入院患者にプラントベース食の選択を促すためのナッジ戦略 準実験的研究による検討

論文概要

 

背景: 世界の食料システムは、気候変動や生物多様性の喪失、土地利用の変化を引き起こしており、一方では食習慣が関係する慢性疾患も世界的に増加しつつある。従って、プラントベースの食生活へと転換することで地球環境と人々の健康を同時に守ることが可能となる。ナッジの利用は食事の選択を望ましい方向へ促すうえで有効である。本研究では、入院患者がプラントベースの食品を選ぶ状況で複数の異なるナッジを利用した場合の影響について検証した。

方法: ドイツ・エッセン大学病院で実施した準実験的研究は3つのフェーズで構成され、各フェーズは4週間にわたって行われた。ベースラインのフェーズでは、入院患者は介入のない状況で標準的なメニューから食事を選択した。第2フェーズでは、「順序型ナッジ」を導入し、プラントベースの料理をメニューの最初に提示した。第3フェーズでは「複合型ナッジ」として、上記の順序ナッジに加えて言語情報によってプラントベースの料理を推奨した。食事の選択に関して6,575名の入院患者(平均年齢:57.3±18.7歳、女性50.6%)から26,949件のデータを収集し、ロジスティック回帰分析および一般化線形モデルを用いて分析した。

結果: ナッジの効果に関わらず、女性および若年層ではプラントベースの料理が選択される割合が他に比べて高かった(それぞれp <.001)。性別と年齢による影響を調整した場合、2種類の介入フェーズでは、ベースラインと比較してプラントベースの料理が選択される確率がほぼ2倍に増えていた(順序型ナッジ:オッズ比=1.95;95%信頼区間[1.55-2.45]; p <.001; 複合型ナッジ: OR = 1.95; 95% CI, [1.56-2.44]; p <.001)。ただし、2種類のナッジを比較すると、プラントベースの料理が選ばれる割合に有意差は見られなかった(OR = 1.00; 95% CI [0.80-1.25]; p =.992)。

対象を限定したサブグループ解析では、介入期間においては女性・男性ともにベースラインと比較してプラントベースの料理が選ばれる確率が有意に高かった。こうした傾向は、中高年(36-64歳)および高齢者(65歳以上)でも見られたが、若年層(18-35歳)では見られなかった。男女および全年齢層において、プラントベースの料理の選択に関して順序型ナッジと複合型ナッジに有意差は認められなかった(全てp>0.001)。

結論: 入院患者を対象として体系的に管理されたナッジは、プラントベース料理の選択を増加させるうえで簡便かつ効果的な戦略であり、患者の健康を増進するとともに環境に及ぼす影響を改善することができる。

 

原文タイトル:Exploring nudging strategies for plant-based dietary choices in hospital patients: a quasi-experimental study

論文著者:Kristin Hünninghaus, Hannah Caroline Schäfer, Maik Plonka, Rebeca Montejano Vallejo, Gustav Dobos, Heidemarie Haller

公開日: 2025/07/01 

論文URL:https://doi.org/10.1186/s12966-025-01793-w

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