ブタの感情に関する信頼性の高い指標を特定する多施設間研究

論文概要

 

畜産動物が示す様々な感情を評価することは容易ではなく、これは感情が主観的な性質のものであることや、信頼性の高い指標が存在しないことに起因しており、肯定的な感情に関しては特に評価が困難である。本研究では欧州の4つの研究機関で飼育されている雌の豚124頭を対象とし、肯定的および否定的な感情反応を誘発する個体内デザインによる実験を実施した。

豚の年齢や品種、飼育条件は様々に異なり、研究では豚における短期的な感情反応を理解するための信頼性が高く非侵襲的な指標を特定することを目標とした。豚の行動は4施設間で共通のエソグラムを用いて記録し、唾液サンプルの採取には標準化された手順を策定したうえで、得られたデータを同一の研究室で分析した。分析ではコルチゾールを覚醒度の指標とし、感情価についてはオキシトシンを試験的な指標とした。

実験条件で誘発される感情価と覚醒度はさまざまに異なると予測され、これらが行動反応と生理反応に及ぼす影響を線形モデルおよび一般化線形混合モデル (LMM/GLMM) を用いて検証した。多階層主成分分析(PCA)では、様々な感情反応に関する指標をより少数の主成分に統合して表現できるかどうかを検証した。

想定されたとおり、既知の指標であるコルチゾール値については施設間で測定値にばらつきが見られ、ポジティブな実験条件では運動遊び locomotor play が増え(GLMM, P < 0.001)、ネガティブな実験条件では逃避行動が増加した(GLMM, P < 0.001)。豚はポジティブな状況では両耳を前方に傾ける頻度が高く(GLMM, P < 0.001)、ネガティブな状況では両耳を後方に傾ける頻度が高かった(GLMM, P < 0.001)。

唾液中のコルチゾール値は、ネガティブな状況では、ポジティブな状況に比べてより大きく増加した(LMM, P < 0.001)。また、新奇性のある社会的刺激や物理的刺激をより多く提示した場合には、感情価にかかわらず、コルチゾールがより大きく増加した(LMM, P < 0.001)。オキシトシンでは、実験条件で予測される感情価の変化に対して一貫した変動は見られなかった。PCA スコアのクラスターは、豚が体験した状況の感情価に対応して形成され、研究施設の違いには対応していなかった。2つの主成分が最も高い固有値を示し、これらは恐怖と楽しさの違いに関連するコルチゾール値とオキシトシン値を組み合わせた複合指標に対して中程度に寄与していた。

結論として、ブタの個体群における運動遊びと逃避行動は短期的な情動反応の指標となるが、多施設で実施したこのアプローチはこうした指標の信頼性を検証するうえで有用であった。耳の向きに見られる短期的な変化もまた、他の測定指標と組み合わせれば感情価を示す指標として期待できる。コルチゾール値の変化は情動価と覚醒度のいずれにも関連していた。畜産動物の感情を示す非侵襲的な指標は、多施設間研究による検証を通じて妥当性を向上させることが重要である。

 

原文タイトル:Teaming up for welfare: a cross-institute approach to identify robust indicators of emotion in pigs

論文著者:I Reimert, G A Franchi, M Bagaria, L Canario, J Elizabeth Bolhuis, S Düpjan, E Verbeek, E Fàbrega, L J Pedersen, H Telkänranta, A Eggert, L R Moscovice

公開日: 2026/06/04 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.animal.2026.101871

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