-後ろ蹴り
危険行為として、どのような場所でも禁止となっていたはずの、馬に後ろ蹴りさせる行為が、人が密集した場所であれどこであれ、2016年の例大祭でも行われてしまいました。
被食種である馬は、臆病で敏感です。後ろ蹴りは攻撃ではなく馬にとっては防御。不安や危険から遠ざかろうとする行動です。その臆病な性質を利用し、心理的抑圧、恐怖を与えて後ろ蹴りさせるという行為は、「危険行為」であるだけではなく、環境省の示す「積極的な虐待」にあたる行為でもあります。
足の付け根を刺激する、綱で馬の下半身を叩く、後方から脅かす、ハミを強く引っ張り痛みを与えるという方法で2016年も行われてしまった「後ろ蹴り」は、その様子が撮影されている動画を検証すると、当日思いついて即興で行われたものではなく、練習の段階から「後ろ蹴り」をさせるべく仕込んでいたことが分かります。
後ろ蹴り 2016年動画
後ろ蹴りさせている(28番 こ粋連乃會)
https://www.youtube.com/watch?v=F62oehpQRBs
41分5秒 後ろ蹴りさせている(28番 こ粋連乃會)
https://www.youtube.com/watch?v=nsN4g0oM2l8
4分29秒 後ろ蹴りさせている(32番 清水同志会)
https://www.youtube.com/watch?v=VVJijPREkTI
46分33秒 後ろ蹴りさせている(32番 清水同志会)
https://www.youtube.com/watch?v=nsN4g0oM2l8
4分 後ろ蹴りさせている(32番 清水同志会)
https://www.youtube.com/watch?v=RNm5SbQFejg
17分28秒 後ろ蹴りさせている(9番 熊工會 飾馬奉納団)
https://www.youtube.com/watch?v=oHfFjwvyfN8
1分27秒 後ろ蹴りさせている (9番 熊工會 飾馬奉納団)
https://www.youtube.com/watch?v=nPWgGWL47CA
後ろ蹴りさせている(また、ハミの乱暴な扱いが馬に苦痛を与えています)(30番 なみあし會)
https://www.youtube.com/watch?v=W2ikeLH2zEY
1分 後ろ蹴りさせている(また、ハミの乱暴な扱いが馬に苦痛を与えています)(26番 済々黌飾馬奉納団 絆)
https://www.youtube.com/watch?v=UpSTwaowh4g
45秒 後ろ蹴りさせようとして失敗している(また、ハミの乱暴な扱いが馬に苦痛を与えています)(4番 熊城会)
https://www.youtube.com/watch?v=dhKkd9Xi20Q
20秒、45秒 後ろ蹴りさせている(また、ハミの乱暴な扱いが馬に苦痛を与えています)(14番 NTTグループ奉賛会)
https://www.youtube.com/watch?v=uOTdIuTupgM
-ハミの暴力的な扱いが馬に苦痛を与えている
これまで、祭りを盛り上げるために、馬をあおり、横歩きや右左へとぐるぐる引き回すなどの不自然な動きを強要されてきましたが、これらを実行するため2016年もハミを執拗にひっぱり馬に苦痛が与えられています。
そもそもハミは口という馬の体の中で最も敏感な部分に痛みを与えて馬を制御しようとするものであり、馬を怖がらせ、痛みや苦しみ、怪我の要因となるものです。ハミで舌を切ってしまう馬もいます。
タフツ大学の外科名誉教授ロバート・クック博士(獣医師)は、66 頭の飼養馬と 12 頭の野生馬の頭蓋骨を用いて、ハミによるダメージの証拠の調査を完成させており、この研究によると88%の飼養馬がハミが当たる骨付近の構造に骨または歯のダメージを受けていたということです。不適切なハミの使用は馬にかなりの痛みを引き起こす可能性があります。(注1)そして2016年藤崎八幡宮例大祭で撮影された動画を検証すると、本例大祭におけるハミの使用方法は極めて不適切です。
馬たちの耳は後方に傾斜しており、このことは馬の不安や緊張や痛みを表しています(注2)これらのハミの暴力的な扱いは、環境省の示す「積極的な虐待」にあたる行為だといえます。
ハミの暴力的な扱い 2016年動画
19分45秒 ハミの暴力的な扱い(10番 下通繁栄会)
https://www.youtube.com/watch?v=oHfFjwvyfN8
*馬の感じている苦悩に対して何ら対処が払われなかったことが、この後の後ろ蹴り(45分3秒)を引き起こしたと考えられます。
ハミの暴力的な扱い(33番 高麗門)
https://www.youtube.com/watch?v=Fhr3rXP9its
5分38秒 ハミの暴力的な扱い(33番 高麗門)
https://www.youtube.com/watch?v=VVJijPREkTI
ハミの暴力的な扱い(31番 健軍みゆき友好会)
https://www.youtube.com/watch?v=lIqKeaJDrP0
30秒 ハミの暴力的な扱い(7番 肥後 眞會)
https://www.youtube.com/watch?v=vsg8kYZEtPU
1分 ハミの暴力的な扱い(16番 託麻 北勢會)
https://www.youtube.com/watch?v=lRHYhP1bTcI
ハミの暴力的な扱い(13番 重浦畜産 熊本 凌)
https://www.youtube.com/watch?v=xhabeWXtJGg
ハミの暴力的な扱い (24 青連馬道會)
https://www.youtube.com/watch?v=BUAdMW-XeKE
