ホームセンター山新　ベタを瓶詰

最近あまり見かけることがなくなっていたベタの瓶詰販売。

今の時代に、もはやこのような方法で動物を展示販売をする企業はないだろうと思っていたので、茨城県を中心にホームセンター・大型ペット専門店（トモニー）を運営する「山新」でベタの瓶詰販売が行われていると聞いた時は大変驚きました。

年末に向けてクリスマスツリーを模した展示。ビンの中にベタが入れられています。

ベタ＝インテリアとしての扱いがここまで全面的に押し出された展示は見たことがありません。泳ぐこともできない狭いビンに閉じ込められ、さまざまな色に照らされたベタがどのような感情を抱いているかを考えると胸が痛みます。

魚は高度な知性と感情をもっており、私たちと同じように苦悩します。

ベタのオスは大きなひれを持っており、このヒレを拡げて威嚇する「フレアリング」が美しいとして「観賞用」に飼育されています。ベタは狭い容器の中で飼育されることが多いです。ベタの飼育容器として販売されているものには10㎝×10㎝×高さ20㎝（2リットル程度）しかないものもあります。
観賞魚にされる魚はどの魚も自然界に比べて著しく狭い水槽に閉じ込められますが、そのなかでもベタはさらに狭い容器の中に閉じ込められます。それを正当化する理由として、よく使われるのが「他のオスと一緒に飼育すると闘争してしまう」というものですが、飼育するなら、1匹を広い水槽の中で飼育すればいいだけの話で、何の言い訳にもなっていません。

ビン詰販売には微塵の動物福祉もなく、どのような言い訳も通用しません。アニマルライツセンターはこのような展示販売を廃止していただけるよう、下記のとおり山新に要望書を提出しました。

山新への要望

株式会社　山新
代表取締役社長　山口暢子様

2020年11月16日

拝啓
貴社におかれましては時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
わたしたち認定ＮＰＯ法人アニマルライツセンターは、動物の権利・福祉の向上を目指して市民運動を行っております。

私どもの元に、貴社のいくつかの店舗におけるベタの飼育展示方法について市民から通報がありました。
確認しましたところ、たしかに問題があり、動物愛護管理法にも抵触するため、下記のとおり改善をお願い申し上げます（問題の飼育展示方法は別紙に添付します）。

ベタを、泳ぐことも隠れることもできない小さなビンや容器の中で展示販売することの中止
ベタの販売を継続するならば、次の環境を用意してください

◎少なくとも約38リットルで、深すぎない水槽に単飼する
泳ぐスペースが多すぎるということはありませんので多い分にはどれだけ多くても大丈夫です。サウスフロリダ大学の生物学担当のGaddy Bergmann氏は、ベタは最低10ガロンの水が必要だといいます。10ガロンというと約38リットル。水槽のサイズでいうと40センチ×30センチ×30センチほどです。また国際レインボーフィッシュ協会及びドイツのライブベアラー協会の元議長Harro Hieronimus氏は、13ガロンが必要だとも言っています。
ベタは浅瀬で左から右に泳ぐのに慣れているので、深い水槽は彼らの習慣にとって理想的ではありません。
闘争するため、オスの場合は単飼いする必要があります。

◎水槽内に岩や生きた水草、隠れ場のある豊かな環境の用意
ベタは好奇心が強く水槽内を泳ぎ回って探索するのが好きです。
貴社では闘争心をあおりフレアリングさせるために、お互いの姿が見えるようベタを収容したビンを設置していますが、隠れ場がなく隣のベタが見えるという環境は、ベタを常にストレス下におき、疲弊させてしまいます。
水槽内に設置する構造物は、ベタの長いヒレを傷つけない形状のものである必要があります。

◎25～28度に維持できるヒーターの設置

◎適切なろ過装置の設置
ベタは細菌性の病気に非常に敏感であるため、効果的なろ過システムが必要です。その際、水流を弱くする必要があります。ベタの長く流れるヒレは、強い流れの中では泳ぐのを困難にさせます。

