乳製品のパラドックス 認知的不協和に対するベジタリアンの反応

論文概要

 

多くの人々は肉を食べているが、その一方では環境と動物の命、自らの健康を大切にしていると語っており、これは実際の食行動とは相反するものである。価値観と行動の不一致から不快感が生じるが、肉を食べる人がこの不快な状態を解消するために用いる戦略は、「肉食のパラドックス」と呼ばれている。ベジタリアンは肉食を避けているが、乳製品もまた肉類と同じように環境・動物・健康に対して負の影響を与えている。

本研究では、こうした「乳製品のパラドックス」について検証するため、ベジタリアン(378名)を対象とした実験を行った。乳製品が環境・動物福祉・健康に与える影響について情報を参加者に提示し、情報を提示しない対照群と比較して、認知的不協和が生じるどうかを検証した。

次に、乳製品を摂ることが「自然 Natural」「必要 Necessary」「普通 Normal」「美味しいNice」「考えなくてよい Neglectable」と認識する傾向や、牛に心があること(経験や主体性)を否認するといった傾向が強くなると認知的不協和がどの程度に弱まるかを検証した。

認知的不協和を誘導する条件におかれたベジタリアンは、対照群に比べて有意により強い不協和を感じていた。また、乳製品の消費を正当化することを拒否する傾向はより強く、一方、乳製品の消費量を減らす意思はより強かった。

上記の結果は、肉食のパラドックスに関する先行研究の知見を再現するものではない。ベジタリアンは、自らの価値観と行動の不一致から生じる不快感に対し、行動を正当化するために従来の認識を強化するのではなく、矛盾した行動を放棄する意図を強めて対応するのである。

本研究の結果は、ベジタリアンが乳製品のパラドックスを経験していることを示すものであり、参加者の態度を「行動の正当化」から「行動変容の意図」へと転換させることができたことから、乳製品消費を削減するための介入手段を策定するうえで役立つ可能性がある。

 

原文タイトル:Untangling the dairy paradox: How vegetarians experience and navigate the cognitive dissonance aroused by their dairy consumption

論文著者:Chelsea A Davies, Samantha K Stanley

公開日: 2024/09/26 

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.appet.2024.107692

別のFACTを探す