産卵鶏の羽つつき予防と恐怖心軽減のための早期干渉について

論文概要

 

概要

深刻な羽つつき(仲間の鶏の羽を引きちぎること)は産卵鶏のウェルフェア上の大きな問題のひとつである。根底にある原因としては、恐怖心、およびついばみ行動の機会がないことが考えられる。生後の早期はふるまいの発達において重要な時期であるため、孵化環境と飼育環境を鶏の要求に適合させることにより、恐怖心を軽減させ、羽つつきの発症を予防できる可能性がある。我々は2☓2要因実験計画を用いて、孵化期全体を緑色の明暗サイクルの中で過ごすこと(これは標準的な孵化環境である暗室での孵化よりもより自然な孵化環境に近い)、および飼育期に虫の幼虫を生き餌として与えるついばみ行動のエンリッチメント化が、若鶏期以降の産卵鶏の恐怖心と羽つつきの軽減、およびついばみ行動の増加につながるかどうかを調査した。この2つのバッチ(訳注:実験1回分のグループ)による実験では、1,100個のイサ・ブラウン種の鶏の卵を、一切光のない暗闇環境下、および12時間ごとに緑色光と暗闇を切り替える環境化で孵化した。孵化したあと、400羽の雌鶏(バッチあたり200羽)を44個の囲いに収容した(囲いあたり8〜10羽)。飼育期間の全体(0〜17週間)を通じて、半分の囲いには、ついばみ行動のエンリッチメントとして、フードパズル(訳注:餌が手に入るゲーム的要素のついた給餌器)の中でクロミズアブの幼虫を提供した。その後、見慣れない物体と人間に対する恐怖心、羽つつき、羽の状態、ついばみ行動、3重ワクチン接種(強度のストレス因子)からの回復時間を測定した。幼虫を提供した場合のみ、ついばみ行動の発生回数にわずかな増加が見られた(レイト比 1.19, 95% 信頼区間 1.02〜1.29、p=0.008)。光を照射した孵化も、幼虫の提供のいずれも、恐怖心、羽つつき、羽の状態、ワクチン接種後の回復時間には影響がなかった。結論としては、若い産卵鶏の行動に関する今回の実験では、孵化期間中に光を照射しても何も効果がなく、飼育期間中のついばみ行動のエンリッチメントがもたらす効果はあまり大きくはない、という結果が示された。別の手法によるウェルフェアについてのさらなる研究が必要である。

キーワード: 若い雌鳥、鶏、出生前、順応不良行動、ストレス

実験計画

今回の実験は、2つのバッチで行われ、「光の照射あり・なしの孵化」、および「飼育期間中に幼虫を与える・与えない」の2☓2要因配置の組み合わせを用いた。次の4つの取り扱い種別に分類された:光の照射なし+幼虫なし[DnL]、光の照射なし+幼虫あり[DL]、光の照射あり+幼虫なし[LnL]、光の照射あり+幼虫あり[LL]。雛鳥は無作為に44個の囲いのいずれかに収容された(バッチ1では囲い20個、バッチ2では囲い24個)。1つの囲いの中で複数の取り扱い種別を混合しないようにした。無作為分類による偏りを補正した結果、取り扱い種別ごとの囲いの数の比率は、DnL:LnL:DL:LL=10:12:12:10となった。

孵化方法・環境

合計1,100個のイサ・ブラウン種の鶏卵を、バッチ1では500個、バッチ2では600個孵化させた。それぞれのバッチで、卵を無作為に「光の照射あり」か「光の照射なし」のどちらか一方に割り当てた。「光の照射あり」の卵には、毎日、緑色LED光を12時間照射し、その後12時間は暗闇の状態に置いた。一方、「光の照射なし」の卵は孵化期間の間、いかなる光も照射しなかった。孵化した後、雛鳥は性別で色分けされ、雌鶏は健康状態をチェックし、首に個体識別のラベルをつけた。雄鶏、および余剰の雌鶏は頸部脱臼により間引かれた。雛鳥は、くちばし切除を受けなかった。

幼虫によるエンリッチメント

生後7日目から、半数の囲いにいる雛鳥は生きたクロミズアブの幼虫を与えられた。幼虫の量は、イサ・ブラウン飼育ガイドに記述されている通り、日々の餌の摂取量の10%とした。

