スターバックスコーヒージャパンが現在販売中の新商品、「クラブハウス石窯カンパーニュサンド」には、目玉焼き(当社によると目玉焼き風)が1つ使われています。当会支援者が同社お客様相談室に問い合わせたところ、使わている卵は市場の動向に応じ、平飼い卵が一部使用されているという回答をえました。じつはすでにスターバックスは、グローバルで2020年までのケージフリー移行を消費者に約束していました。しかし日本でケージフリー移行は先進的な取り組みであったこと、コロナ禍という社会情勢もあったと推察しますが、2020年当時には同社から平飼いへの移行を進捗も含めて、アニマルライツセンターは確認できませんでした。アニマルライツセンターはケージフリーへの取り組みを2017年ごろから始め、2019年に担当人材を増強したものの、その年の暮れには、外食企業の歴史的大災難となるコロナが蔓延しました。当時はスターバックス店舗に行くと、テーブルが間引きされ、客席の椅子の数は半減していたものです。営業時間も短縮されていました。実際スターバックスコーヒージャパンの2020年度(2020年4月~2021年3月期)の売り上げは、1738億円、14%減収でした。2020年という年は世界中の外食産業にとっても、ケージフリーにやアニマルライツセンターにも、まさに厳しい時代でした。もちろんコロナ禍でも本国スターバックスコーヒーのケージフリーは約束通り進んだと聞きますし、その反面、スターバックスコーヒージャパンとは正常なコミュニケーションさえままならない状況で、採卵鶏の未来は暗い状況といわざるをえませんでした。この年以降、具体的には2021年から企業との対話は増えて、その際にも各企業担当者から、2020年がケージフリー年限のスターバックスコーヒージャパンの動向について、質問されることが多々ありました。わたくしたちアニマルライツセンターとしては「切り替え年限にケージフリーが完成していなくても、動物保護団体として責めるものではない。取り組む姿勢こそが大事。消費者も同様であろう」と答えてきましたが、そのスタンスは今もかわりません。スターバックスコーヒージャパンに限らず、アニマルウェルフェア、ケージフリーの取り組みを進めるうえで、一番大切なのは透明性です。日本のように横並び意識が強い企業社会では、透明性こそがある意味で企業の心理的安全性を担保しあう前提となります。その意味で、今回スターバックスコーヒージャパンが消費者に、結果的に同社のケージフリー進捗を公開したことは良いことではありますし、日本のアニマルウェルフェア事情を反映した内容です。本国アメリカのスターバックスコーヒーはケージフリーについて、2022年段階で以下のステイトメントを発表しています。2022年11月現在、米国とカナダのすべての直営店で使用される卵と卵の原料の100%がケージフリーです。EMEAの直営店では、99.7%の卵と卵の原料がケージフリーです。中国や日本などのアジアの企業運営市場では、ケージフリー卵の生産は普及しておらず、まだ大規模な供給が利用できていません。スターバックスは、これらの市場における直営店舗の目標を達成するために、利用可能な供給を増やすことについて業界の利害関係者と関わり、協議し続けます。コーヒー豆という、環境や人権に関連の深い原材料をメインに取り扱うスターバックスコーヒーは、1992年には環境ミッションステートメントを発表し、1998年には生態系保護の視点を取り込んで、単なる環境対策から持続可能なサプライチェーンへと拡大させています。さらに同社は署名やデモを契機として2018年には国際的なケージフリー宣言を出し、サスティナビリティ戦略の集大成としました。1971年創業のスターバックスコーヒーにとって、ケージフリーを含めたサステナビリティ推進は、同社の地球規模の店舗拡大を、世界中が好意的に受け止める素地をつくった戦略の柱ともいうべきものです。2008年には急激に店舗数が増えたことによるサービスなどの質の低下、そもそも喫茶店らしからぬ大型エスプレッソマシンの武骨な存在などから客足が遠のき、一時期は投資家評価を落とし、企業価値を下げる危機に陥りました。(2007年アニュアルレポート※)それを回復させた理由の一つに、同社の先進的なサスティナビリティ戦略にあり、それがスターバックスに「サスティナブル体験の場」という新しい企業価値をもたらすことになりました。下記の表を見ても、その戦略がケージフリー移行によって完成しつつあるのがわかります。同社のケージフリー移行は、世界的なコロナ禍の時期と重なっており、ある意味ではコロナ禍にあっても途切れぬ成長をケージフリーが支えたと言えるわけです。年代店舗数の拡大状況(世界)主なサステナビリティ施策ケージフリー関連1992年約150店舗「環境ミッションステートメント」策定(再利用・リサイクル、廃棄物削減)―1998年約1,900店舗NGO「Conservation International」と提携し、環境配慮型コーヒー調達開始―2001年約4,700店舗「C.A.F.E. Practices」開始(社会・環境・品質基準)―2008年約16,000店舗マイカップ割引制度導入、再利用促進―2011年約17,000店舗LEED認証店舗展開拡大、エネルギー効率改善―2015年約23,000店舗2030年までに温室効果ガス・水使用・廃棄物50%削減目標設定―2018年約29,000店舗プラスチックストロー廃止宣言グローバルでケージフリー宣言(全直営店舗を対象)2019年約31,000店舗循環型経済戦略を強化(再利用カップモデル実証)実施準備段階2020年約32,000店舗「リソースポジティブ」宣言(温室効果ガス・水・廃棄物半減目標)アジア(日本以外)・北米・欧州でケージフリー移行2022年約35,000店舗植物性メニュー拡大、再エネ導入加速米国・カナダでケージフリー100%達成確認2024年約38,000店舗グローバル進捗開示、地域別サステナビリティロードマップ策定中国・日本向けケージフリーロードマップ作成(具体期限未公表)現在のスターバックスコーヒーが、日本のケージフリーに取り組んでいるのは冒頭の公表から間違いないと思われます。しかし、ほとんどのスーパーマーケットの売り場に平飼い卵がならぶようになった今、どれぐらいの量の平飼い卵を調達しているかの透明性に欠ける点が心配される点です。上の表が示す通り、スターバックスコーヒーの世界的な成長戦略の一環であるサステナビリティ推進は、日本を置いてきぼりのまま完成することはできません。消費者のみなさまも、「サスティナブル体験の場」であるスターバックスコーヒーのケージフリー進捗に関心を持ちながら、世界の中の日本のアニマルウェルフェアがどうあるべきかを考える、サスティナブルなコーヒータイムを過ごしませんか。※2007年アニュアルレポート、株式時価総額における解約不能オペレーティングリース割合による米SEC(米国証券取引委員会)EDGARhttps://www.sec.gov/Archives/edgar/data/829224/0000950134-07-024667-index.htm クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます) X Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます) Facebook クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます) X Share This Previous Article鳩の巣立ちを見守る商店街 No Newer Articles 2025/08/10