政府は今、エンリッチドケージ(改良型ケージ)など、バタリーケージを少し改修したケージ飼育をアニマルウェルフェアに配慮したものと定義づけようとしているようです。しかし、ケージは結局ケージ、動物が生きていける場所ではなく、世界はエンリッチドケージにもさようならしようとしています。動物たちの苦しみを減らすために、日本でも同じ選択をさせなくてはなりません。バタリーケージ改修の無用なあがき農林水産技術会議事務局予算の研究費として、「鶏及び豚の快適性により配慮した飼養管理技術の開発の内容について」があります。このなかには、「1 鶏卵生産の主な飼養方式であるバタリ-ケージについて「通常の行動様式を発現する自由」の向上に資する低コストな鶏舎の改修技術を開発。」というものがあります。これについて2022年3月16日の参議院農林水産委員会で、須藤元気議員がその目指すアニマルウェルフェアのレベルを質問しました。それに対し、農林水産省は「本研究では、採卵鶏についてははじめからケージフリーを目指すのではなく、国内の主要な方法であるバタリーケージ飼育でアニマルウェルフェア向上につながる低コストの改修技術の開発を行っていくこととしております。」と回答しました。つまり、バタリーケージに変わりのない飼育をさらに税金をかけて研究するというものなのです。つまり、農水省は2022年のこの段階にあって、なお、消費者や機関投資家などにも評価を得られるレベルではない飼育、つまりケージ飼育にお金を使おうとしているのです。エンリッチドケージ(改良型ケージ)とは日本政府がやろうとしていることはあくまでもバタリーケージに手を加えることでしかないため、EUが2012年に最低基準としたエンリッチドケージとは違う(おそらく大きく劣る)ものですが参考までにエンリッチドケージがどのようなものなのかを知ってください。EUが2012年にバタリーケージを禁止した際に、最低基準がこのエンリッチドケージになりました。エンリッチドケージは、一つのケージの広さがより広く、とまり木があり、巣箱があり、爪を研ぐ場所があるというケージです。EU規定でも狭いEUの場合は鶏1羽につき最低750cm2のスペース(そのうち600cm2が有効に「使用可能」でなければならない)や、1羽につき15cm以上のとまり木が必要であると規定されています。EUでは飼育面積の規定がバタリーケージの段階からすでにあり当時は1羽あたり550cm2でした。エンリッチドケージになっても動けるスペースは実質50cm2しか増えておらず、鶏が動いたり運動したり羽を広げたりするスペースは著しく制限されています。EFSA(欧州食品安全機関)は、エンリッチドケージの限られたスペースにより、「ケージフリーの飼育環境の鶏たちに比べて鶏たちの行動範囲がかなり制限されている」と結論づけています。高さが足りないEUの場合高さが45cmと規定されていますが、鶏に最低限必要な高さは56cmであり、首を伸ばしたり羽ばたいたり運動するなどの自然な行動は阻害されます。さらにとまり木にとまることでより一層高さが制限されるため、鶏たちが十分にとまり木を使えなかったり、巣箱や餌、水にアクセスするために移動する際の正常な動きがとまり木に妨げられてしまうという状況に陥ります。砂浴びができない砂浴びは鶏の健康を保つために重要な行動ですが、ケージの中に置かれた砂浴び場では十分に砂浴びができず、自然な飼育状態の鶏よりも有意に砂浴び時間が短くなります。つつきができない鶏は1日1万回地面をつついていろいろなものを探しています。結局、ケージではこの自然な行動はできません。やることのない時間は、仲間をつついたり、自分の足をつついたり、ボーッとする時間に変わります。弱った鶏の発見が遅れる平飼い鶏舎では従業員が鶏舎に入り、中を歩くと、鶏たちはついてきたり逃げたりと動き回るため、動けない動物を探すことは容易です。しかしケージの中では鶏たちは動くことができず、従業員に与えられた本の短い時間で鶏が元気なのかどうかを見極めることはこんなんです。従業員は一つのケージごと立ち止まって観察をするわけではありません。そのため、動けない鶏、死んだ鶏、弱った鶏を見逃しやすくなります。ケージは安全ではないケージに挟まって動けない、足がケージの間に挟まって骨折するなどということはエンリッチドケージでも同様に起こります。金網と無機質な素材で出来上がっているシステムは、動物にとって危険なものです。結局鶏はぼろぼろになる鶏たちは結局の所、最後はボロボロになります。金網に羽毛がこすりつけられ、仲間とつつき合い、足を骨折し、羽を骨折します。私達が見たエンリッチドケージの鶏たちは、平飼いと比べ、明らかにおどおどして神経質でした。日本で導入されればさらに悲惨になる日本の場合、バタリーケージであろうとエンリッチドケージであろうと、最低面積の規定はありません。そのためバタリーケージ同様に悲惨な状態が継続することは間違いがありません。エンリッチドケージを許すなEUは2012年にエンリッチドケージに移行してから15年後の2027年に、このエンリッチドケージも禁止されます。世界の企業はエンリッチドケージでは市民の評価、投資家の評価が得られないことを知っており、ケージフリーに移行していっています。アニマルウェルフェアが遅れた国々は、バタリーケージから一気にケージフリーに移行していっています。エンリッチドケージに一時的な投資をするなんていう無駄はしていません。日本の消費者もまた、エンリッチドケージにはプラスのお金を払うつもりはありません。平飼い、放牧、放し飼いであれば価値を認めることができても、動物の状態が良くなったかどうか定かではないエンリッチドケージにはプラスのお金は払わないでしょう。むしろ、払ってはいけません。日本だけ、今さらエンリッチドケージに投資するようなことをさせようとするのが、今の国が目指すことです。これは生産者にとっても良いことではないでしょう。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleイスラエルの農務大臣、採卵鶏のケージ飼育廃止を約束する Next Article2022年 畜産動物に関する認知度調査アンケート 2022/03/17