井の頭自然文化園の孤独な象(アジアゾウ)、はな子が亡くなった。 1949年からこれまでずっと、人の目に晒され、狭い檻に閉じ込められ、使役され続けた。 彼女の一生は、人間のいっときの娯楽のために、すべて奪われた。「雨水がたまらないように床が斜めに造られた運動場で61年もの間、4本脚で踏ん張っていたのだ。死後の解剖で前右脚が関節炎だったと判明したという。」 (2017年8月1日の東スポWEBニュース「ゾウのはな子」初映画化で動物園の問題提起へより引用)海外でははな子のかわいそうな環境と境遇に心を傷めた人々により、改善を求める署名が多数立ち上がっており、日本国内でも議論が活発になっていたが、結局は救いもないまま、その使役され続けた命を終えた。多くの人が、いっとき、楽しんだことだろう、そのことに対する感謝の気持ちを否定しはしない。しかし、彼女の人生はあからさまに最低だった。象はどんな動物なのか象は、1日のほとんどの時間(16時間~20時間)を探索や採食等をして過ごす動物だ。子供を守り、周りに注意をはらい、テリトリーを守り、エサと水を探す。特に夕方や明け方に活発に活動する。 残りの時間は、仲間とコミュニケーションや、水浴び、睡眠に使う。 1日の行動だけでなく、その人生も変化に富んでいる。 産まれてから家族や仲間と過ごし、遊び、学習する。配偶者を探し、子供ができたら子育てをし、その家族を守り、孫が生まれ、時に危険もあり、そして死んでいく。象は、自分で食べ物を探して採って食べたい、水浴びをしたい、砂浴びをしたい、仲間とコミュニケーションを取りたい、欲求を持つ。(象にかぎらず、多くの動物がもつ欲求です)動物園等に閉じ込められている場合、これらの欲求は満たされず、変化もなく、1日の大半をただ退屈に過ごすことになる。このなにもやることがないという状況は、象を精神的に追い詰めていく。 異常行動を起こしたり、攻撃的になったり、無気力になったりする。(しつこいようだが、これは人間を含め多くの動物にとって同じ)退屈という虐待「退屈」というのは、かなり恐ろしい虐待になりうる。 動物は人間に捉えられそこに閉じ込められ続ける理由を知らないわけだが、理由もわからずに、ある日捕まえられ、全く知らない場所に長距離移動させられ、家族も見当たらない。檻があって外部には出られず、自由を奪われる。 餌と水は出てくる。糞をすると概ね片付けられる。 しかし、やることはない。コミュニケーションを取れる可能性のある相手はエサや水を与えに来る人間。その人間も長時間一緒にいるわけではない。 やることがない。いつになってもそこから抜け出せない。本来なら、上述のような変化に富み、活発で、様々な体験をしながら一日、一生ををすごすはずなのに・・・さて、この一生退屈という状況、あなたは耐えられるだろうか。動物園とは・・・ 動物園はまさに退屈の虐待の場だ。 もちろん誘拐された動物およびその子孫の監禁の場でもある。 いっときの娯楽を得た人間は、帰る家があり、つぎの週末は別の娯楽を楽むことだろう。さらに、学校に行き、友人と遊び、スポーツをし、恋をしたり結婚したり、家族を作り、自分の意志で引っ越しをし、旅行をし、、、、、たくさんの自由を持っている。 しかし、象は、そこに取り残される。 彼らに自由はない。 (はな子の場合はコンクリートで鉄格子の)檻の中に閉じ込められたまま眠り、食事をしなくてはならない。 昼間の時間は小さな(はな子の場合はコンクリートの)放飼場に連れだされ、またそこでもやることはない。 下記の写真のようなコミュニケーションを取ることもできない。とくに孤独に飼育される象にとっては。あなたが本当に見たかったのは、子供に見せたかったのは、このようなコンクリートの上で不自然な行動しか取ることが出来ない象なのか・・・?本当はこんな感動する姿を見せたいのではないのか・・・? アジアゾウの写真はこちらのNATIONAL GEOGRAPHICのサイトからどうぞ(一部少し悲しげなものも入っているようです。)※以下はアフリカゾウ。動物園のこれからこのような環境を象に提供することが、日本の動物園に可能でだろうか? いいえ、100%不可能です。もう二度と、象をあらたに閉じ込めないこと。 この決断はとても重要な事だ。そのうえで、今すでに閉じ込められている象に対して、行動エンリッチメント、環境エンリッチメントを行い、クオリティー・オブ・ライフ(QOL)を高める必要がある。 動物園と動物園にお金を払う人々は、少しでも精神的に追い詰められないように、努力する義務があるだろう。時に、エンリッチメント行うと、動物の行動は改善され、人々の目も楽しませるようになる。 しかし、それに乗じて、さらなる金儲けを目論み、次なる犠牲者をうんではならない。 私達人間は、象の「幸せ」を叶える環境を用意することは出来ない。 できることは、野生の象の生息地を、密猟者や環境破壊から守ることだ。象牙を狙う人々(象牙商品の購入者)や、その地域を様々な理由で破壊する人々等々の問題に目を向けることだ。動物園にいくことでは決して無いし、ましてや日本の動物園の中に動物を閉じ込めることではない。井の頭公園の写真:Mona Longクリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article糸満ハーレー アヒル取り競争の廃止を Next Article責任ある安楽死を 2016/05/27