マックスバリュにこんな表示がありました。

これを見ると鶏肉や卵をたくさん食べなきゃと感じる消費者が多いでしょう。
しかし、効率的にたんぱく質を取り入れるとなると、「100gあたり」より、ある一定カロリーあたりのたんぱく質量の方が参考になるでしょう。なぜなら、一日に食べ物を何グラム食べるべきかは決まっていませんが、一日何カロリー摂るべきかは大体決まっているので。
例えば、200kcalあたりだとどうでしょう。上の表示の出典と同じ日本食品基準成分表2015年版(1)によると200kcalあたりの成分量(たんぱく質の他に脂質やコレステロール)は:
食品 200kcalあたり | にわとり もも | 鶏卵 | 米 (精白米) | 豆腐 | 普通牛乳 |
重量 | 79 g 約 1/3 枚* | 133 g 約2.7個 | 56 g 小盛り一杯 | 324 g 一丁 | 299 g 1杯半 |
たんぱく質 | 13.7 g | 16.3 g | 3.4 g | 17.1 g | 9.9 g |
脂質 飽和脂肪酸 | 15.1 g 4.5 g | 13.6 g 3.8 g | 0.5 g 0.2 g | 11.3 g 2.6 g | 11.4 g 7.0 g |
コレステロール | 71 mg | 560 mg | 0 | 0 | 36 mg |
温室効果ガス CO2eq (2) | 1068 g | 648 g | 242 g | 234 g | 1050 g |
土地利用 (2) | 1.32 m2 | 0.87 m2 | 0.15 m2 | 0.26 m2 | 2.98 m2 |
動物の苦しみ | 75 時間 | 64 時間 | 0 | 0 | 19 分 |
豆腐(約一丁で200kcal)が、たんぱく質17gで一番効率が良いと言えます。
卵(2個半余りで200kcal)も16gと、たんぱく質量は近いですが、同時に560㎎ものコレステロールが伴います。厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)にはコレステロールは1日200㎎未満に留めることが推奨されています。
鶏肉(骨付きドラム2本で200kcal)も13.7gと、たんぱく質は少なくはありませんが、15gの脂質の方が多いです。卵と比べれば少なく見えるコレステロールも、絶対的には多過ぎます。
牛乳(1杯半で200kcal)は米よりはたんぱく質がありますが、悪玉コレステロールを増やし心血管疾患に繋がりやすいとして知られている飽和脂肪酸の量も多いです。
米(小盛り一杯で200kcal)は確かに他のものと比べるとたんぱく質は少ないですが、それは分かっていたことでしょう。しかし、その米でさえもたんぱく質源として立派な役割を果たせます。例えば仮に1日2000kcal分、米だけを食べたとしても34gのたんぱく質、必要なたんぱく質量50gの大部分を摂れます。多くの人が思い込まされているほどたんぱく質は積極的に取らなくても充分摂れるのです。
環境への負荷
食ベ物の選択の影響は自分の健康へだけではありません。
200kcal あたりの温室効果ガスを見てみると、鶏肉や牛乳が米・豆腐の5倍近く、卵は3倍近くの排出に繋がります。
土地利用も、畜産物は米・豆腐より約一桁上回る面積を使っており、環境破壊に加担しています。
動物への直接的な影響
環境破壊による野生動物や人間への影響も充分に大きいですが、より直接的な犠牲はどうでしょう?
例えば、鶏肉200kcal分(ドラム2本)はその鶏にどれだけの苦痛を与えたのでしょう?
鶏一羽の可食部は1.3kg近くなので、79gはその鶏の約16分の1。
日本の肉用鶏は50日間の苦しみのあげく殺され肉にされるので、その16分の1は3日余り、約75時間。
ということは、鶏肉200kcal分はある1羽の鶏を約75時間、品種改変による慢性的な体の痛み、呼吸困難、糞尿だらけの過密な不衛生の状態に強いることになると言えます。
そこまでして、よりたんぱく質も多く環境負荷も低い豆腐などを選ばない理由はありますか。
卵200kcal分(2.7個)はどうでしょう?
品種改変された採卵鶏は約一日1個の頻度で卵を産むので、2.7個は2.7日、約64時間。
日本では99%以上であるバタリーケージの卵だと、ある一羽の雌鳥を64時間、羽も広げられない狭いケージの中、傾いた金網の上で過ごさせることになると言えます。
そこまでして、よりたんぱく質も多く、卵のように膨大な量のコレステロールも一切ない豆腐などを選ばない理由はありますか。
牛乳200kcal分(1杯半)は?
これもまた品種改変されてきた乳牛は一日に平均約22㎏(約22ℓ)の牛乳を搾られています。
ということは、299gはその75分の1、時間にすると約19分間、ある一頭のお母さん牛を拘束状態、乳房炎や床ずれに伴う痛み、そして人間による強制受精や産んだ赤ちゃんを取り去られたことによる心の痛みにさらすことになると言えます。
19分というと肉や卵の鶏たちの60~70時間と比べて短く感じるかも知れませんが、もし自分をその母牛の身に置き換えて考えてみるとどうでしょう?
豆腐など自分の健康にも良く、環境負荷も圧倒的に低い効率的なたんぱく源があるなか、ラテ・チーズ・ヨーグルト・アイスクリームなどの一時の贅沢のために19分間でも他者に肉体的・精神的な苦痛を強制する選択をするのはどうでしょう?とても美味しい豆乳ラテ、豆乳シュレッド、アーモンドヨーグルト、ココナッツアイスなどもあります!
同じカロリー当たりの鶏たちの苦しむ時間(60~70時間)は乳牛の200倍以上です。
「手間なく、効率的に、おいしくタンパク質を取り入れましょう!」のサインの裏には、完全に無視されている計り知れない動物たちの苦しみや環境負荷、そしてコレステロールや飽和脂肪酸の自分の健康への影響が隠されていたことがお分かりでしょうか。