動物愛護法改正の要項 2019

動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律案要綱

第一 動物の所有者又は占有者の責務規定の拡充

動物の所有者又は占有者は、その動物について環境大臣が飼養及び保管に関しよるべき基準を定めているときは、当該基準を遵守しなければならないことを明確にすること。

第二 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等

一 登録拒否事由の追加

都道府県知事が第一種動物取扱業の登録を拒否しなければならない要件として以下の事由を追加すること。

1 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

2 外国為替及び外国貿易法(動物の輸出入に係る違反に限る。)、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律及び特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

3 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者等

4 第一種動物取扱業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者

5 使用人のうちに1~4に該当する者のあるもの

二 遵守基準の具体化

1 第一種動物取扱業者が遵守しなければならない基準は、動物の愛護及び適正な飼養の観点を踏まえつつ、動物の種類、習性、出生後経過した期間等を考慮して、次の事項について定めるものとすること。

(1) 飼養施設の管理、飼養施設に備える設備の構造及び規模並びに当該設備の管理に関する事項

(2) 動物の飼養又は保管に従事する従業者の員数に関する事項

(3) 動物の飼養又は保管をする環境の管理に関する事項

(4) 動物の疾病等に係る措置に関する事項

(5) 動物の展示又は輸送の方法に関する事項

(6) 動物を繁殖の用に供することができる回数、繁殖の用に供することができる動物の選定その他の動物の繁殖の方法に関する事項

(7) その他動物の愛護と適正な飼養に関し必要な事項

2 犬猫等販売業者に係る1の基準は、できる限り具体的なものでなければならないこと。

三 犬、猫等を販売する場合における対面による情報提供の充実

第一種動物取扱業者のうち犬、猫等の動物の販売を業として営む者が動物を販売する場合において動物の状態を直接見せ、対面による情報提供を行う義務について、当該行為を行う場所をその事業所に限定すること。

四 帳簿の備付け等に係る義務の対象の拡大

1 犬猫等販売業者に対する帳簿の備付け及び報告に係る義務について、動物販売業者一般のほか、貸出し、展示その他政令で定める取扱いを業として営む者も対象とすること。

2 犬又は猫の譲渡を行う第二種動物取扱業者について、個体に関する帳簿の備付け及び保存を義務付けること。

五 動物取扱責任者の要件の充実

1 動物取扱責任者は、動物の取扱いに関し、十分な技術的能力及び専門的な知識経験を有する者のうちから選任するものとすること。

2 都道府県知事が行う動物取扱責任者研修について、当該研修の全部又は一部を委託することができるものとすること。

六 勧告及び命令の制度の拡充

1 勧告に従わない動物取扱業者の公表制度の創設

勧告に従わない動物取扱業者について、その旨を公表することができる制度を設けること。

2 勧告及び命令の期限の明確化

都道府県知事が動物取扱業者に対して行う勧告及び命令について、三月以内の期限を設けて行うものとすること。ただし、特別の事情がある場合は、この限りでないこと。

3 第一種動物取扱業者であった者に対する監督の強化

都道府県知事は、第一種動物取扱業者がその登録を取り消された場合等において、当該者に対し、当該取消し等の日から2年間は、動物の不適正な飼養又は保管により動物の健康及び安全が害されること並びに周辺の生活環境の保全上の支障が生ずることを防止するため、勧告、命令、報告の徴収及び立入検査を行うことができることとすること。

七 幼齢の犬又は猫の販売等の制限に係る激変緩和措置の廃止

1 出生後56日を経過しない犬又は猫の販売等の制限について、附則で定められた激変緩和措置に係る規定を削除すること。

2 専ら文化財保護法の規定により天然記念物として指定された犬の繁殖を行う犬猫等販売業者が、犬猫等販売業者以外の者にその犬を販売する場合について、1の特例を設けること。

第三 動物の適正飼養のための規制の強化

一 都道府県知事による不適正飼養に係る指導等の拡充

1 都道府県知事は、周辺の生活環境が損なわれている事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、その事態の改善に必要な指導、助言を行うことができることとすること。

2 都道府県知事は、周辺の生活環境の保全等に係る措置に必要な限度において、動物の飼養又は保管をしている者に対し、飼養若しくは保管の状況その他必要な事項に関する報告徴収又は飼養施設等への立入検査を行うことができること。

二 特定動物に関する規制の強化

1 特定動物の愛玩目的での飼養又は保管を禁止すること。

2 特定動物同士の交雑種を規制対象とすること。

三 犬及び猫の繁殖制限の義務化

犬又は猫の所有者は、これらの動物がみだりに繁殖して適正飼養が困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖防止のため、生殖を不能にする手術その他の措置を講じなければならないこと。

四 動物殺傷罪等の厳罰化

1 愛護動物の殺傷に対する罪の法定刑を「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」(現行:2年以下の懲役又は200万円以下の罰金)に、虐待、遺棄等に対する罪の法定刑を「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(現行:100万円以下の罰金)に、それぞれ引き上げること。

2 動物虐待罪の例示について、「みだりに、その身体に外傷が生じるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること」及び「みだりに、飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること」を加えること。

第四 都道府県等の措置等の拡充

一 所有者不明の犬及び猫の取扱い

都道府県等は、所有者の判明しない犬又は猫の引取りをその拾得者その他の者から求められたときは、周辺の生活環境が損なわれている事態が生ずるおそれがないと認められる場合その他の引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができること。

二 動物愛護管理センター

1 都道府県等は、動物の愛護及び管理に関する事務を所掌する部局又は当該都道府県等が設置する施設において、当該部局又は施設が動物愛護管理センターとしての機能を果たすようにするものとすること。

