私たちの声を文科省に届けよう!
文部科学省が、次期学習指導要領等に向けた「審議まとめ」について、パブリックコメント(意見募集)を始めました。募集期間は2026年10月6日から11月5日までです。
アニマルウェルフェアに関心を持ってきた私たちにとって、これは見過ごすことのできない機会ではないでしょうか。
日本でも近年、アニマルウェルフェアをめぐる状況は少しずつ動いてきました。採卵鶏のケージ飼育、豚の妊娠ストール、乳牛の飼養管理、動物の輸送やと畜などについて関心が高まり、農林水産省もWOAH(世界動物保健機関)の国際基準を踏まえた飼養管理指針を策定しています。
企業の取り組みも少しずつ広がっています。スーパーでも「平飼い卵」を見かけることが珍しくなくなりました。
それでは、学校教育はどうでしょうか。これから社会を担う子どもたちは、学校でアニマルウェルフェアについてどのくらい学んでいるでしょうか。
アニマルライツセンターは、次の学習指導要領では「アニマルウェルフェア(動物福祉)」という言葉を明確に位置付けるべきだと考えています。今回のパブリックコメントは、そのことを文部科学省に伝える貴重な機会です。
■ なぜ学校教育にアニマルウェルフェアが必要なのでしょうか
アニマルウェルフェアに関心を持っている方なら、畜産動物をめぐる問題についてすでに多くのことをご存じだと思います。しかし、社会全体を見ればどうでしょう。
卵や牛乳、肉がどのように生産されているのかを知らないまま大人になる人も少なくありません。ケージ飼育とはどのような飼育方法なのか。豚の妊娠ストールとは何なのか。牛や豚、鶏にはどのような行動欲求があるのか。こうした基本的なことを知る機会そのものが十分ではありません。
アニマルウェルフェアについて考えるためには、まず事実を知る必要があります。その意味で、学校教育の役割はとても大きいと思います。
動物の生理や行動、実際の飼育方法、生産コスト、環境負荷、衛生、食料供給、消費者が負担する価格などについて学び、そのうえで自分で考えることが大切です。
アニマルウェルフェアは、一つの価値観を覚えるための教育ではなく、動物と人間との関係を科学的、社会的、倫理的な複数の視点から考えるための教育になり得ます。
■ 農業教育だけの問題ではありません
もちろん、農業高校などで畜産を学ぶ生徒にとって、アニマルウェルフェアはこれからますます重要になるでしょう。しかし、これは農業教育だけのテーマではありません。
例えば理科では、動物の生理、生態、行動について学ぶことができます。家庭科や食育では、私たちが食べている卵、牛乳、肉がどのように生産されているのかを考えることができます。社会科や公民では、農業政策、国際的なルール、企業活動、持続可能な社会などとの関係を考えることができます。
そして、消費者教育とも非常に深い関係があります。
消費者は価格や品質だけでなく、生産過程における環境、人権、動物福祉等を考慮して商品・サービスを選択することが求められます。アニマルウェルフェアを学ぶことは、持続可能な消費と消費者市民社会を理解するための具体的かつ身近な教材となります。
私たちの買い物は、生産のあり方と無関係ではありません。消費者が何を選ぶかによって、企業の行動も変わります。だからこそ、価格や品質だけではなく、「これはどのように作られた商品なのだろう」と考える力を学校教育の中で育てることには、大きな意味があると思います。
■ 学習指導要領に書かれることには意味があります
「学校で先生が取り上げればよいのではないか」と思われる方もいるかもしれません。しかし、学習指導要領に位置付けられることには大きな意味があります。
学習指導要領やその解説に明記されれば、教科書や教材、教員研修、授業内容にもつながっていく可能性があります。逆に、言葉そのものが位置付けられていなければ、熱心な先生が個人的に取り上げることはあっても、全国の子どもたちが体系的に学ぶテーマにはなかなかなりません。
そして、学習指導要領は頻繁に改定されるものではありません。今回の改定で位置付けられなければ、次の機会までさらに長い時間を待つことになるかもしれません。だからこそ、いま声を届ける意味があります。
■ ぜひ、皆さん自身の言葉で意見を出してください
アニマルライツセンターは今回のパブリックコメントで、次期学習指導要領とその解説に「アニマルウェルフェア(動物福祉)」を明記し、小学校、中学校、高等学校を通じて、発達段階に応じて学習する機会を設けることを求めます。
特に、消費者教育、食育、持続可能な社会の形成に関する教育、そして農業教育との関連を明確にしてほしいと考えています。