ベタは水中の酸素量が少ない環境でも生きていける動物ではあります。しかしそれは小さなビンが適切な環境であることを意味しません。また「自然界でも水たまりのようなところに住んでいる」と狭小スペースでの飼育を正当化する声がまだ一部で残っていますが、実際には自然界のその「水たまり」は「巨大な池」で小さなビンとは全く異なります。

法令上の問題

魚類は動物取扱業の対象動物ではなく、罰則規定はありません。しかしながら、「動物の愛護及び管理に関する法律」は、魚類にも適用される部分があります。例えば、
（基本原則）
第二条　動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
２　何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない。

この原則は魚類にも適用されます。
しかし貴社の現行の狭小スペースでの魚の飼育は、「動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保」からはかけ離れたものになってしまっています。

また同法に基づく「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」には次のように書かれています。
動物の愛護の基本は、人においてその命が大切なように、動物の命についてもその尊
厳を守るということにあり、動物をみだりに殺し、傷つけ又は苦しめることのないよう
取り扱うことや、その生理、生態、習性等を考慮して適正に取り扱うことである。人と
動物とは生命的に連続した存在であるとする考え方や生きとし生けるものを大切にする心を踏まえ、動物の命に対して感謝及び畏敬の念を抱くとともに、この気持ちを命あるものである動物の取扱いに反映させることが欠かせないものである。

しかし、貴社におけるベタの取り扱いは事実上インテリアとしての扱いで、この基本指針にある「生きとし生けるものを大切にする心」が欠けてしまっています。

率直に申し上げて、このような方法で魚が販売されていることに、連絡をくれた市民の皆さんだけでなく、私どもも非常にショックを受けております。
上述した環境を用意することが難しければ、ベタの取り扱い自体の廃止をご検討下さい。

2015年、貴社と同じように小さな容器で観賞魚を陳列販売していたあるホームセンターは、当法人の要望をうけて、この販売方法を廃止してくださいました。2016年には、小さなビンの中で熱帯魚を飼育しようという「ボトルアクアリウムづくり」のイベントを企画していた企業に対して、市民から多くの声が寄せられた結果、このイベントは中止になりました。

コロナ後のグリーンリカバリーが提唱され、SDGSsが広まる中、企業の社会的責任やコンプライアンスはますます重要になってきています。
貴社におかれましても、倫理的な選択をしていただけますことを、心よりお願い申し上げます。

　お手数ではございますが、書面（郵便またはFAX）あるいは電子メールにてご回答いただければ幸甚です。

　以上、何卒、よろしくお願い申し上げます。

敬具

認定NPO法人アニマルライツセンター

山新からの回答

回答がなかったため、2020年12月16日に山新本社に電話したところ、「検討事項とするが回答はしない」との方針であることが分かりました。改善もされていないそうです。

山新では上に添付した写真の店舗だけでなく、他の店舗でもベタを瓶詰販売していることが分かっています。山新を利用されたことのある皆さん、これから利用される皆さん、是非山新に、このような展示販売をやめてほしいと声を届けてください

山新お問い合わせ

https://www.yamashin-grp.co.jp/contact/

これからベタなどの魚を観賞用に飼育することを検討している皆さんは、その前に、魚を狭い水槽に閉じ込めるということがどういうことなのか一度考えてみてください。感受性のある生き物を自然界とは比べ物にならない狭い水槽に閉じ込めることが、魚を苦しめることに繋がらないか、考えてみてください。
「観賞魚」という産業を支持し続ける限り、魚は狭い水槽に閉じ込められ続けます。ベタなら瓶詰のような扱いを受けることもあります。私たち一人一人の選択が、動物の苦しみに繋がっていることを忘れないでください。

＊ベタの習性等に関して参照したサイト

How To Set Up Your First Betta Fish Tank (Infographic)
How to Take Care of a Betta Fish: History, Life Span, Feeding, and Tank Setup
AMAZONAS Videos: Bettas in the Wild – What They Tell Us About Minimum Tank　Sizes for Bettas 26 Mar, 2014
Catching Wild Bettas in THAILAND for breeding conservation! Betta smaragdina natural habitat! youtube
BETTAS NEED MORE THAN BOWLS Apr 15, 2019 / General Care / Preventive Health / Fish