アニマルライツセンター・アドバイザー 細川幸一2022年5月23日~26日の同機関の総会でロゴおよび略称の変更が決議され。総会以降、略称は「OIE」から「WOAH」に変更された。WOAHは「World Organization for Animal Health」の通称であり、直訳すれば、WHO(世界保健機関)にならって、「世界動物保健機関」とするのが妥当である。しかしながら、農水省は同省HPで下記の理由をあげて、「OIE」、「国際獣疫局」の名称を使用し続けた。国際獣疫事務局はフランス語で「Office International des Epizooties」(略称:OIE)ですが、2003年には、通称として「World Organization for Animal Health」を使用することが決まりました。また、略称については、2003年以降も「OIE」が使用されていましたが、2022年に通称の略称として「WOAH」を使用することが決まりました。なお、「WOAH」は通称の略称に相当し、法的名称の略称は引き続き「OIE」であることから、原則として、当省HP等においては「OIE」と表記しています。 筆者はこれを、農水省が、意図的に名称の変更を嫌い、アニマルウェルフェアがWOAHの重要な活動目標になっていることを国内で認識させない意図をもっている表れと考えて、問題視し、2023年7月7日の「動物をめぐる院内集会」(衆議院第一議員会館大会議室)でもこの問題を指摘した。 そうしたこともあってか、農水省は略称のOIEはWOAHに改めたが、その日本語表記については、相変わらず国際獣疫事務局としている。現在の農水省HPでの説明は下記のとおりだ。国際獣疫事務局(WOAH) 国際獣疫事務局の法的名称は、フランス語で「Office International des Epizooties」(略称:OIE)ですが、2003年には、通称として「World Organisation for Animal Health」を使用することが決まりました。また、略称については、2003年以降も「OIE」が使用されていましたが、2022年に通称の略称として「WOAH」を使用することが決まりました。 なお、「WOAH」は通称の略称に相当し、法的名称の略称は引き続き「OIE」ですが、当省HP等では、「WOAH」と表記しています。 フランス語とスペイン語では「OMSA」(Organisation mondiale de la santé animale)の略称になっている。WOAHのULRは https://www.woah.org であり、同HPでも以下のように表示している。「World Organization for Animal Health founded as OIE」農水省はアニマルウェルフェアに国民の注目が集まるのを避けるために「国際獣疫事務局」の名称使用を続けていることは明らかだろう。ちなみに、隣国の漢字圏である韓国と中国の政府が利用している表記は下記のとおりである。参考:韓国表記:세계동물보건기구(世界動物保健機関)中国語表記:世界动物卫生组织(世界動物衛生組織)この点につき、筆者は総務省行政評価局の行政相談窓口にクレームを申し立てたところ、以下の回答があった。今回ご相談をいただきました国際獣疫事務局の使用名称の変更のご要望について、政府代表を務めている農林水産省消費・安全局動物衛生課へ連絡していたところ、以下のとおり回答がありましたので、ご連絡します。 (農林水産省消費・安全局動物衛生課からの回答) この度は、WOAHの日本語名称に関して御意見をいただきありがとうございます。 WOAHの日本語名称については、我が国が1930年に締結した国際条約である「国際獣疫事務局をパリに創設する為の国際協定」における表記に基づいております。 農林水産省としては、国内関係者の混乱を招かないためにも、条約に基づき「国際獣疫事務局」の表記を使用しているところですので、御理解いただけますと幸いです。すなわち、およそ95年前の1930年の国際条約上の表記を持ち出し、これを使用しているというのである。今後も名称変更を求めてロビー活動をする必要がある。さらに動物行動学の佐藤衆介・東北大学名誉教授はWOAHコード(旧OIEコード)の名称についてもふれている。「Terrestrial Animal Health Code」を陸生動物衛生規約と訳していることは問題であるとする。アニマルウェルフェアが第7部としてまとめられる以前より本規約はあり、「health」は衛生管理により守られるとの意識かと思えるが、アニマルウェルフェアの改善によっても守られることから、「保健」と訳すべきものであり、同コードは陸生動物保健規約とすべきであるという主張である。日本においてアニマルウェルフェアが進んでいない理由のひとつにこうした農水省の消極姿勢があると考えられる。是正を強く求めていく必要がある。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article畜産場の内側からのSOS:鶏たちの最後の一日 Next Article新書『エシカルバイブル』発刊 2024/06/19