親愛なる ジェーン・グドール博士 のご逝去を受け、心より哀悼の意を表します。
その偉大な歩みに対し、私たちは深い敬意と感謝の念をもって、ここに追悼の辞を捧げます。
ジェーン・グドール博士の功績と、工場畜産批判
ジェーン・グドール博士は、類人猿研究を通じて、人と動物の関係、生きものとしての尊厳という問題を私たちの社会に問いかけ続けました。彼女の生涯は、動物を「対象」ではなく「主体」として尊重する世界観を構築するための不断の挑戦でした。
以下に、特に私たちの理念――工場畜産への批判・動物福祉の視点――と響き合う博士の言葉と行動を列挙します。
- 博士は、工場畜産(factory farming)がもたらす「極度の残酷性(extreme cruelty)」を公に非難し、この制度の廃止を訴えていました。
- 彼女と Koen Margodt 氏は、“factory farms are one of the worst ethical developments in human history(工場畜産は人類史上最も大きな悪の倫理の発展の一つである)”という表現を用い、工場畜産が動物、人間、環境すべてに大きな害を及ぼすことを主張しました。
- 博士は、農場動物にも感覚(sentience)があり、しばしば“sapiens(思慮ある存在)”に近い存在として扱われるべきだと訴えました。
- 2021年には、EUにおける鶏や豚などの**ケージ飼育(cage farming)**を禁止するよう呼びかけ、140余名の科学者とともに公開書簡に署名しました。
- また、博士は「The Inner World of Farm Animals(農場動物の内部世界)」において、農場動物が私たちが考える以上に知覚をもち、個性をもつ存在であると論じ、日々の食の選択がそれらの動物の生き方と直結していることを説いてきました。
- 彼女は、食肉中心の食文化を改め、植物性主体の食生活への転換を倫理・環境・保健面から強く訴えていました。 もちろん博士はヴィーガンでした。
- こうした批判的視点を持ちながらも、博士はただ反対を叫ぶだけでなく、教育と共感を通じた変革の道を模索しました。ルーツ&シューツ(Roots & Shoots)プログラムを通じて、若者たちが地域での小さな実践を起こす力を育て、環境正義・動物尊重・持続可能性を統合した運動へと導いてきました。
これらの業績・思想は、私たちが工場畜産の制度的・文化的側面と闘ううえで、しっかりと受け継ぎ、発展させていくべき礎であると確信します。
彼女の思いを引き継ごう
博士が常に示されてきた「希望をもつこと」「変革を信じること」「声なき存在の代弁者となること」を、今こそ私たちが引き継ぐ番であると感じます。
彼女が見つめ続けてこられた野生界、動物たちの世界、さらには私たち人間社会のいびつさを正す問いかけは、これからも多くの人々を触発しつづけるでしょう。博士の旅路はここで終わったのかもしれませんが、その精神とビジョンは、これからも私たちの歩みに息づくものと信じます。
ご逝去を悼むとともに、博士が掲げられた理想——動物が尊厳と安全と幸福を得られる世界——の実現を、私たちはあきらめず追い続けてまいります。
どうぞ、安らかに。