2 動物愛護管理センターは、次に掲げる業務を行うものとすること。

(1) 動物取扱業の登録、届出、監督等に関すること。

(2) 動物の飼養又は保管をする者に対する指導、助言、勧告、命令、報告の徴収及び立入検査に関すること。

(3) 特定動物の飼養又は保管の許可及び監督に関すること。

(4) 犬及び猫の引取り、譲渡し等に関すること。

(5) 動物の愛護及び管理に関する広報その他の啓発活動を行うこと。

(6) その他動物の愛護及び適正な飼養のために必要な業務を行うこと。

三 動物行政を担う地方公共団体における動物愛護管理担当職員の拡充

1 「動物愛護担当職員」の名称を「動物愛護管理担当職員」に改めること。

2 都道府県等が条例により「置くことができる」こととされている動物愛護管理担当職員について、必置とすること。

3 指定都市、中核市及び政令で定める市以外の市町村は、条例で定めるところにより、動物愛護管理担当職員を置くよう努めるものとすること。

四 動物愛護推進員の委嘱の努力義務化

都道府県知事等が「委嘱することができる」こととされている動物愛護推進員について、「委嘱するよう努めるものとする」とすること。

第五 その他

一 動物を殺す場合の方法に係る国際的動向の考慮

環境大臣は、動物を殺す場合の方法について、必要な事項を定めるに当たっては、国際的動向に十分配慮するよう努めなければならないこと。

二 獣医師による通報の義務化

獣医師が虐待を受けたと思われる動物を発見したときの通報に係る努力義務について、義務に引き上げるとともに、遅滞なく行わなければならないものとすること。

三 関係機関の連携の強化

国は、①動物の愛護及び管理に関する業務を担当する地方公共団体の部局と畜産、公衆衛生及び福祉に関する業務を担当する部局等の関係機関並びに民間の団体との連携の強化及び②地域における犬、猫等の適切な管理に関し、情報提供等必要な施策を講ずるよう努めるものとすること。

四 地方公共団体に対する財政措置等

国は、地方公共団体が動物の愛護と適正な飼養の推進に関する施策を実施するための費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるように努めるものとすること。

第六 マイクロチップの装着等

一 マイクロチップの装着に係る義務

1 犬猫等販売業者の義務

犬猫等販売業者は、犬又は猫を取得したときは、環境省令で定めるところにより、当該犬又は猫を取得した日(生後90日以内の犬又は猫を取得した場合にあっては、生後90日を経過した日)から30日を経過する日(その日までに当該犬又は猫の譲渡しをする場合にあっては、その譲渡しの日)までに、当該犬又は猫にマイクロチップを装着しなければならないこと。ただし、当該犬又は猫にマイクロチップが装着されている場合その他環境省令で定める場合は、この限りでないこと。

2 一般飼い主等の努力義務

1以外の犬又は猫の所有者は、環境省令で定めるところにより、当該犬又は猫にマイクロチップを装着するよう努めるものとすること。

二 犬又は猫の登録

1 犬又は猫にマイクロチップを装着した者の義務等

(1) 1によりその所有する犬若しくは猫にマイクロチップを装着した者又はマイクロチップが装着された犬若しくは猫であって登録を受けていないものを取得した犬猫等販売業者は、環境省令で定めるところにより、その所有する犬又は猫について、環境大臣の登録を受けなければならないこと。

(2) 環境大臣は、登録をしたときは、環境省令で定めるところにより、当該登録を受けた者に対し、登録証明書を交付しなければならないこと。

2 登録されている犬又は猫の所有者の義務

(1) 登録を受けた者は、犬又は猫の所在地その他の環境省令で定める事項に変更を生じたときは、環境省令で定めるところにより、その旨を環境大臣に届け出なければならないこと。

(2) 登録を受けた犬又は猫を取得した者は、環境省令で定めるところにより、変更登録を受けなければならないこと。

3 狂犬病予防法とのワンストップ化

犬の情報登録については、狂犬病予防法の登録手続とのワンストップ化を図ること。

4 指定登録機関

環境大臣は、環境省令で定めるところにより、その指定する者に、犬又は猫の登録の実施等に関する事務を行わせることができること。

5 その他

その他所要の規定を整備すること。

第七 施行期日等

一 施行期日

この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、第二の二及び第二の七については公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日、第六及び二の7については公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。

二 検討条項

1 国は、動物を取り扱う学校、科学上の利用に供する動物を取り扱う者等による動物の飼養又は保管の状況を勘案し、これらの者を動物取扱業者に追加することその他これらの者による適正な動物の飼養又は保管のための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。

2 国は、両生類の販売、展示等の業務の実態等を勘案し、両生類を取り扱う事業に関する規制の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。

3 1及び2のほか、国は、動物取扱業者による動物の飼養又は保管の状況を勘案し、動物取扱業者についての規制の在り方全般について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。

4 国は、多数の動物の飼養又は保管が行われている場合におけるその状況を勘案し、周辺の生活環境の保全等に係る措置の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。

5 国は、愛護動物の範囲について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。

6 国は、動物が科学上の利用に供される場合における動物を供する方法に代わり得るものを利用すること、その利用に供される動物の数を少なくすること等による動物の適切な利用の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。

7 国は、マイクロチップの装着を義務付ける対象の拡大並びにマイクロチップを装着されている犬及び猫であってその所有者が判明しないものの所有権の扱いについて検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

8 1から7のほか、政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律による改正後の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。

三 その他

経過措置その他所要の規定を整備すること。

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