畜産物に農薬が使われていると言われてもピンとこない人は多いだろう。でも、世界の農薬の多くが畜産物に使われている。飼料生産で使われる農薬、動物の飼育現場で使われる農薬の2つに分けられるが、この記事では飼料生産で使われる農薬の甚大な被害を見ていきたい。日本の工場畜産で苦しむ動物たちが食べている濃厚飼料の自給率はたったの13%(2023年の農林水産省資料より)である。この数字は1%程度づつ増えたり減ったりしていて横ばいだ。ほとんどの餌は輸入に頼っていることがわかる。米国、ブラジルなどからやってくる濃厚飼料の原材料になる大豆ミール、とうもろこしなど。その中で大豆ミールの半分弱はブラジルからやって来る。ブラジルでは飼料用の大豆などを生産するために、生態系、森林を大規模に破壊し続けている。飼料生産による環境への影響はこちらの記事を参照してほしい。アマゾンやセラードなどの大自然のど真ん中に作られた大規模プランテーションでは、遺伝子組み換えの飼料用作物がほとんどである上、そこには農薬と窒素化学肥料がたっぷり使用される。農薬による高汚染を引き起こすアグリビジネスブラジルの市民メディアと調査機関の調査によると2019~2022年の間に、ブラジルでは14,549人が農薬中毒になりそのうち439人が死亡したという。。48.2%がアフリカ系黒人のブラジル人で、これらの人たちが危険な農薬散布に多く従事している主に大豆、とうもろこし、綿花、タバコ農場で発生。ブラジルの農薬の79%がプランテーションで消費される。52%が大豆、10%がとうもろこし5000件以上(35.8%)の自殺が含まれ、これは農薬によってうつ病などの精神疾患にかかるため実際の数は50倍になる可能性もある10 年間に農薬による殺人未遂が 305 件発生と発表している。アフリカ系黒人はキロンボーラと呼ばれており、かつて奴隷として連れてこられた黒人であり教育へのアクセスが乏しく人種差別により就職がより困難であり、農薬散布のような不安定で危険な仕事に従事することになる。また、ブラジルで散布される農薬のうち、実に52%が大豆をしめており、つまりは工場畜産用の鶏や豚の餌に大量の農薬がかかっているということである。この数字の多くは生産者側の被害だ。農薬の被害は農薬散布をする側ではなく、自分たちの住む場所に農薬を撒かれた先住民、その下流に暮らす住民の健康を奪っている。先住民族、下流に暮らす人々への影響アマゾンやセラード、パラ、パンタナールなどに暮らす先住民族は、ブラジル政府による土地の承認を待っているが、その行政手続きは遅々として進まず、何十年と待ち続けている。待ち続けている間に、土地を侵略され、プランテーションが出来上がるなどし、先住民族が住む直ぐ側で大量の農薬が撒かれることになる。これらの土地に入ってきた農家の言い分は、「もともとそこには先住民は住んでいなかった」という悪質なものだ。自分たちの土地にプランテーションができると、その地域、水脈は農薬や窒素化学肥料に汚染されていく。先住民族の土地で収集された薬草や果物を含む植物の約 88% には、残留農薬が含まれるという。もちろん彼らは農薬をかけていないのに・・・だ。2018年にマットグロッソ州の住民一人当たり65.8リットルの農薬(これらの禁止物質の一部は)に暴露されたと推定、田舎の都市だと300リットル(先住民族の数値は不明)有毒な物質であるカルボフランを含む、作物畑から遠く離れた生態系と水域で高レベルの農薬が検出されている。*1神経疾患がパラー市で10年で667%増加したというデータもある。住民は以下のように証言している。「彼らが大豆に[毒を]噴霧した日がありました。私は畑で働いていました。そして気分が悪くなり始めました。目がかゆくて、すべてが少しぼやけて見えました。唇がひび割れた。喉が閉まるような感じがした。空気がなかった。まるで息が止まったかのようでした」「水は大豆農園の真ん中から来ています。そして毒もついてきます。イガラペに入ったら痒くなった。かゆみ、刺し傷、灼熱感があります。力強く攻撃してくるとき、私が引っ掻くと破片が出てきて、皮膚が破れ始めます」さらに、子供の白血病にも繋がっている。2008年~2019年、少なくとも123人の10歳未満の子供の死亡が、セラードとアマゾンでの大豆栽培における農薬の使用に間接的に関連していることがわかったという*3。大豆生産量が10パーセント増加するごとに、住民10万人当たり5歳未満の子どもが4人、10歳未満の子どもが2.1人死亡*4しているという。面積の少なくとも 5% が大豆で占められているマットグロッソ州の自治体の女性、子供、青少年は、白血病とリンパ腫を発症して死亡するリスクが 白血病26% と、リンパ腫は33% 高いことがわかった*5。大豆畑がある=農薬地帯であるということ先住民族の活動家はこう述べています。「大豆農園の近くに住んでいる人々は、そこであまり時間を過ごしません(移住してしまう)。それはあなたには対処できないからです。家の中に入ってくる大量の毒物と一緒に暮らすことはできません。」「大豆は多くのコミュニティを破壊し、森林を伐採しました。また、農業生産も減少し、川に泥が堆積しました。私たちにとって、大豆(モノカルチャー)は死の文化です。」先住民族が土地侵略をされ、暴力を受け、そして農薬により苦しんでいるその現状は、人間だからこそ判明する。忘れてはならないのは、そこには先住民族だけでなく、野生動物が多数暮らしているということだ。先住民族は、野生動物の写し鏡でもあり、そして野生動物にはなんの補償もなく、ただただ、数を減らし、ただただ苦しめられ続けている。この「死の文化」が、工場畜産とイコールなのだ。畜産物を利用する企業は、人々は、この大規模な公害の責任をいつか問われるはずである。そうあってほしい。汚染された水と、土砂が流れ込んでいる河川Leonardo Milano*1 https://amazonianativa.org.br/pub/impacts-of-cotton-monoculture-on-health-and-the-environment-in-mato-grosso/ https://news.mongabay.com/2023/01/poisoned-by-pesticides-health-crisis-deepens-in-brazils-indigenous-communities/ https://eu.boell.org/en/PesticideAtlas*2 https://apublica.org/2023/11/doencas-neurologicas-ligadas-a-uso-de-agrotoxicos-crescem-600-em-cidade-paraense/*3 https://apublica.org/2023/10/aumento-de-morte-de-criancas-por-leucemia-e-associada-a-expansao-da-soja-no-brasil/*4 https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2306003120クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article動物の未来BASE&懇親会【”動物を守る”運動のあり方を探ろう】 Next Articleケージフリーから始める、カフェこぼれびの社会変革 2024/02/01