており、実際にはAW政策の有無、実際の調達におけるAW素材の取扱が点数化に関わってくる。以下、企業の得点状況を概観しよう。

【総合計】

 79点満点中、最高点24点、最低点0点。平均4.28±4.81(標準偏差)点。

 20~24点2社、15~19点4社、10~14点9社、8~9点5社。(8点以上20社)。

 2~3点33社、1点16社、0点以下18社

【1.AW方針】

 11点満点中、最高点7点、最低点0点。平均1.40±1.89点。

 3点以上が23企業(小売2、卸2,外食3、製造16)の一方、0点53社と半分近くを占め、1点18社である。

【2.AW素材の調達実態】

 59点満点中、最高点12点、最低点0点、平均1.16±2.38点。

 10点以上3社、5~9点4社、3~4点9社。2点9社、1点16社、0点以下66社である。

【3.動物性素材からの転換】

 8点満点中、最高点5点、最低0点。平均1.18±1.17点。

 5点2社、4点5社、3点2社、2点29社、1点32社、0点37社となっている。

 特徴を3点指摘すると、

①高得点企業と低得点企業のばらつきが極めて大きい

まず、分野別・得点別企業数をみると、得点を獲得している企業が少なく、1の方針では約半数が、2の調達実態では約3分の2が0点であり、1点も含めると8割近くの企業がほとんど点が取れていない状況にある。

②高得点企業は、多国籍な活動をおこなう企業に多い傾向が見てとれる

高得点企業(12点以上)11社は、日本ハム、スターゼン、イオン、セブン&アイホールディングス、丸大食品、ブルボン、マルハニチロ、日本KFCホールディングス、ニッスイ、味の素、プリマハムであり、国際的な企業評価レポートで評価対象とされた企業を中心に欧米で事業活動を行う企業が多く含まれている。

この意味で、AWの企業における取組みは、海外発で日本にじわじわと浸透しているという傾向を読み取ることも出来るかもしれない。

その下で企業取得スコアのばらつきが大変大きいという意味は、実施している企業は各方面にわたって実施する一方で、実施していない企業はほとんど実施していないか自覚していないという状況になる。

③点数が取れない企業はAWの取組みが行われていないのか?

 低いスコアの企業が多いことをどう見るかは今後日本の畜産AWを考える上でのポイントである。

ここに取り上げられている企業の、とりわけ多くの社員の生活を支え当該分野を通じて社会に責任を果たす経営陣が「聞いたこともなければ考えたこともない」という事は考えられない。考えられることは、「意識的にAWの取組みを方針化していない」もしくは「文書に落とし込んでいない」ということではないか。従って意識し見直して文書化するだけでも、多くの企業でスコアアップが望めるだろう。

そして畜産AWを推進するには、各企業が文書化した政策をどのようにして実践に移すか、その後押しとなるような評価項目と基準・配点を提示することが求められる。それは、多分ARCの基準と比較して初歩的・基本的なところから始める必要があると思われるが、現時点の社会が求めることはそこにあるのだろう。そうして、多くの企業がそれなりの得点を得られるような項目・基準・配点を作れるならば、日本企業における畜産AWの取組みが促進され、このレポートの社会的評価も高まると思われる。

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