宮島の鹿とゴミ

広島県廿日市市の宮島で毎年行われる「宮島水中花火大会」では、大量のゴミが不法投棄されます。
花火大会が終わり、ゴミを置いて観客が帰った後、鹿がやってきて、ゴミをいそいそと食べ始めます。
廿日市市によると、宮島市街地の鹿の腹の中はゴミだらけだそうです。

2015年6月に死因を特定するために解剖された二頭のメス鹿の胃からも、大量の異物が確認されています。
 

第 12 回廿日市市宮島地域シカ対策協議会資料 2016年8月12日
宮島地域シカ保護管理対策 現地調査結果報告書

“比較的新鮮な状態で得られた2頭のメスについて解剖を行った。(中略)2 頭とも第 1 胃に大量の異物が確認され、継続的な消化機能の低下による衰弱が疑われた。しかし、宮島のシカではほとんどの個体が同様の状態であることが知られており・・・”

写真-宮島の花火大会のゴミ(2013年撮影されたもの)

 

アニマルライツセンターは宮島の鹿とゴミの問題について市民からの通報を受け、2015年8月11日花火大会当日、現地調査しました。

写真-花火大会が終わりゴミを放置してかえる観光客(2015年8月11日撮影)

写真-観光客が去った後すぐにやってきて、食べ物の匂いのついたゴミを食べ始める鹿(2015年8月11日撮影)

鹿がゴミを食べるのを見かねて、ゴミ拾いをする人。(2015年8月11日撮影)
地元の人らによる花火大会後の一斉ゴミ清掃も行われていますが、それは翌日の朝からです。
翌日の朝まで待っていては、鹿が大量のゴミを食べてしまいます。

宮島水中花火大会では、花火が見える広範囲にわたってゴミが不法投棄されます。
鹿が食べる前に、数名の個人だけですべてのゴミを清掃することは不可能です。

この宮島の鹿と不法投棄ゴミ問題について、
一般社団法人宮島観光協会と、廿日市市農林水産課へ、下記の提案書を提出しました。

 

2015.8.13
宮島水中花火大会におけるゴミ管理についての提案書

はじめまして。
NPO法人アニマルライツセンターです。
私どもは動物の保護活動をおこなっております。

私どもの元に、「宮島の鹿がビニールなど人が捨てたゴミを食べている。鹿のお腹の中がゴミだらけになっている」という通報が市民から数件寄せられました。
実態を把握すべく、廿日市市の宮島地域シカ保護管理計画を読んだところ、「宮島で死んだシカを解剖すると,胃の中にビニールなどの不消化物の塊がみられる」「成獣雄の 2 個体では異物の湿重量が 3 kg を超えていた」など逼迫した状況であることがわかりました。
そこで私どもは、宮島水中花火大会の行われた8月11日に現地調査をいたしました。
その結果、宮島水中花火大会で発生したゴミが、大量に道端に放置されており、観覧客が去った後まもなく多数のシカが現れて、道端に投棄された食べ物の匂いのついたビニール袋や紙コップを食べるという実態を目にしました。

廿日市市の宮島地域シカ保護管理は「鹿は野生動物」であるとして、その上で人と鹿の生活圏の分離を柱に進められています。しかしながらこの花火大会においては、ゴミの管理不徹底が、「食べ物の匂いのするゴミ」のある市街地に鹿をおびき寄せ、結果として人と鹿の棲み分けを妨げることにもつながってしまっていると思います。

私たちは、鹿の健康と、人と鹿の穏やかな共存のために、宮島水中花火大会におけるゴミ管理について、以下を提案します。
参考にしていただけたら幸甚です。

・警察、警備員、露店業者など宮島水中花火大会の関係者の間で、ゴミ箱の設置箇所を情報共有しておく。(これら関係者のほとんどがゴミ箱の場所を把握していませんでした。観覧客にゴミ箱の場所を尋ねられ「ゴミはうちの管轄ではない」と回答する警察官もいました。)

・アナウンスでゴミ箱がどこにあるのかを放送する。

・宮島水中花火大会のパンフレットにゴミ箱の設置箇所を明示する。
(観覧客への聞き取りでは、「ゴミ箱は設置されていない」と思っている人が多数いることが分かりました)

・ゴミ箱の設置場所には背の高い看板を立てるなどして、遠くからでもゴミ箱の場所が判別できるようにする。(群衆の中ではゴミ箱がどこにあるのか判別できない状況でした。)

・宮島水中花火大会当日中のゴミ清掃。
(花火終了後、観覧客が去ってすぐに鹿がやってきてゴミを食べています。人と鹿の生活圏の分離のためには、終了後早急のゴミ清掃が必要だと思います。)

以上。

何卒、よろしくお願い申し上げます。

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人の食べ物(ゴミ)の味を覚え、市街地に居つく宮島の鹿親子
小鹿の腹にもゴミが蓄積されていきます。

 

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