英国における赤肉・加工肉の消費削減 持続可能な食習慣への移行が健康にもたらすコベネフィット

論文概要

 

目的: 肉類の摂取量を減らして植物性食品を増やすことは、慢性疾患の予防と環境の持続可能性のために欧州全体で取り組むべき優先課題である。従来のモデリング研究では、政策介入によって食習慣を転換することで肉類の削減を進めることに焦点が置かれてきたが、こうした介入策が健康にどのような影響を及ぼすかについては検証されてこなかった。

方法: 英国の気候変動委員会では、食生活における肉類の消費量を35%または50%削減するという目標を掲げている。本研究では、特に赤肉・加工肉を野菜・豆類に代替した場合に、30年間で予測される健康面の影響について、食生活と関連のある主な慢性疾患の発症率と死亡率を指標として定量化した。英国・国民食事・栄養調査(NDNS)から得られたデータをエージェントの意見ダイナミクスのパラメータとして使用し、このモデルから食習慣に関するデータを算出した。健康への影響は英国労働医学研究所による生命計算表(IOMLIFET)のモデルを用いて推定した。

結果: 気候変動委員会が設定した目標のうち、赤肉・加工肉の消費削減に関する部分を達成できた場合、35%削減のシナリオでは平均余命が7.2ヶ月(1.1~12.9ヶ月)延長すると予測され、50%削減のシナリオでは9.4ヶ月(1.3~15.4ヶ月)の延長が見込まれた。社会全体で獲得される生存年数はそれぞれ840万年(130万~1490万年)および1090万年 (150万–1790万年)の延伸が予測された。慢性疾患に関しては、35%削減では340万件 (50万–660万件)、50%削減では450万件 (60万–810万件)の発症を回避できる可能性がある。公衆衛生上のこうした便益(ベネフィット)のうち最大95%が心血管疾患に関するものであり、その4分の3は野菜と豆類の摂取量が増加することによるものであった。

結論: これらはモデリングによる探索的な推計値であるが、気候目標に向けた政策主導による赤肉・加工肉の消費削減は公衆衛生に大きな便益をもたらすことを示唆している。本研究の結果は行動の変化に関するモデルに基づくものであるが、欧州全体の戦略において心血管疾患に伴う負荷を軽減し、持続可能な食習慣への転換を促進するうえで重要な知見を提供するものである。

 

原文タイトル:Health co-benefits of sustainable dietary transitions to reduced red and processed meat intake in the United Kingdom: a modelling study

論文著者:Patricia Eustachio Colombo, Olivia Auclair, James Milner, Angela Fontan, Silvia Pastorino, Sara Monteiro Pires, André Hesselink, Marie Löf, Rosemary Green

公開日: 2026/09/17 

論文URL:https://doi.org/10.1007/s00394-026-04093-6

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