食品企業177社を調査:アニマルウェルフェアが広がる一方、具体的な改善は道半ば

採卵鶏のケージフリー、豚の妊娠ストール廃止、ブロイラーの飼育密度改善、水産動物の福祉、代替タンパク質。日本の食品関連企業でも、さまざまな取り組みが始まっている。

認定NPO法人アニマルライツセンターは、FARMWISE Impactを通じて食品関連企業177社のアニマルウェルフェアへの取り組みを調査・評価した。

調査から見えてきたのは、企業の取り組みが幅広い分野に広がっているという変化だ。一方で、明確な目標や進捗を公表する企業はまだ限られている。

企業の取り組みは、畜産から水産、代替タンパク質まで

177社のうち、代替タンパク質に関する取り組みが確認された企業は103社、採卵鶏・卵は60社、ブロイラーは45社、魚は24社、牛乳・乳製品は23社、豚は18社、エビは12社だった。

動物の飼育環境の改善だけでなく、動物性食品に代わる選択肢を増やす取り組みも進んでいる。

ただし、取り組みの広がりには分野ごとに大きな差がある。代替タンパク質や採卵鶏に比べると、豚や水産動物について具体的な方針を示す企業は少ない。

採卵鶏:ケージフリーへの取り組みは58社、進捗報告は9社

採卵鶏については、58社がケージフリーに関係する取り組みを行っていた。

そのうち、ケージフリー卵の割合を増やす目標を持つ企業は12社、ケージ飼育廃止に向けた進捗を報告している企業は9社だった。また、ケージ飼育の廃止を目指す企業は7社、廃止の目標年を公表している企業は4社、廃止済みの企業は1社だった。

これらの数字は、ケージフリーへの関心が具体的な調達行動へとつながり始めていることを示している。

一方、採卵鶏の飼育環境を改善するためには、食品企業が購入する卵の割合を把握し、切り替え目標を設定し、毎年の進捗を公表することが重要だ。

豚:妊娠ストール廃止に向けた取り組みは17社

豚については、17社が妊娠ストールフリーに関係する取り組みを行っていた。

将来的に妊娠ストールフリーへ切り替えることを目指す企業は8社、切り替えの目標年を発表した企業は1社、進捗を報告している企業は2社だった。

妊娠ストールは、母豚が方向転換することもできないほど狭い設備だ。こうした拘束をなくすためには、生産者の設備改善と、それを支える食品企業の調達方針が必要になる。

ブロイラー:飼育密度への取り組みは44社

肉用鶏であるブロイラーについては、44社が飼育密度を下げる取り組みを行っていた。

一方、屠殺時の事前意識喪失に関する取り組みが確認された企業は2社だった。

ブロイラーの福祉を改善するには、過密飼育を解消するだけでなく、屠殺時に意識のある状態で苦痛を受けないようにすることも重要だ。

飼育から屠殺まで、一貫した改善が求められる。

水産動物:魚の認証調達とエビの眼柄切除廃止

魚については、24社でASC認証、またはASC認証を取得可能な環境の養殖場からの調達が確認された。こうした調達を100%にする目標を持つ企業は2社だった。

エビについては、12社が眼柄切除の廃止に関係する取り組みを行っていた。

魚やエビも苦痛を感じる能力を持つ動物であり、飼育・繁殖・輸送・屠殺の過程で福祉への配慮が必要だ。

水産動物のアニマルウェルフェアは、食品企業が今後さらに取り組むべき分野の一つだ。

代替タンパク質:多くの企業が新たな食品の選択肢を提供

代替タンパク質に関する取り組みは、103社で確認された。

そのうち、代替タンパク質の商品を販売している企業は97社、商品開発を行っている企業は20社、代替タンパク質を増やす目標を持つ企業は13社だった。

動物性食品の消費を減らすことは、飼育環境の改善と並んで、動物が置かれている状況を変えるための重要な方法だ。

企業が多様な商品を提供することで、消費者は日常の買い物の中で動物に配慮した選択をしやすくなる。

企業の方針とガバナンスは、まだ十分ではない

個別の商品や調達に関する取り組みが広がる一方、企業全体としてアニマルウェルフェアを位置づける動きは限定的だった。

177社のうち、40社(22.6%)がアニマルウェルフェアを重要課題に含め、37社(20.9%)がアニマルウェルフェアのポリシーを持っていた。

また、社内研修を実施している企業は14社(7.9%)、動物性原材料のトレーサビリティ確保に取り組む企業は54社(30.5%)だった。

アニマルライツセンターとのエンゲージメントがある企業は94社(53.1%)に上った。

アニマルウェルフェアを一部の商品や担当部署だけの取り組みで終わらせないためには、経営上の重要課題として位置づけ、調達方針や目標を明確にし、社内全体で実行することが必要だ。

取り組みを「動物の生活の変化」につなげるために

今回の調査は、日本の食品関連企業がアニマルウェルフェアに向けて動き始めていることを示した。

しかし、取り組みがあることと、実際に動物の飼育環境が改善されていることは同じではない。

企業に求められるのは、具体的な目標を持ち、調達や生産を変え、その進捗を公表することだ。

ケージの中で暮らす採卵鶏、妊娠ストールに拘束される母豚、過密な鶏舎で育つブロイラー、養殖場の魚やエビ。その一頭一羽一匹の生活が変わってこそ、アニマルウェルフェアの取り組みは意味を持つ。

アニマルライツセンターは、FARMWISE Impactによる評価と企業との対話を通じて、こうした具体的な変化をさらに広げていく。


調査概要

  • 調査対象:食品関連企業177社
  • 使用データ:Animal Welfare Scorecard by FARMWISE Impact
  • 各分野の企業数は重複する場合がある
  • アニマルライツセンターとのエンゲージメントは、企業のAW施策の実施とは区別して集計