この考えに共感してくださる方がいれば、ぜひパブリックコメントを出していただけないでしょうか。それぞれの経験や関心から、ご自身の言葉で書いていただきたいと思います。
採卵鶏の問題に取り組んできた方なら、ケージ飼育について子どもたちが学ぶ必要性を書くことができます。豚の問題に関心がある方なら、妊娠ストールや豚本来の行動について学ぶことの大切さを書くことができます。乳牛の問題に関心がある方、と畜や輸送の問題に取り組んでいる方、動物行動学を学んでいる方、消費者問題に関心がある方、それぞれ違った角度から意見を出せます。
「アニマルウェルフェアを学習指導要領に明記してください」という一文だけでも、そこから始めることができます。
大切なのは、アニマルウェルフェアについて関心を持つ人たちがいること、そして、それを次の世代の教育に位置付けてほしいと考えている人たちがいることを、文部科学省に伝えることだと強く思います。
■ パブリックコメントの提出方法と項目の選び方
意見は、文部科学省の案内ページにある意見提出フォームで送ることができます。
意見提出フォームでは、意見の対象となる項目を選ぶ必要があります。アニマルウェルフェアを次期学習指導要領の基本的な考え方や教科横断的な学習課題として位置付けてほしいという意見であれば、項目②が基本的な選択肢になると考えられます。
ただし、家庭科の消費者教育に動物福祉を盛り込んでほしい、道徳教育のカリキュラムに盛り込んでほしいなど、具体的な提案をする場合には、個別項目が適切な場合もあります。意見の主題に応じて選択してください。
・文部科学省の案内ページはこちら
・パブリックコメントの意見提出フォームはこちら
・参考:アニマルライツセンターが送付したコメント文(以下)
<項目➁を選択>
次期学習指導要領において、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」を、児童生徒が学ぶべき現代的課題の一つとして明確に位置付けることを求めます。
アニマルウェルフェアは、単なる動物愛護の問題ではありません。人間が食料生産をはじめ様々な場面で動物を利用していることを前提として、その飼育、輸送、と畜等の過程において、動物の身体的・心的状態に配慮するという考え方です。国際的にもその重要性は高まっており、日本においても、農林水産省がWOAH(世界動物保健機関)の国際基準等を踏まえ、アニマルウェルフェアに関する飼養管理指針を策定し、その普及・定着を進めています。
しかし、アニマルウェルフェアについて、学校教育の中で児童生徒が体系的に学ぶ機会はなお限定的です。次期学習指導要領に向けた検討において「民主的で持続可能な社会の創り手」の育成が重視されるのであれば、人間と動物との関係や、食料生産のあり方を考えるアニマルウェルフェアは、その具体的な学習課題として位置付けるにふさわしいと考えます。
とりわけ、アニマルウェルフェアは消費者教育との関係でも重要です。消費者は価格や品質だけでなく、生産過程における環境、人権、動物福祉等を考慮して商品・サービスを選択することが求められます。アニマルウェルフェアを学ぶことは、持続可能な消費と消費者市民社会を理解するための具体的かつ身近な教材となります。
例えば、児童生徒が日常的に口にする卵、牛乳、肉などの畜産物について、それらがどのような環境で飼育された動物から生産されているのかを知り、価格、安全性、生産者の経営、環境負荷、食料の安定供給、動物の福祉など複数の観点から考えることは、現実社会に結び付いた優れた学習となります。商品を購入するという日常的な行為が、生産方法や社会のあり方と結び付いていることを理解することは、主体的な消費者を育成する上でも大変重要です。
従って、アニマルウェルフェアを特定の教科だけの課題とするのではなく、発達段階に応じて教科横断的に扱うことを提案します。その際に重要なのは、特定の飼育方法や食生活について、一つの価値観を児童生徒に押し付ける教育としないことです。各飼育方法について、その特徴、動物への影響、生産コスト、環境負荷、衛生、食料の安定供給等を客観的な資料に基づいて比較し、児童生徒自身が考え、議論し、判断できる教育とすることが重要です。
また、国際社会における農畜産物の生産・流通を考える上でも、今後その重要性は一層高まると考えられます。
以上から、次期学習指導要領及びその解説に「アニマルウェルフェア」を明記し、小学校・中学校・高等学校を通じて、発達段階に応じて学習する機会を設けることを求めます。












