環境問題とアニマルウェルフェアの不正行為、ラディカル・イノベーションで防げるか? — マグロ培養肉の事例

Can radical innovation mitigate environmental and animal welfare misconduct in global value chains? The case of cell-based tuna

G.G. Reis, M.S. Heidemann, H.A.A. Goes, C.F.M. Molento

2021/05/12

https://doi.org/10.1016/j.techfore.2021.120845

論文概要

 

  • ラディカル・イノベーション*1 は、世界のバリューチェーン*2 を大きく変化させ、その地理的な範囲や国際貿易の流れの見直しを迫る可能性がある
  • ラディカル・イノベーションとしての培養肉をマグロのグローバルチェーンに適用したケースを分析する
  • このラディカル・イノベーションによって、バリューチェーンの活動が天然資源集約型から技術集約型へシフトする可能性がある
  • 動物由来の原材料を代替することで、環境とアニマルウェルフェアにおける深刻な問題は緩和される可能性が高い

環境問題における組織的な不正行為とは、組織による違法、非倫理的ないし無責任な行動を意味し、これらは資源の枯渇や生物多様性への脅威、動物たちの苦しみ、環境破壊とも結びついている。マグロのバリューチェーンのように、違法な搾取によって環境資源が大量に枯渇しているため、監視の目を光らせているチェーンもある。解決策を求めて、これまでは規制や製品のトレーサビリティ*3が利用されてきた。このテーマは緊急性が高いにもかかわらず、ラディカル・イノベーションがアニマルウェルフェアや環境への不正行為を防ぐことにどのようにつながるかについては、あまり注目されてこなかった。

技術におけるラディカル・イノベーションの特徴となるのは、その独自性や新規性、バリューチェーンに大きな変革を促す可能性である。そこで、我々は探索的アプローチを採用し、根本的な技術革新としての培養肉の事例を分析した。この新しい技術によって、食肉のバリューチェーンを大幅に変革し、より具体的にはマグロのグローバルチェーンにおける環境とアニマルウェルフェアに対する大規模な不正行為を防止することができる。

この事例が示しているのは、ラディカル・イノベーションによってグローバル・バリューチェーンの活動がいかに大きく変わり、その地理的な範囲も見直されるかということであり、これによってバリューチェーンの活動が天然資源集約型から技術集約型へシフトする可能性もある。さらに重要なこととして、動物由来の原材料を代替することで、環境やアニマルウェルフェアにおける深刻な問題が緩和されると予想される。

*1 従来の技術やビジネスモデルを根本から変える革新的なイノベーション *2 製品やサービスが顧客に提供されるまでの一連の事業活動を価値創出の連鎖として捉えたもの *3 製品やサービスが生産者から製造過程、流通・消費までの記録が追跡可能である状態(追跡可能性)

 

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