論文概要
伝統的な方法による水産物の生産は、水圏生態系の不安定化、人体への健康リスク、年間で数兆に及ぶ水生動物の福祉に対する深刻な懸念など、現在私たちが直面している最も憂慮すべき地球規模の問題の一因となっている。シーフードに対する世界的な欲求の高まりによって、上に述べた問題を回避しつつ、消費者の需要を満たことのできる代替的な生産方法の開発が必要となっている。そのような代替法の中でも、細胞ベースの水産物は有望なアプローチである。その生産においては、生きた水産動物類から細胞を取り出し、増殖培地の中で培養するため、多数の動物を飼育・捕獲し、屠殺する必要がなくなる。
近年、この代替的生産方法は願望を超えて現実のものとなり、いくつかのベンチャー企業が培養シーフード製品を発売する準備を進めている。しかし、市場における成功は、消費者の態度によるところが大きいと考えられている。これまでのところ、アジアではこの問題について調査した研究はほとんど行われておらず、一人当たりの水産物消費量が世界で最も多い国の一つである日本では皆無である。
本研究では、日本の消費者110人を対象として、培養シーフードに関する知識や態度、行動意図について、アンケート調査に関する定量分析によって検証した。その結果、培養シーフードの概念に対する認知度は低いものの、態度や意向は全体的に肯定的であり、参加者の約70%が試食に興味を示し、60%が培養シーフードの購入について概して意欲的であった。年齢が若いほど、より積極的な態度を示す傾向があり、培養シーフードに関する予備知識は、細胞由来の製品に(通常より高い)割増料金を支払う意思と強く関連していた。本研究の結果は、培養シーフードについて日本の消費者を教育する情報キャンペーンの必要性を示すとともに、日本市場にはこうした製品を受け入れる準備がある程度はできていることを示唆している。
Pauline Dorothea Braun, Andrew Knight
2023/10/03
Appetite or Distaste for Cell-Based Seafood? An Examination of Japanese Consumer Attitudes