培養水産物生産に向けた自発的不死化日本ウナギ筋由来プレアディポサイト細胞株の樹立と特性評価

Establishment and characterization of spontaneously immortalized Japanese eel muscle-derived preadipocyte cell lines for cultured seafood production

Eriko Kishino, Shizue Saegusa, Daisuke Ikeda

2025/06/26

https://www.researchsquare.com/article/rs-6836543/latest

論文概要

 

【要旨の翻訳】

培養肉は、生物由来の細胞を用いて体外で食用組織を生成する、持続可能な代替的食料生産システムとして注目を集めています。しかし、培養肉の原材料として重要な不死化細胞株が、家畜や魚類では依然として不足していることが課題となっています。筋肉形成に利用可能な筋芽細胞株はいくつか報告されていますが、脂肪細胞株は研究用途でもほとんど存在せず、培養肉への応用はさらに限られています。

本研究では、若齢の日本ウナギ(Anguilla japonica)の筋組織に由来し、脂質を蓄積する能力を有する自発的不死化細胞株(JE-KRT224、JE-EK9、JE-F1140)を樹立し、その特性を評価しました。これらの細胞株は、適切に脂肪酸(オレイン酸)を添加した培養液中で培養することで外因性脂肪酸を取り込み、細胞内に脂質を蓄積しました。その結果得られた脂肪酸プロファイルは、生の日本ウナギの肉と同等のものでした。

さらに、3種すべての細胞株は、哺乳類細胞で一般的に用いられる脂肪分化誘導条件下で脂肪細胞へと分化しました。標準的な培養条件下では、いずれの細胞株も間葉系幹細胞マーカー(CD29、CD73、CD105)、間葉系細胞マーカーであるビメンチン、ならびに脂肪分化に関与する主要な転写因子/マーカー(PPARG、FABP4)を発現しており、これらの細胞株が間葉系幹細胞由来のプレアディポサイトであることが支持されました。

本研究は、脂質蓄積能に優れた新規の自発的不死化魚類細胞株を提供するものであり、魚類の脂肪分化研究や培養ウナギ肉の開発、さらには培養水産物生産のより広範な応用に向けた、貴重かつ持続可能なリソースを提示するものです。

【活動家向けの要約】

この研究の含意を動物擁護活動家向けに、平易な言葉で要約すると以下のようになります:

🐟 ウナギの「培養肉」に道が開けた!

この研究では、日本ウナギの筋肉から新しい細胞株(細胞のグループ)を作り出すことに成功しました。この細胞たちは、脂肪をしっかりためこむ力を持っていて、ウナギの本物の肉に近い性質を示しました。

特に注目すべきなのは:

  • ウナギを殺さずに、ウナギの肉に近いものを「細胞から育てて」作れる可能性があること
  • 単に筋肉だけでなく、「脂肪」もきちんと作れるようになったこと(美味しさや食感にとって重要)

🐾 動物擁護へのインパクト

  • ウナギを使った残酷な漁獲や養殖を減らす道が開ける:特に天然ウナギは絶滅危惧種。命を奪わずに食のニーズを満たせるなら、動物にも自然にも優しい。
  • 持続可能な選択肢を広げる:この技術は、他の魚や動物にも応用できる可能性があり、「苦しまない肉」の未来に向けた一歩です。
  • 「脂肪を作れる魚細胞」が実用化されたのはほぼ初:これにより、本格的な魚の培養肉(味も栄養も近い)が現実に近づいています。

✅ まとめ

この研究は、動物を犠牲にせず「ウナギらしい食感・味わい」を再現できる培養肉づくりの大きな前進です。動物の苦しみを減らしたい人たちにとって、倫理的で持続可能な未来を支える科学的成果と言えるでしょう。

 

別のFACTを探す