[米]消費者は動物福祉規制を放棄する意思があるのか​​?

論文概要

 

アメリカのいくつかの州では、ケージ飼育された鶏の卵の販売が禁止されている。消費者は、どれぐらい金銭的な節約になる場合に、この政策の撤回を支持できるのだろう?

家畜を保護する規制は、しばしば畜産物の価格上昇につながる。新たな規制が制定される際、農家にとって最大の懸念は、消費者が値上がりした価格を負担してくれるかどうかである。しかしながら、多くの消費者は食用動物の飼育方法にますます関心を寄せており、放し飼い卵のような倫理的な畜産物であれば、より高い価格を支払うことを厭わないかもしれない。

消費者の価格許容度を評価する一つの方法として、受容意思額(WTA)がある。WTAとは、ケージ飼いの鶏が産んだ卵など、あまり好ましくない製品を受け入れるために、消費者がどれだけ節約する必要があるかを尋ねるものである。この研究では、カリフォルニア州、マサチューセッツ州、ネバダ州の3州でケージ飼い卵の販売禁止が解除された場合を想定し、WTAの調査を行っている。

研究者たちは、3つの州の住民を対象にオンライン調査を実施し、普段購入する卵の量と価格、動物の飼育方法に関する知識、動物福祉に対する意識、動物への共感度などのデータを収集した。

まず、回答者には、鶏の健康を守るため、州法で州内で販売される卵はすべてケージフリーでなければならないことについて説明した。次に、現在卵に支払っている価格に基づいて、どのぐらい節約になるなら、この禁止措置の撤廃を支持できるのか尋ねた。節約額に関わらず賛成票を投じない人(「抗議者」と分類)には、同じ州の他の住民がどのように答えるかを推測して回答してもらった。また、卵の価格上昇の可能性を考慮した高価格シナリオも提示し、同じ質問をより高い価格の場合で回答してもらった。

カリフォルニア、マサチューセッツ、ネバダの3州で合計3,000件の回答が集計された。食生活の好みは地域ごとの傾向と一貫しており、86%から90%が肉食者で、残りはベジタリアン、ビーガン、またはフレキシタリアンだった。3州すべての回答者は、集約型畜産施設(CAFO)で飼育されている家畜の数を大幅に過小評価しており、その推定値は58%から62.5%の範囲で、実際の99%をはるかに下回っていた。

回答者は、動物への共感(5段階評価で平均4点以上)と動物福祉に対する態度(5段階評価で3点以上)において高いスコアを示し、畜産動物の福祉を確保するための企業や政府の行動を支持していた(5段階評価で4点以上)。

回答者の約3分の1(32.5%)は、どれだけ節約できるとしても、禁止措置の撤廃は支持しないと述べた。抗議者の意見も考慮に入れると、全体として、禁止措置の撤廃を支持するには、卵の価格が37%から39%下がる必要があるとの回答になった。

現在の卵の価格に基づく需要意思額(WTA)
支払額撤廃を支持する場合の値下がり額(抗議者を除く)撤廃を支持する場合の値下がり額(抗議者を含む)支払額のうちの割合
カリフォルニア$4.58$1.34$1.7137%
マサチューセッツ$4.54$1.33$1.7639%
ネバダ$5.04$1.57$1.8538%

高価格シナリオでは、動物福祉の撤廃を支持するためには、回答者はさらに多くの値下げが必要と回答しており、その割合は43%から44.5%に及んだ。これは、卵の価格が上昇するにつれて、消費者が動物福祉の低下に賛成票を投じるためには、より多くの値下げが必要になることを示している。

効果価格シナリオでの卵の価格に基づく需要意思額(WTA)
支払額の仮定撤廃を支持する場合の値下がり額(抗議者を除く)撤廃を支持する場合の値下がり額(抗議者を含む)支払額のうちの割合
カリフォルニア$8.11$2.86$3.4143%
マサチューセッツ$8.25$2.98$3.6444.5%
ネバダ$8.61$3.46$3.8044%

女性、高所得者、非白人の回答者は、撤廃を支持するためにより多くの値下げが必要と回答した。逆に、高齢の回答者は、禁止措置の撤廃を支持するのに、より少ない値下げで良いと回答した。ベジタリアン、食料品に多くお金を払っている人、卵を多く食べる人も、撤廃の支持に、より少ない値下げで良いと回答した。重要なのは、動物への共感が強く、集約型畜産施設(CAFO)で飼育されている動物の割合をより意識している人ほど、禁止措置を撤廃するために、より多くの補償が必要と回答したことだ。

これはアンケート調査であるため、回答が、実際にされる選択を必ずしも反映しているとは限らない。また、この調査は卵の消費者のみを対象としているが、卵を食べない人を含め、すべての住民に、ケージ飼育禁止の撤廃に関する政策に意見する可能性がある。したがって、調査結果はより広範な人々の考えを代表するものではない可能性がある。さらに、この結果は調査対象となった3つの州に特有のものであり、米国の他の地域や米国以外の国には当てはまらない可能性がある。

研究者らは、ケージ飼育卵の禁止を解除することは、養鶏農家にとって収益性の高い戦略にはならないと結論付けている。これまでの研究によると、農家はケージフリー飼育に8%から19%多く費用をかけており(費用の種類によって異なる)、顧客を維持しつつ利益を確保するために必要な約38%の価格引き下げを行うことは不可能である。

動物福祉擁護派にとって重要な点は、ケージ飼育卵禁止のような動物福祉による規制は、肉食者の間でも広く支持されているということだ。消費者の約3分の1は、どんなに節約になっても禁止撤廃を支持することを拒否し、政府と企業が畜産動物の福祉を守る役割を担うべきだという点で、消費者の間で強い合意が見られた。さらに、消費者は大規模畜産施設(CAFO)で飼育されている畜産動物の数を過小評価しており、実際の数を把握していた消費者では、より多く節約にならない限り、賛同できない結果となった。この知識のギャップを埋めることが、動物福祉規制への関心と支持を高める簡単な方法となるだろう。

意外なことに、ベジタリアンは禁止措置の撤廃を支持するためにそれほど大きな値下げを必要としなかった。これはおそらく、ベジタリアンは肉の代替として卵を多く食べる傾向があり、卵の価格が下がると特に魅力的に感じるためだろう。これは、ベジタリアン層を対象とする際に考慮すべき、相反するインセンティブを示している。

総じて、本研究は、ケージフリー卵を求める動物擁護運動が効果を上げていること、そして米国住民が採卵鶏のケージ飼育禁止といった動物福祉による規制を受け入れていることを示す有望な証拠を提供している。

※本記事はこの記事の最下部にある論文のFaunalyticsのリサーチャーによる要約を、同団体の許可を得て翻訳したものです。

 

原文タイトル:Willingness to Accept to reduce animal welfare by removing the ban on caged eggs in California, Massachusetts, and Nevada

論文著者:Sakeni, Atiyeh; Penn, Jerrod; Hu, Wuyang; Lai, John

公開日: 2025/07/27 

論文URL:https://doi.org/10.22004/ag.econ.360846

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