注意しなければならないのは、これらの動画は、動画サイトにアップロードされているものを検証したにすぎないということです。例大祭では9月18日だけで5時間にも及ぶコースを馬は歩かされており、馬に対する虐待的行為は実際にはもっと多いものと推定されます。
2016年の例大祭における馬への虐待的行為をふまえ、関係部署(熊本南警察署、熊本北警察署、藤崎八幡宮)に再度、下記の要望を提出しました。
- 2016年例大祭において虐待行為をおこなった7団体の出場停止。
該当する団体は下記の7団体となります。(番号は2016年例大祭における飾馬奉納順位)
4番 熊城会
9番 熊工會 飾馬奉納団
14番 NTTグループ奉賛会
26番 済々黌飾馬奉納団 絆
28番 こ粋連乃會
30番 なみあし會
32番 清水同志会 - 「後ろ蹴り禁止」の周知。
- 馬をあおる、ハミを使用した横歩きや右左、ぐるぐる引き回すなどのパフォーマンスの禁止。
- 環境省「飼育改善指導が必要な例(虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば虐待に該当する可能性があると考えられる例)について」を神宮、奉納団体、警察など関係者間で共有すること。
- 馬への虐待行為、後ろ蹴りなど道路交通法上問題となる行為があった際、その場で指導できるよう、奉納団体ごとに監視員(あるいは警察官)を配備すること。
- 長時間の使役、例大祭の時期を考慮し、飾馬奉納の日は、1kmごとに馬の水掛場を設置すること。
2017年8月 これらの要望について回答を求めました。
警察からの回答(熊本南警察署と熊本北警察署の合同回答)
まず、2016年12月に藤崎八幡宮で反省検討会をした際に、警察から1~3については申し入れはしている、とのことでした。しかし判断は藤咲八幡宮側にゆだねられるとのこと。
4については、藤崎八幡宮側に警察が通達できる立場ではない。とのことでしたので、警備にあたる警察官内で周知してほしい旨を要望しました。
5につていは警察官はすべての道順に配置している。見物客の安全を守るのが警備の第一意義だが動物の扱いについて警察が現場で注意することもあったとのことでした。また各団体がどういう問題ある扱いをしていたかという報告も後で出されているそうです。
6については、公道上に水掛け場を設置するには警察の道路使用許可が必要ですが、当日人通りの多い公道で使用許可を出せる場所は限られるそうです。そのため各団体の判断で民家などと交渉して水掛け場を用意するようですが、水掛け場の用意の有無は各団体の任意となっています。
藤崎八幡宮からの回答
1~6までの要望に対し「動物愛護の(内部)規定に沿ってやっている」とのことで、具体的な回答は得られませんでした。規定というのは藤崎八幡宮独自の内部規定ですが、その内容については不明です。出場停止を求めていた1については「こ粋連乃會」以外の団体はすべて2017年も出場する予定になっています。
-飲酒
市民からの通報では、馬を取り扱う者が行列の出発前に飲酒することもあるそうです。飲酒も、馬を暴れさせるという行為も道路交通法に違反します。飾馬行列は道路使用許可をとって行われており、本来なら許可取り消しになる行為が行われてしまっています。
2016年7月20日の熊本日日新聞のWEB版からの抜粋ですが
『飾り馬奉納「半減」 藤崎宮例大祭』というタイトルで次のような文章が掲載されていました。(赤字はARCが強調)
熊本市の藤崎八旛宮秋季例大祭の呼び物「神幸行列」で飾り馬を奉納する団体が前年の65団体からほぼ半減し、35団体にとどまることが19日、分かった。熊本地震の被災者への配慮に加え、運営に必要な寄付金を集めにくいことなどが影響し、自粛が広がったとみられる。
(中略)
その結果、(1)屋外での練習禁止(2)寄付先での馬追いや音出しの禁止(3)神幸行列での酒類提供の禁止-などを順守するよう各団体へ通達。7月上旬の期限に奉納を申し込んだのは、高校同窓会など35団体にとどまった。
(中略)
一方、寄付金の集めにくさも自粛に影響。ある奉納団体は「通達は事実上の寄付回り禁止。企業や店舗など3百~5百カ所にお願いしてきた寄付がなければ運営は無理」。別の団体は「予算を縮小し参加しても、お酒も飲めず、勢子から不満が出る」と明かす。
馬は「軽車両」に当たるので、馬を引き連れる人の飲酒は禁止のはずです。
「神幸行列での酒類提供の禁止」とありますが、馬を引き連れる人も飲んでるなら大問題です。それ以前に神への奉納行事で「お酒も飲めず、勢子から不満が出る」ような奉納団体は、問題がありますし、そもそも神幸行列で酒類が提供される、という時点でこの行事がどういう性質のものなのかが分かるような気がします。
注1 参考文献
*Equine Health Care News 2013年1月15日「適切なハミの評価と歯の健康」
*馬のハミ制御の病態生理(PATHOPHYSIOLOGY OF BIT CONTROL IN THE HORSE)ロバート・クック1999年発表2007年更新
http://www.bitlessbridle.com/pathophysiology.pdf
注2 参考文献
*雑誌「獣医麻酔と鎮痛(Veterinary Anaesthesia and Analgesia)」2015年1月号 研究論文「馬の痛みの顔」(An equine pain face)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/vaa.12212/full
*15 Minute Horse Fix 「What Are My Horse’s Ears Telling Me?」2013年1月1日記事