グルーミング・エンリッチメントの喪失は、身体・行動・生理のレベルで放牧牛のウェルフェアに影響する

論文概要

 

牧草で肥育される肉用牛の生産環境は多様である。パドックによっては、毛づくろいをするための樹木や他の何らかの物体があり、自然に豊かな環境になることもあれば、そのような機会のない寂しいパドックもある。また、日常的な管理の一環として、牛がこれらの豊かな環境とそうでない環境の間を移動することも珍しくない。牛の環境エンリッチメントがもたらす利点はよく研究されているが、刺激へのアクセスがなくなることで、こうした「エンリッチメントの喪失」が牛のウェルフェアにどのような影響が生じるかは不明である。

この試験では、エンリッチメントに使える物体(グルーミングブラシ)がなくなることで、牧草肥育肉牛のウェルフェアと生産特性に与える影響を検証した。グルーミングブラシが使えなくなった場合、それぞれの個体が初めにどの程度ブラシを使っていたかによって違いはあるものの、牛は概してより不潔になり、1日当たりの平均体重増加量は減少し、糞便中のコルチゾール代謝物のレベルは上昇した。

さらに、ブラシが再び使えるようになると、アログルーミング* と他の物体を使ったグルーミングは減少した。これらの結果は、グルーミングに使える適当な物体がなくなると、放牧牛のウェルフェアが全体的に損なわれる可能性があることを示している。今後の研究では、自然や人工のどのような物体を設置することが適切なグルーミングの機会となるかを明らかにする必要がある。

* 動物が自分以外の個体の清潔を保つ行為のこと

 

原文タイトル:Loss of a grooming enrichment impacts physical, behavioural, and physiological measures of welfare in grazing beef cattle

論文著者:Emily J. Dickson, Jessica E. Monk, Caroline Lee, Paul G. McDonald, Edward Narayan, Dana L.M. Campbell

公開日: 2024/02/01 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.animal.2024.101091

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