行動に関するテストと観察

今回の実験で測定した全ての項目のタイムラインは表1のとおりである。

表1:バッチ1、バッチ2それぞれの行動に関するテストと観察のタイムライン。略字については下記の説明を参照。
  • 見慣れない物体テスト(略してNO):見慣れない物体に対する反応を評価した。観測者は囲いの前に5分間座って雌鶏たちに自分自身を見慣れさせたあと、囲いの真ん中に見慣れない物体(NO1回目:カラーテープを巻いた木の長方形、NO2回目:飲料の缶)をひとつ置いた。最初の1羽がその物体まで鶏3羽分の距離まで近づくまでの時間を計測した(N=44)。
  • 人間接近テスト(略してHA):観測者が囲いの入り口で5分間静止した状態で立ち続け、合計3羽が近づくまでの時間を計測した(N=44)。
  • ストレス因子からの回復(略してBR):バッチ2の雌鶏のみが、行動的回復に関するデータ収集の対象となった(N=19)。生後13週目に全ての雌鶏は3連続のワクチン接種を受けた。10分間隔の瞬間サンプリング法を用いて、ワクチン接種の60分後の雌鶏の行動にスコア付けを行った(表2)。同じ観測を、ワクチン接種から9日後、10日後、11日後の平常状態時にも実施し、この平常状態の結果の平均値を基準時間とした。今回の分析では、ストレス因子を受けたあと、雌鶏たちの行動がこの基準時間に戻るまでにかかった時間を計測した。
表2:ストレス因子後の回復期間中に観察された行動
  • 羽つつき(略してFP):穏やかな羽つつき(略してGFP)と深刻な羽つつき(略してSFP)の定義は表3に示す。いくつかの囲いは実験上のミスにより除外された(N=38)。
表3:穏やかな羽つつき(GFP)と深刻な羽つつき(SFP)の定義
  • 羽の状態(略してPC):体の11箇所の部分に、破れ・消失した羽や傷がないかを0〜5段階で評価した。
  • ついばみ行動(略してFB):バッチ2でのみついばみ行動の観測を行った(N=24)。対象となる1羽を5分間追跡し、ついばみ行動の長さと回数を記録した。

結果

表4に全体的な観察結果の未処理データの中間値を示す。

表4:各条件ごと、およびトータルの未処理データ中間値±標準誤差の中間値
  • 恐怖心テスト(NOとHA):光の照射も幼虫のどちらも効果は見られなかった。
  • ストレス因子からの回復(BR):光の照射も幼虫のどちらも効果は見られなかった。条件に関わりなく、ワクチン接種直後、羽つくろいの回数が増加した(図1)。
  • 羽つつき(FP):光の照射も幼虫のどちらも GFP の回数に効果は見られなかった。SFP の回数は少なすぎて分析ができなかった(図2)。
  • 羽の状態(PC):光の照射も幼虫のどちらも効果は見られなかった(図3)。
  • ついばみ行動(FB):幼虫を与えられた雌鶏は、与えられなかった雌鶏よりもついばみ行動の回数が多かった(図4)。光の照射には効果は見られなかった。また、ついばみ行動の長さに関しては、光の照射も幼虫のどちらも効果は見られなかった。
図1:点が表すのは、13週目のワクチン接種後、各行動を取るまでにかかった時間ごとの雌鶏の数。線が表すのはその数の中間値。Y軸の値がゼロの部分が平常時の基準時間。
図2:各条件ごとの穏やかな羽つつき(GFP)の合計数の箱ひげ図。赤い☓マークが中間値を示す。
図3:羽の状態(PC)を0〜5段階で評価した結果の累計。5は無傷を表し、0は完全に肌がむき出しになっていたことを表す。
図4:各条件ごとのついばみ行動の回数の合計数の箱ひげ図。赤い☓マークが中間値を示す。

結論

本研究では、孵化中に緑色LED光の照射しても、あるいは幼虫を給餌したとしても、産卵鶏の羽つつきや羽の状態には大した影響はない、ということが示された。

 

原文タイトル:Early-life interventions to prevent feather pecking and reduce fearfulness in laying hens

論文著者:Saskia Kliphuis, Maeva W. E. Manet, Vivian C. Goerlich, Rebecca E. Nordquist, Hans Vernooij, Henry van den Brand, Frank A. M. Tuyttens and T. Bas Rodenburg

公開日: 2023/05/24 

論文URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0032579123003206

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