論文概要
畜産動物のアニマルウェルフェアに対する社会的関心は高まりつつある。アニマルウェルフェアに関する高い基準を満たす製品を購入するためには、消費者は製品に関する情報を理解する必要があるが、情報を提供するラベルはわかりにくいことも多い。本研究では、高い基準を満たし、アニマルウェルフェアのラベルが貼付された製品に対する消費者の選好を調査するとともに、アニマルウェルフェアに関する詳細な背景情報を提供することで畜産動物のアニマルウェルフェアにとって良い影響があるかどうかを検証した。
オンラインで行われた調査において、1612人の参加者は、(1)対象となる製品にアニマルウェルフェアのラベルが貼付されたグループ、または(2)製品にアニマルウェルフェアのラベルが貼付され、ラベルが示す基準についての詳しい説明が加えられたグループ、のいずれかに無作為に振り分けられた。対象となる製品にはアニマルウェルフェアに関してさまざまに異なるラベルを貼付し、参加者にそれらの製品を購入する意思について尋ねた。また、アニマルウェルフェアに関する態度を測定する動物態度尺度 Animal Attitude Scaleを一部改変した調査票を作成し、これに対する参加者の回答から動物への共感性に関するスコアを算出した。参加者はまた、(年齢・性別・生活状況など)人口統計学的特性に関する一般的な質問項目、オーストラリアの食品生産における豚・肉用鶏・採卵鶏のアニマルウェルフェアについての評価項目に回答した。
その結果、詳しい情報を追加して提供することで、アニマルウェルフェアに関してこれまでより高い基準を満たす製品を購入する意思が強くなることが明らかになった。また、若年層・女性・世帯収入が低い人ほど動物に対する共感性のスコアが有意に高いことがわかった。さらに、動物に対する共感性は、アニマルウェルフェアについて高い基準を満たす製品を購入したいという意思と相関していた。交互作用は有意ではなかったことから、購入の意思に対して情報が及ぼすプラスの影響は、参加者がアニマルウェルフェアを支持する傾向には依存していないことが示唆された。
オーストラリアをはじめとする国々においてアニマルウェルフェアを牽引しているのは市場であり、今回の調査結果は、アニマルウェルフェアに関する情報を購入時に提供することで、従来よりも高い基準を満たす製品に対する理解や需要を高めることができることを示唆している。
Amelia Rose Cornish, Donnel Briley, Bethany Jessica Wilson, David Raubenheimer, David Schlosberg, Paul Damien McGreevy
2020/01/02
The price of good welfare: Does informing consumers about what on-package labels mean for animal welfare influence their purchase intentions?