オーストラリア ニューサウスウェールズ州のガイドライン魚類や甲殻類の人道的な捕獲、さばき方(Humane harvesting of fish and crustaceans)を翻訳しました。
*このガイドラインのやり方が正しいというわけではありません。甲殻類の人道的な殺し方についてはまだ研究段階だからです。このガイドラインに疑問のある部分(非人道的である可能性がある部分)は赤字で示し、アニマルライツセンターで注釈を入れています。(2020.1.30追記)。甲殻類のできるだけ苦しめない殺し方についてはコチラをご覧ください。
魚類や甲殻類の人道的な捕獲、さばき方
ひれのある魚類
魚類捕獲する魚は人道的な捕殺方法を取ることが重要である。
迅速にまた正しい位置に衝撃を与えて気絶させる事が正しい方法である。
魚は重い木づちなどを使い、目の上の頭を一撃する。(脳の上)
正しい一撃であれば、魚のえらは規則的な動きが止まり、
目は動かないままになる。魚は心臓が止まってから出血させなければならない。
小型から中型の暖海の魚類は、氷水を使い、氷水は砕いた氷と水を同量にして作る。温度計を使って水の温度をチェックする。
純粋な水は零度に、塩水ならば-4度に設定しなければならない。
水温を管理し、必要に応じて氷を足す。魚を水の中にいれて、魚が氷と触れないようにする。20分間その中に魚を置き、呼吸が止まって、さらに10分置く。
*赤字部分についてアニマルライツセンター注釈
事前に脳の破壊を行わずに氷水につけた場合、魚は9分にわたり意識を保つと言われています。コイは氷水の中で1時間呼吸をします。そのため氷水は基本的に容認できません。本ガイドラインでは熱帯または温帯の小さい魚の場合であれば、事前の脳の破壊や放血なしで氷水につけて殺す方法が提示されていますが、これについてはまだ研究が必要です。明確な研究結果が出るまでは、どの魚においても、意識のある状態で氷水でつけるという方法を使用しないでください。
参照:Humane Harvesting of Fish Unacceptable Methods HSA
A review of the use of ice slurry and refrigerated seawater for the killing and holding of finfish
How to Kill a Fish Most of the fish we eat die by asphyxiation. But there’s a better way, both for the fish and those who eat them.
カニやエビなどの甲殻類
最近はレストランやケータリング業界において、甲殻類の扱い方の考えが変わってきた。苦痛をもたらすこと、苦しめることは避けなければならない。レストラン、ケータリング業界で使われる甲殻類はロブスター、カニ、えびら、マロン、ザリガニ、バルマンバグを含む。これらの生き物を扱う者は捕獲、運搬、収容、命を取る時に人道的な方法が取られているか確認しなければならない。
塩水+氷を使用すること
これらの甲殻類はすべてカットしたり、茹でたり、あぶる前に20分は塩水+氷につけておくことを勧める。苦痛を与える作業を行う前に動かなくなったことを確認する。
浸す水は最初にエスキーのような適切なクーラーボックスに、砕いた氷と塩水(海水と同じ塩度で)を入れて作る。氷と塩水の比率は3対1である。こうすることで温度を-1度に保つことができる。
水温の管理のために十分な氷が使われるべきである。
中枢神経系を素早く破壊すること
上記の方法が取れなければ素早く中枢神経系を破壊すること。
可能な限り、20分間塩水や氷水に付けた後で、素早く中枢神経を破壊すること。
*赤字部分についてアニマルライツセンター注釈
氷での冷却が単なる麻痺ではなく麻酔をもたらすという明確な証拠も、冷却自体が嫌悪的でもないという明確な証拠もありません。イタリアでは氷の上でロブスターを保管することを違法とする最高裁判所の裁決も出ています。電気式の気絶処理が最も人道的だといわれています。しかしそれを使うことができないという場合は、氷水という気絶方法しかないかもしれません。その場合でも、対象種は低温に弱い熱帯・温帯甲殻類であり、低温に適応した甲殻類には推奨できません。海洋の甲殻類は真水につけてはいけません。なぜなら海洋の甲殻類は、淡水に置かれたときに深刻な浸透圧ショックで、死亡してしまうからです。淡水カニは塩水につけてはいけません。
またこのガイドラインでは気絶処理なしで中枢神経系の破壊が認められてますが、他の動物と違い、甲殻類の中枢神経系は分散しています。そのため破壊するのに時間がかかるため(10秒以上)、何らかの気絶処理なしで切断は許されません。
ロブスター
ロブスターは体の縦の線に走る中枢神経系がある。
刺身(生食)やボイル(調理)するには、縦方向に鋭いナイフで切断することによりこれらの神経中枢を破壊しなければならない。
切る動作を二回で行うこと。
①尾と腰の接合部分近くの正中線を切り、頭に向かって切断する。
②尾と腰の接合部近く正中線から尾に向かって切断する。
ロブスターの切断にはナイフでの切断に木づちを使わなければならない。長さの方向に半分に切った後、即座に腰と頭の神経中枢を取り除く。
これらの手順は10秒以上かかってはならない。
さらには熟練した職人が行わなければならない。
カニ
カニには二つの神経中枢があり、前部と後部である。
時間が限られているときにはカニを数分間塩水か氷水に入れて動きを止める。
その後
重い鋭くとがった道具で前後の中枢神経を素早く破壊する。
または上の殻を素早く取り除き、前後の中枢神経を破壊する。
これらの手順は10秒以上かかってはならない。さらには
熟練した職人が行わなければならない。
行ってはいけない方法
次の方法は苦痛を長引かせるため決して行ってはいけない。
・横に切断すること。
(最初に神経中枢を破壊することなしに頭と腰部を尾から切り離すこと)
・前と後ろの神経中枢を破壊する前に部位を解体すること。
・20分塩水や氷水につける前に茹でること。
*赤字部分についてアニマルライツセンター注釈
20分塩水や氷水につけた後でも神経中枢を破壊する前に、茹でてはいけません。
運搬と保管
運搬の間はストレスを生むので、温度や水質などの主要な環境を急に変えることは避ける。
保管の間のストレスを生み出すもの:
・水温の管理を怠ること。
・不適切な通気。
・水が汚れていたり水質が適切でない。
・過密状態で保管する。
・合わない種類を一緒に保管する。
収容しているタンクの状態が悪いときは:
・水面に泡が立っている。
・水が濁っている。
・タンクの壁にヘドロや藻がつく。
保管のタンクを良い状態に保つためには:
・水の浄化、ろ過システムを取り入れる。
・適切な水質テスト手順を使用する。
このガイドラインはアニマル・ウェルフェア・アドバイザリー・カウンシルにより作成された。ガイドラインは草稿時の情報に基づいている。
ニューサウスウェールズのレストラン、ケータリング協会のご協力に感謝する。
追記 問い合わせ先 NSW DPI Animal Welfare Unit.
翻訳協力:Ueda Hiromi