鶏のガススタニング:アニマルウェルフェアに補助がはじまった!

令和7年度補正予算が予算委員会で可決された。この中に、アニマルウェルフェアとして重要なものが含まれた。

鶏の屠殺時のガスによる意識喪失

鶏肉の流通構造の高度化や国際競争力の強化を図るための「アニマルウェルフェア対応型のスタニング設備」つまり鶏の「制御式空気気絶処理」(Controlled Atmosphere Stunning、CAS)のへの補助枠が新たに設けられた。

畜産物等流通構造高度化・輸出拡大事業のなかに、”先進モデル的食鳥処理施設整備事業”が新たに作られ、アニマルウェルフェア対応型のスタニング設備等の整備、機会導入の支援が行われるという。補助額は導入機材の半分が負担されるものだ。

これまでも強い農業づくり総合支援交付金の中の「家畜・食肉等の流通合理化に向けた施設整備への支援」で食鳥処理場の補助は可能であったが、この場合収益力強化が目的となっており、効率化や生産性の向上が求められ、アニマルウェルフェア自体への価値が認められたものではなかったとともに、利用が難しい食鳥処理場が多かった。とくに採卵鶏を屠殺する成鶏の食鳥処理場は、肉の生産量をアップすること自体に関与できる立場にはないため、この収益力強化、効率化という概念が壁になっていた。

新たな補助事業では、アニマルウェルフェアにもしっかり価値が認められている。
国が意識喪失が行われていないことに課題意識を持っていることも「国際的にも対応が急務となっているアニマルウェルフェア対応型のスタニング設備の導入」という表現から読み取ることができるのだ。

多くの人々の声が国に届きはじめた。

鶏や鴨の屠殺前に意識喪失を行うことは、世界中が義務化しているものだ。屠殺自体を話題にすることもタブー視されてきた日本では、屠殺場での動物の扱いが世界の70年以上前の状態となってしまい取り残されてきた。誰も声を上げないという異常さの中、アニマルライツセンターではこの問題を取り上げ続けた。とくに、意識喪失を行わない日本の屠殺では失敗が多く、失血しきれず生きたまま熱湯処理工程に入り、熱湯で湯で殺されるという事故が起こり続けている。失敗は増え続け、茹で殺された数がついには70万280羽にも及んだ(2023年)。

一般的に広く採用されてきた方法は、電気を通した水槽に逆さ吊りにした鶏の頭をつけ、感電させることで意識を失わせる方法だ。だが、複数の食鳥処理場に話を聞くと、この方法も失敗が多いことがわかってきた。電圧の大きさを常に調整する必要があったり、電気水槽の上を通るときに鶏が必死に頭を持ち上げてしまうこともある。とくに成鶏の食鳥処理場では、様々な大きさの鶏が運ばれてくることから、電圧の調整も難しいようだった。

世界では二酸化炭素と窒素、アルゴンなどを用いて、逆さ吊りにする前に意識を失わせるという、鶏にとってはより安楽な方法(CAS)が、今まさにつぎつぎ導入されていっている。日本は電気スタニングという失敗の多い方法を減るのではなく、早急にCAS導入に踏み切るべきなのだ。経済的にも、アニマルウェルフェア的にもそれが合理的だ。2017年からの電話調査、2019年にはアンケート調査とともに話し合いを開始し、2022年にも再度アンケートを行いつつ、ガススタニングへの意向を強く個別に求めてきた。話をした多くの食鳥処理場が、意識を新たにし、またアニマルウェルフェアのためであると同時に労働の改善になることに注目し、ガススタニングに前向きな姿勢を見せていた。

29件の話し合いに応じる食鳥処理場での放血不良数は着実に減っていたが、話し合いに応じない食鳥処理場(約100件)がその減少分を上回る数の失敗を毎年増やしてきた。鶏を茹で殺す数が70万を超えたときから、アニマルライツセンターでは抗議をより強めた。多くの市民も声を上げてきた。

多くの議員に助けを求めた中で、沼崎満子議員、山田勝彦議員、松木けんこう議員、みやかわ伸議員が農林水産省、厚生労働省、環境省に対する改善を強く求めてくださった。

このような中で、農林水産省が一歩、前に踏み出した。

次は食鳥処理場が頑張る番だ。動物たちの苦しみを減らすという結果まで、どうか、早急にたどり着いてほしい。

※超小規模食鳥処理場を含めると2000を超える

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