養鶏場との対話をすると、日本の肉用鶏の養鶏場では足の裏にできる皮膚炎=趾蹠皮膚炎の割合を把握しているというところがないことに気が付きます。アニマルウェルフェアの度合いを測るために重要な指標であるにも関わらず、記録されていません。海外ではこの割合を記録し、皮膚炎の割合を下げることを目標として設定し、それを報告する養鶏企業もあります。また、世界のアニマルウェルフェアが含まれた第三者認証でもこの割合は基準の一つに含まれることが一般的であるため、認証をとっていれば自ずと記録が必須になっているということです。例えばGlobalGAPなどでも基準に含まれています。さて、日本での発生割合はどの程度なのでしょうか。趾蹠皮膚炎を割り出した研究自体も非常に少ないという難儀差をまず指摘する必要があります。それだけアニマルウェルフェアが無視されているということでしょう。2021年宮城県食肉衛生検査所の研究「ブロイラーの趾蹠皮膚炎と廃棄率並びにカンピロバクター属菌保有率の関連」では、80.9%の発生率、重度のもの(スコア3)は25.4%であったと示されています。また、2008~2009年にかけて調査を行った研究では発生率は86.9%、重度のものは20.2%であることが示されています。宮城県の研究では、国内の発生割合が高いことが指摘されており、さらにカンピロバクターの感染の割合との相関関係も調査しています。結果は、相関関係があったとされています。つまり、趾蹠皮膚炎の発生が高い=食中毒菌保有率が高いということです。さらに、屠殺時に廃棄される割合との相関関係もあったことが示されており、これはつまり、足の裏に炎症を持ち苦しむ鶏は、それだけでなく、内蔵などにも疾患が広がっているということです。容易に想定できる結果ではありますが、数値的に示しているこの研究はとても価値があります。この内容は多くの論文で示されており、足裏の皮膚炎の発生は、グラム陽性球菌による全身細菌感染が発生しているという研究もあります*3。日頃から日本の鶏肉はサルモネラ菌保有率も薬剤耐性菌保有率も高いことを説明していますが、これはイコールで、肉が汚染されているということでもあり、アニマルウェルフェアが低いということを指しているのです。日本の趾蹠皮膚炎発生率が8割程度ですが、世界は違います。カーギルは7%であることを発表しており、PERDUE(米国鶏肉大手)も30%以下に保つことを目標にしてすでに達成しています。日本は世界の水準を逸脱しすぎです。悪い方に。国産鶏肉は、鶏がより苦しんでいて、病気持ちで、菌に汚染されていて、しかも外国産より高価だということです。国産というイメージだけで、日本人は、悪いものに高い金を出しています。卵の問題では高くなると仕入れられないなど価格が常に言い訳にされますが、鶏肉については悪いものに高い金を出すということを企業がやっているのです。実態を知らないからといえど、バカバカしい話です。国産鶏肉を使う企業から離れる、企業も消費者もこの方法が最も手っ取り早い安全の確保の方法です。アニマルライツセンターの活動を支えてください。寄付*1 ブロイラーの趾蹠皮膚炎 : わが国での実態調査を中心に 高瀬,公三 鶏病研究会報 50 19-31, 2014-09 つくば : 鶏病研究会 https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010873239.pdf*2 ブロイラーの趾蹠皮膚炎と廃棄率並びにカンピロバクター属菌保有率の関連 https://www.pref.miyagi.jp/documents/22945/3-2.pdf*3 https://veterinaryresearch.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13567-019-0657-8 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0167587720308898クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleアニマルライツチャンネルvol54[豚レスキューの全貌] Next Article輸送の検証 -豚の輸送改善と次に続く誰かのために- 2024/07/04