畜産動物の輸送における福祉の問題 ブラジルとドイツ・EUにおける法規制の比較

論文概要

 

畜産動物の輸送は、農場と屠畜場、繁殖施設、生産拠点を結びつける役割を担っているが、動物福祉の観点から数十年間にわたり最も議論されてきた問題の一つであり、こうした議論はアグリビジネスや畜産分野におけるEU・メルコスール貿易協定にも及んでいる。本稿の目的は、ブラジル、ドイツと欧州連合(EU)における畜産動物の輸送に関する法規制について、具体的な事例を検証しながら相違点と共通点を明らかにし、動物福祉におけるこうした問題を議論するための共通の基盤を形成することである。

EUによる「畜産動物保護のための輸送規則」は、すべての加盟国で適用されている(理事会規則・第1/2005号)。ドイツでは「動物福祉輸送条例」があり、EU法が国内法として導入されている。輸送時間は車両の種類や装備によって異なり、また輸送される動物種によっても違いがある。商業輸送および65 kmを超える距離に関しては、輸送時間の上限は基本的に8時間である。

ブラジルでは、各州において輸送中の動物の保護を定めた法律や規則、政令、ガイドラインが幅広く存在し、その多くはブラジル政府の農業畜産省によって整備されている。ブラジルで許可されている輸送時間は、州ごとの規制によって4時間から12時間までと大きな違いがあり、細部に関してはあまり厳密に規制されていない。また、給餌や給水のために適切な休憩を取っていれば輸送時間の上限を数回に分けて延長することができる。ドイツやEUと同じく、輸送を許可されているのは「適した」動物のみであり、動物に対する責任は目的地で最後の動物が荷降ろしされた時点で終了する。

ドイツやEUの気温は概して穏やかであるのに対し、ブラジルや南米では熱帯および亜熱帯気候である。さらに、ブラジルでは農場から屠畜場までの距離が概して長く、輸送車両は農場へ移動する際などに未舗装(砂利)の道路を走行しなければならないことも多い。輸送を動物に優しいものとするためには、十分なスペースと必要な設備を備えた適切な車両を使用し、健康で「輸送に適した」動物を選ぶ必要があり、また資格を持ち責任感のある運転手に委ねることが極めて重要である。これらは適切な法規によって担保される必要がある。

ブラジルおよびドイツ・EUにおける動物福祉法は、いずれも輸送中の動物の福祉を状況に応じて可能な限り十分に確保し、痛みや苦痛、ケガを予防することを目指している。動物福祉におけるこうした共通の取り組みは、畜産分野における相互理解と協力を進めるうえで確固たる基盤となり、EU・メルコスール貿易協定の農業部門における議論にも資するものである。

 

原文タイトル:Comparing Farm Animal Transport Welfare Legislation in Brazil and Germany/EU

論文著者:Stefan Timm, Paulo César Maiorka, Alexander Welker Biondo, Louise Bach Kmetiuk, Cristiane Schilbach Pizzutto, Joerg Hartung

公開日: 2026/07/22 

論文URL:https://doi.org/10.3390/ani16142264

別のFACTを探す