論文概要
現在の温室効果ガス排出量の4分の1以上は農業に起因するものであり、とくに食肉生産はそのカーボンフットプリント*の大部分を占めている。低・中所得国において富裕化が進むとともに、乳製品や肉製品など動物性タンパク質に対する需要が加速すると予想される。
現時点において、畜産動物への飼料のためだけに世界の耕作地の40%近くが利用されている。世界人口の急速な増加に加え、環境における持続可能性に対するニーズが結びつくことで、動物性タンパク質を代替する製品に対する関心が改めて高まっている。
気候変動への懸念から、代替タンパク質に関する研究開発は加速しており、これによっていずれは動物性タンパク質の一部を代替する可能性がある。代替乳製品・代替肉を製造する食品産業は、年率15.8%の割合で成長しており、2030年までに1.2兆ドルに達すると予測されている。
この新興市場には、植物由来タンパク質の生産、微生物用のバイオリアクターを用いた発酵による動物性タンパク質の製造、培養肉(細胞性食品とも呼ばれる)の生産工程における高速化などの新しい技術が取り込まれている。
これらの新技術は世界市場に劇的な変化をもたらすはずである。本稿では、代替タンパク質産業について、その歴史と現状を解説するとともに、この市場が急速に成長するなかで今後進んでいく針路について予測する。さらに、新しい技術を受け入れる方向へと消費者行動に変化をもたらす要因について、推測を交えながら考察する。
* 製品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至る過程を通して排出される温室効果ガスの総量。カーボン(CO2 )の排出量に換算して表示される。
Kathleen L. Hefferon, Hans De Steur, Federico J. A. Perez-Cueto, Ronald Herring
2023/11/15
Alternative protein innovations and challenges for industry and consumer: an initial overview