気絶処理なしの屠殺、日本だけがここにとどまっている。声が上がらなかった50年あまり、ずっと鶏たちは苦しんできた。2025年12月18日、衆議院農林水産委員会で、山田勝彦議員がこの課題についてと、アニマルウェルフェアを向上させるための野心的な目標が必要であることについて、質問した。
農業構造転換集中対策にスタニング設備導入
山田議員は、気絶なしのネックカットは人道上の大きな問題があり、国際社会では許されず、動物愛護法違反でもあるとし、スタニング導入支援を求めた。これに対し、鈴木農林水産大臣は、
令和7年から11年度の5ヶ年におけるこの農業構造転換集中対策のこの機会を捉えまして、令和7年度補正予算において、この食鳥処理施設整備に特化したメニューを新たに設けさせていただきました。 このスタニング設備の導入等を支援する先進モデル的食鳥処理施設整備事業を措置をしたところでありまして、この事業においては地方負担の割合に応じて最大で3分の2までの補助ができることとしておりまして従来よりもかなり支援内容を拡充してきております。
と説明した。
2030年3月までの間に行われる農業構造転換集中対策に、家禽のアニマルウェルフェアに配慮した気絶処理が含まれたことは大きな転換点である。目標の年も示されたと捉えることができるからだ。50年変わらなかったものが、変わろうとしている。私たち、市民が声を上げ、その主張の正当性を認めてくれた政治家が声を上げたからこそ、変わろうとしている。
アニマルウェルフェア対応の先進モデル的食鳥処理施設とのことで、CAS(空気制御式気絶処理)への支援となるだろう。世界は今まさに、CASへの切り替えを進めている段階であり、日本の畜産としては、農場内での扱いよりも家禽の屠畜工程が先に世界に追いつくことになるのかもしれない。
ただ、食鳥処理場は、超小規模食鳥処理場以上を含めると1400あるという。支援はまず規模の大きな=多くの鶏が屠殺される136件の食鳥処理場が急務であろう。だが、残りの超小規模食鳥処理場(年間処理羽数が30万羽以下)には地鶏や鴨などが含まれており、これらの施設への補助もこの5カ年のなかで対策が取られることを今後期待したい。
目標の設定ももうすぐ
つぎに、山田議員は、ESG投資の観点からアニマルウェルフェアを向上させる数値的(年限の)目標が必要だと訴えた。
食品企業がこのESG投資を獲得するためには、ゲージフリーや妊娠ストールフリーのような飼育方法の卵や肉を調達できる環境作りが求められています。 農林水産省のアニマルウェルフェア飼養管理指針は方向性は示しているんですが、現状ではその達成目標年や具体的な移行計画が不足しています。 みどりの食料システム法のように、2050年までに有機農業の農地面積を4分の1にするんだとこういったね、野心的な数値目標があることで、取り組みが進んでいくと。 なのでこのアニマルウェルフェアに関してもしっかりと目標数値を示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか?
これに対し、鈴木大臣は、アニマルウェルフェアに関する飼養管理指針の項目について、達成目標年の設定を現在進めている最中であると答えた。
だが、現在進められている目標は、あくまでも指針の中の”実施が推奨される事項”であり、ESG投資の獲得に必要となる”将来的な実施が推奨される事項”については手がつけられていない。”将来的な実施が推奨される事項”のなかに、妊娠ストールフリーやケージフリーが含まれているのだ。これらにこそ目標値が必要であり、現在の検討後そうそうに着手されることを求めていかなくてはならない。
最後に鈴木農林水産大臣は
例えばアメリカのニューヨークなんかのスーパーに行けば、アニマルウェルフェアにどのレベルで配慮した畜産物かっていうのが棚にちゃんとそれが書いてあるんですよね。 生産現場にも当然コストが高くなるっていうことにもなりますからやはりその消費者の側もですね、それを受け入れていただくようなマーケットでなければ成立がしませんので、そうしたことも含めてぜひ一緒にやらせていただければというふうに思います。
と付け加えた。
消費者教育や、売り方、表示の仕方に課題があることは間違いがない。畜産物の流通小売までトータルに対策を取ることに農林水産省も加わってくれるのだとすれば、非常に心強い。
国が動くためには市民の声、政治家の声が必要だ。
この記事を読みむなさんも是非一緒に、今後さらに多くの声、意見、行動を挙げてきましょう!
