大学共通テストの予備校模擬試験「2026大学入学共通テスト実戦問題集 国語」にアニマルウェルフェアを題材とした新形式問題が登場しました。
アドバイザ―(日本女子大学名誉教授)細川幸一
昨年、代木ゼミナールの大学入試共通テストの模擬試験を作成する部門から、試験問題を作るにあたり、私の著作物の一部を利用したいので承諾してほしいと申し出がありました。アニマルウェフェアに関する資料を示してそこでの筆者の考えを問う国語の問題ということで了承した。
どういう形で拙文が利用され、問題となったのか連絡がありませんでしたが、今年になってその模擬試験問題を問題集として出版したいということで承諾したところ冊子が送られてきたので、その内容を報告します。
模擬試験は実際の共通テストと同形式で、出題趣旨や傾向を踏まえて作られています。大問5問が出題され、現代文3問、古文1問、漢文1問です。その中に小門があり、計40問です。アニマルウェルフェアに関する問題は大問3の現代文で、その中に小問題が4問(実際の回答すべき問題)あり、以下の3点の資料が提示されています。
資料1 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「アニマルウェルフェアや人権に配慮した食品の購入意向に関する国際比較」(2023年7月11日)より抜粋。
資料2 重田園江「アニマルウェルフェア 命の商品化、直視すべきだ」『朝日新聞DIGITAL』(2023年2月16日)の抜粋
資料3 細川幸一「アニマルウェルフェアについて考える―問われ始めた『いのちを消費する者の責任』」養賢堂『農業および園芸』97巻5号(2022年5月)所収論文の抜粋。
資料3が拙文ですが、これは農業関係の専門誌に掲載の論文形式のもので、模擬試験作成者はよく探してきたものだと思います。これらを資料として提示したうえで、Sさんという架空の学生が「アニマルウェルフェアと私たち」というテーマでレポートを書く際に、資料を参考にレポートの「構成メモ」を作ったとして、それが提示され、なぜ、このテーマでレポートを書くのか(テーマ設定の至るきっかけ)(小問題1)、議論の展開(資料の共通点と相違点)(小問2、3)、結論としてのアニマルウェルフェアについて考えることの意義(小問4)の4問について4~5の回答選択肢から正解を1つ選ぶというものです。
設問の方法が昔とだいぶ違うと感心しながら、模擬試験問題にアニマルフェアが選ばれていること自体、驚くととものうれしく感じました。
大学入学共通テストは、「高等学校の段階における基礎的な学習の達成の程度を判定し、大学教育を受けるために必要な能力について把握する」ことを目的に実施されています。出題にあたっては、高等学校において、「主体的、対話的で深い学び」を通して育成することとされている「深い理解を伴った知識の質を問う問題や知識・技術を活用して、思考力、判断力、表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視する。その際、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等を、教科等横断的に育成することとされていることについても留意する」と公表されています(大学入試センター「大学入学共通テスト問題作成方針」による)。
また、「知識・技術や思考力、判断力、表現力等を適切に評価できるよう、出題科目の特性に応じた学習の過程を重視し、問題の構成や場面設定等を工夫する。例えば、社会や日常の中から課題を発見し解決方法を構想する場面、資料やデータ等をもとに考察する場面などを問題作成に効果的に取り入れる」とされています。
大学生と接していて、最近は若者をZ世代などと呼んでいますが、SDGs世代であることを実感します。感受性が強く、優しい心持った若者が多いように思います。しかし、コロナ禍の影響もあるのでしょうか、「行動する消費者」は少ないように思います。この模試が多くの高校生に解かれ、アニマルウェルフェアについて考えるきっかっけが与えられることにより、大学生活、卒業後の人生において動物保護、動物福祉について考え、行動してくれること、さらには本当の大学入試共通試験に関連テーマが登場する時代になることを願っています。
本問題掲載書籍:「代々木ゼミナール編2026年版大学入試共通テスト実践問題集 国語」(編集:代々木ゼミナール、発行:株式会社日本入試センター、定価990円(税込み)、2025年7月20日初版)
2026大学入学共通テスト実戦問題集 国語 | 代々木ゼミナール |本 | 通販 | Amazon
