論文概要
混獲 bycatch とは、漁獲のターゲットではない生物種が意図せず漁具に捕獲されることで、海洋哺乳類に関しては稀な事象として語られることが多い。一方で混獲は、多くの大型海洋動物、特に小型鯨類にとっては最大の脅威となっている。しかし、混獲が稀であるということと、最大の脅威であるという2つの主張が同時に正しいということはあり得ない。また、「稀である」という形容の仕方そのものが正確かつ定量的に定義されることはほとんどない。
海洋哺乳類やその他の保護種・絶滅危惧種に関するサンプルにおいて混獲が稀な事象であるとすれば、このような認識に至るプロセスを知るうえで、データ収集の方法は極めて重要となる。混獲の影響に関する推定を漁業全体のレベルにまで拡大する際には、モニタリング計画の設計における統計上の原則を堅持し、分析の対象が代表的なサンプルであることを担保する必要がある。
混獲が稀だというのは単に記録されたデータだけの話ではなく、現実にも稀な事象であるというのは仮説であり、これを検証するためには、監視員の無作為配置や監視技術(遠隔電子監視など)の強化が考えられ、これは特に絶滅危惧種の混獲のみに特化しない監視計画においては重要である。
漁業活動における混獲が1回の操業あたりでは稀な事象であったとしても、操業そのものの総回数が非常に大きいうえ、その空間的・時間的範囲が広範囲に及んでいることを考えると、混獲は依然として海洋哺乳類の個体数に重大な影響を与えている可能性がある。
Matthieu Authier
2024/10/30
Despite the perception that it is rare, by-catch of marine mammals can lead to population decline