論文概要
肉の消費を削減することは、公衆衛生と環境にとって有益である。本研究では、デンマークの一般市民における食肉消費量を削減する意欲、それを推進する要因および障壁となる要因について検証した。デンマーク国民の代表サンプル(1005人)を対象として2019年に実施したオンライン調査では、肉を摂取する習慣、および肉の消費量を削減する意欲について行動変容のステージモデル*を用いて検証し、併せて食肉消費削減の障壁と推進要因を検討した。
調査対象者の約3.5%は肉を食べず(ベジタリアン・ヴィーガン)、57%は肉の摂取量を減らす意思はなかった(うち5%は増やすことを考えていた)。約11.5%では削減する意思があり、27.5%がすでに肉の摂取量を減らしており、これは過去に観察された割合よりやや増加していた。特に重要な点として、すでに肉の摂取量を減らしている人では、減らす意思がない人・減らす意思のみの人に比べて、肉を使った食事を摂る回数が有意に少なかった。
食肉削減を推進する要因としては、肉の消費が気候変動に与える影響についての認識、肉の摂取を控える人々や肉を食べない人々との社会的交流などが見られた。障壁としては、肉に代わる新しい食品に対する恐怖感、アイデンティティの不一致、習慣的な行動であること、現実的に困難であることなどが挙げられた。食事から肉を完全に取り除くことは支持されていなかったことから、今後の戦略では、食肉の排除ではなく、食肉の削減に焦点を絞るべきである。
行動変容のステージによって促進要因や障壁が異なるため、食肉削減のキャンペーンはターゲットに合わせて計画する必要がある。肉の摂取を減らす意思のない消費者では、気候問題に関する啓発キャンペーンや、慣れ親しんだ食事へのちょっとしたアレンジを推奨するなどで考え方を変えられる可能性がある。肉の摂取を減らす意思のある消費者であれば、健康意識を高めるキャンペーン、選択アーキテクチャを改めること、肉を使わない食事の入手可能性を増やすことなどによって行動を促すことができる。
* 行動変容に関するトランスセオレティカル・モデル transtheoretical model of behavior change。人が行動を変える場合には、無関心期・関心期・準備期・実行期・維持期の5つのステージを経るとされる。
Marijke Hiltje Hielkema, Thomas Bøker Lund
2021/04/20
Reducing meat consumption in meat-loving Denmark: Exploring willingness, behavior, barriers and drivers