農林水産委員会質疑全文
山田議員:アニマルウェルフェアについてです。資料4をご覧ください。 日本の食鳥処理方法には、人道的大変な問題があります。 気絶なしのネックカットは国際社会では許されません。 日本では毎年約70万もの鳥が生きたまま熱湯に入れられています。 スタニングと呼ばれる気絶処理の工程を省いての屠畜は明らかに動物に激しい苦しみと痛みを与えており、動物愛護管理法に明確に違反しています。
国際基準であるスタニングの工程を導入する工場へ積極的な支援をすべきと思いますがいかがでしょうか?
鈴木農林水産大臣:ご質問ありがとうございます。まず食鳥の処理はですねこれ環境省が所管する動物愛護管理法第40条第2項に基づき、環境省が定める告示に即して行っているものであり農林水産省としてはですねまずこれにしっかりと即してやっていくということだというふうに思ってやられたので食鳥処理施設は全国に1400ありましてこのスタニング設備を導入する施設整備を一気に行うのは1400全部にはですね、なかなかすぐにっていうわけにはいきませんが、これまで農林水産省では強い農業作り総合支援交付金において、このスタニング設備導入への支援をさせてもらってきております。 これやっていただくとですね通常の補助率は3分の1のところ、アニマルウェルフェアに対応する場合は2分の1まで、まず引き上げを行います。さらにですねこの令和7年から11年度の5ヶ年におけるこの農業構造転換集中対策のこの機会を捉えまして、令和7年度補正予算において、この食鳥処理施設整備に特化したメニューを新たに設けさせていただきました。 このスタニング設備の導入等をですね支援する先進モデル的食鳥処理施設整備事業を措置をしたところでありまして、この事業においては地方負担の割合に応じて最大でですね、3分の2までの補助ができることとしておりまして従来よりもかなり支援内容を拡充してきております。引き続きですね事業者の理解も得ながらこうした事業をしっかりと活用して、スタニング設備の導入等が進むよう国としても促してまいりたいと思います。
山田議員:ありがとうございます。もうかなり前進しているということで、本当にこういったですね、動物福祉に配慮した支援の充実これからも訴えていきたいと思います。 資料4をご覧ください。
ESG投資環境社会ガバナンスを重視する投資において、アニマルウェルフェアは社会または環境生物多様性の重要な評価要素として急速に注目されています。 食品企業がこのESG投資を獲得するためには、ゲージフリーや妊娠ストールフリーのような飼育方法の卵や肉を調達できる環境作りが求められています。 農林水産省のアニマルウェルフェア飼養管理指針は方向性は示しているんですが、現状ではその達成目標年や具体的な移行計画が不足しています。 みどりの食料システム法のように、2050年までに有機農業の農地面積を4分の1にするんだとこういったね、野心的な数値目標があることで、どんどんどんどん取り組みが進んでいくと。 なのでこのアニマルウェルフェアに関してもしっかりと目標数値を示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか?
鈴木農林水産大臣:ご質問ありがとうございます山田委員おっしゃるようにこのアニマルウェルフェアですね私も大変大切だというふうに思いますし、思っておりまして、その推進はですね、しっかりやっていかなければならないと思います。このため農林水産省は令和5年7月にですね、国際基準に沿ったアニマルウェルフェアに関する飼養管理指針を発出をし関係者に対して周知を精力的に実施をしております。 この指針のですね生産現場における取り組み状況を定期的に調査をしてその進捗を確認しておりますが、先般その調査の結果もですね取りまとめ、これ6月27日になりますが公表させていただいたところであります。
この次のステップとして、この結果等を踏まえまして、この指針の事項ごとに適切な達成目標年のですね設定に向けた検討をまさに開始をしたところでありまして引き続きアニマルウェルフェアですね配慮した飼養管理の普及定着をですね推進してまいりたいと考えております。
あとちょっと付け加えになりますけども、やはり私もですね、例えばアメリカのニューヨークなんかのスーパーに行けば、アニマルウェルフェアにどのレベルで配慮した畜産物かっていうのが棚にちゃんとそれが書いてあるんですよね。 やっぱりこれ、生産現場にも当然これコストが高くなるっていうことにもなりますからやはりその消費者の側もですね、それをある種受け入れていただくようなあのマーケットでなければこれ成立がしませんので、そうしたことも含めてぜひ一緒にですね、やらせていただければというふうに思います。
山田議員:ありがとうございます大臣から力強いメッセージをいただきました次のステップとしてぜひ数値目標検討の方お願いいたします。 最後の質問させていただきます畜産動物の放し飼いはアニマルウェルフェア向上だけではない価値があります。












