認定NPO法人アニマルライツセンターは、日本の畜産動物の福祉向上に大きな影響を与えた取り組みを表彰する「アニマルウェルフェアアワード2026」の受賞者を発表しました。
本年度は、数値目標を伴う調達方針を打ち出した企業2社と、国レベルで屠畜改善に踏み込んだ政策という、日本の畜産における構造的変化の兆しが評価されました。受賞は以下の3組織です。
- 株式会社ブルボン(鶏賞)
- 農林水産省(鶏賞)
- 株式会社丹沢農場(豚賞)
背景:世界から遅れる日本のアニマルウェルフェア
日本の畜産動物のアニマルウェルフェアの取り組みは、世界から大きく取り残されてきました。世界が鶏のケージフリー、豚のストールフリーに向かう中、日本企業の取り組みはまだ多くはありません。また鶏の食鳥処理に関しては世界のスタンダードとなっている気絶処理を行わない方法が今も多く残っています。この状況は動物福祉だけでなく、食品安全・衛生・国際市場競争力のリスクともなり得ます。
今年の評価ポイント:「数値目標」と「制度改革」という具体的前進
本年度の受賞は、日本において特に不足していた定量的コミットメントや、政策レベルでの構造改革を伴う取り組みが評価されました。
それぞれの組織が、それぞれの分野で意義深い取り組みを行いました。各社の取り組みや決断に、心から敬意を表します。
鶏賞:株式会社ブルボン
「5%・期限つき」のケージフリー目標を公開
老舗菓子メーカーである株式会社ブルボンは、ケージフリーの卵の調達拡大により、アニマルウェルフェア向上に取り組むこととし、その切り替え目標を「5%」に設定し公開しました。さらに調達の進捗も報告しています。
国際的な水準を取り入れた目標であることとともに、数値的目標と期限を示したことにより、取り組みは加速し、また社会に良い影響を及ぼすことができます。ブルボン社のとった情報公開の姿勢は、グローバル社会からの厳しい目にも対応でき、日本企業が見習うべきものとなりました。
鶏賞:農林水産省
国が「スタニング必須」の補助金枠を新設
農林水産省は、2025年度補正予算において、食鳥処理場における屠畜時の事前意識喪失の実施を推進するため、新たな補助金枠”先進モデル的食鳥処理施設整備事業”をつくりアニマルウェルフェアに対応したスタニング設備の導入を必須と規定しました。
日本の大きな課題である、意識喪失なしの屠畜をなくすための足がかりになり、アニマルウェルフェアはもちろんのこと、衛生、食品安全、労働改善につながる対策を支援することになります。
”アニマルウェルフェアに配慮した意識喪失が必要である”という姿勢を、国が明確にしたことによるインパクトは大きく、国内食鳥処理の転機となりえるでしょう。
豚賞:株式会社丹沢農場
信頼ある生産者の転換によるサプライチェーンへの影響
丹沢農場は、生協など意識の高い消費者から、独自のアニマルウェルフェアの取り組みで定評のある生産者です。肥育豚において、その実践を積み重ねてきました。今回、同社は母豚について、2030年までに妊娠豚の3〜5%をフリーストールへ移行すると公表しました。
この決定が持つ意味は意義深く、信頼を築いてきた生産者が妊娠ストールフリーへと踏み出したことで、サプライチェーン全体に対し、進むべき方向が示されました。その影響は静かに、しかし確実に広がっています。日本の豚のアニマルウェルフェアを前進させる一歩です。
アニマルウェルフェアアワードとは
前年度に国内のアニマルウェルフェアにとって効果的だった企業に贈るアニマルウェルフェアアワードです。アニマルウェルフェアアワードは畜産水産動物福祉の向上に取り組む認定NPO法人アニマルライツセンターが、前年度(2025年4~2026年3月末)までの間のアニマルウェルフェア向上に最もインパクトのあった取り組みを評価するものです。
https://www.hopeforanimals.org/animal-welfare-award
客観的に評価できる数値が求められる時代へ
2025年度の取り組みは、それぞれの企業が模索し、できる限り大きな歩幅で前に出ようとしたものでした。ブルボンと丹沢農場は自らできる取り組みをありのまま表に出すことで、その誠実さと方向性を示しました。農林水産省は、良い取り組みをする農家を応援するという姿勢を明確にしました。まだ黎明期と言える日本のアニマルウェルフェアは、すべてのステークホルダーが一歩づつ前に進み出ることで、加速していきます。その体現が見られた1年でした。
一方、国際的には、”自分たちは、いつまでに、こうありたい”という、野心的で期限付きの野心的な目標を定めることが、アニマルウェルフェアの分野でも求められています。気候変動対策でもそのように求められ、多くの企業が目標値を定めていますが、同様のコミットメントの方法が求められます。そうすることで、国際的または金融分野からの評価も得られ、さらに消費者からの信頼も得ることができるようになります。2026年度以降、国際的な市場のなかでも光る取り組みがみられることを、すべての食品関連企業に期待します。
最後に、アニマルウェルフェアを上げることを検討し、行動をしてくれたすべての企業に感謝します。
なお、受賞企業にはあらためてお礼をお伝えいたします。
認定NPO法人アニマルライツセンターについて
アニマルライツセンターは、動物たちの現状を明らかにし、アニマルウェルフェア向上とアニマルライツの普及を行う日本の動物保護団体。主に、卵や肉などの食べ物として扱われる畜産動物、水産養殖に利用される水生動物、毛皮など衣類素材として扱われる動物を守るための活動や、エシカル消費の推進を行っています。












