ひよこ鑑定士の学校である初生雛鑑別養成所での虐待的扱いについて、この養成所を運営する畜産技術協会に改善を促してます。最初の要望と回答再要望についての回答をいただきました。この中で、絶食状態を改善し給餌の可能性と方法についての検討が始まること、コンテナに入れられるヒナの密度の適正化の徹底、月曜日に搬入されたヒナを金曜日まで利用することの廃止が示されました。また、結論は明確ではないものの、安楽殺の方法についての改善の検討が始まっていることもわかりました。一歩一歩ではありますが、改善に向かっています。回答1:温度管理について湿度の改善をしてくださるとのこと、ありがとうございます。また、空調も行っているとのことでした。しかし、元講習生によると、初生雛たちは「口を何回も開けて苦しそうに息が荒くなっていた」と述べており、これは高温によるパンティングである可能性も考えられます。温度管理、密度、雛を入れたコンテナの管理状態を再度見直していただきたくお願いいたします。(回答)鑑別の講習の際には、コンデナ内のヒナが過密にならないようにして実習を行うように、講師が講習生に指導を行うとともに、過密な状況を確認した場合には、講師がヒナを移動させる等の対応を取っています。引き続き、ヒナの管理については、アニマルウェルフェアに配慮した対応を取るように、講師及び講習生への指導を行います。2:雛の保管時の配慮「風通しと換気のための空気動線の確保等に配慮」とのご回答でしたが、コンテナに入れ高く積み上げられ一列に置かれている状態が配慮されている状態でしょうか。右の写真は火曜午前の鑑別講習に使用した後の雛ですが、積み上げられている状態で、最下部の雛、中段の雛、最上部の雛では環境が異なることがわかります。また温度も最下部と最上部では違いがあると思われます。さらに、密度について「120羽から80羽」に改善しているとのことですが、80羽が適正とは思えません。右の写真は火曜日の午前の鑑別講習に使用した後の雛ですが、これを適正というのは無理があります。(実際の羽数不明ですが写真からは50羽程度に見えます)搬入後、実習後、両方の飼養状態をご確認いただき、再度改善をご検討くださいますようお願いします。(回答)2頁目のコンテナの写真は、待機用の箱ではなく、講習生がヒナを手元に置いて川実習する時の写真と思われますが、鑑別の実習に際しては、講師から講習生にヒナが過密にならないようにコンテナに入れて実習を行うように指導しています。御指摘のようにこの写真のヒナの密度は極めて高くなっているため、適正な調整が行われていない状態となっています。このような状態での実習が行われることがないよう、講師及び講習生への指導の徹底を行います。換気については、温度等を見ながら、特に夏期には換気のために扇風機を使い、風も初生雛に直接当たらないよう配慮し間接的に風を流すなどの必要な対応をしています。このため、1頁の写真は、少し涼しい頃の写真と考えられ、コンテナ内の温度こも配慮して重ねて置いている状態と思います。いずれにせよ、引き続きヒナの管理については、アニマルウェルフェアに配慮した対応が取られるよう指導を行います。3:給餌について給水については方法をご検討くださるとのこと、ありがとうございます。一方、給餌については「初生雛の体内に残る卵黄中の栄養が消費されるまでに孵化後2〜3日を要するため、給餌の必要性は低い」とのご見解ですが、アニマルウェルフェア上は孵化後すぐに給餌することが望ましいことがわかっています。孵化直後の給餌は免疫系の発達を促進し、ストレス耐性を向上させ、逆に、給餌の遅れは、ストレスホルモンの増加と感染症への感受性を高め、死亡リスクを増加させる可能性があります。孵化直後の餌供給が腸の発達を促進し、ストレスホルモンの分泌を抑制し、雛の長期的な健康に寄与する可能性があると指摘されています。孵化直後の給餌の遅れは、ストレスホルモンの増加や体重の減少を引き起こし、雛の生存率を低下させる可能性があります。特に、48時間以上の遅れは致命的な影響を及ぼし、鶏のウェルフェアを著しく損なうと結論付けています。このような背景から、ブロイラー養鶏ではオンファームハッチングと呼ばれる農場内孵化が増えてきていますし、私たちも生産者にはこの技術の導入の検討を要望をしているところです。給水はもちろんのこと、給餌についてもご検討くださいますようお願いいたします。(回答)給水方法につきましては、検討を開始したところです。併せて、給餌の可能性やその方法等についての検討を行います。4:殺処分のタイミング「毎週1回の安楽死処置ではなく、卵黄の栄養に果りがあるため、実習が終わったら直ぐに安楽死処置を講じています」とご回答頂きましたが、再度、事実確認と改善をお願いします。元講習生によると、月曜に搬入された初生雛は、実習に使用された後すぐには安楽殺されず、水曜日にまとめて安楽殺をされていたと証言しています。もしかしたら貴団体のマニュアルではそのように規定しているのかもしれませんが、規定や規則がどうであれ、現場では守られないことは多々あります。効率化や、怠慢な勤務といったことは、よくあることですが、動物の命を扱う上ではあってはならないことです。実習終了後すぐに、別部屋にて、安楽殺を確実に行ってください。(回答)現在、ヒナの安楽死処置は、月曜日に導入したとナについては、水曜の実習後、14時頃、木曜日に導入した導入したヒナは、金曜日の実習後、16時頃に安楽死処置を講じています。ご指摘も踏まえ、来年度の講習においては、月曜日に導入したヒナを実習に使用するのは火曜日までとして、水曜日の実習は中止する予定です。5:安楽殺方法について改善を図ってくださるとのこと、ありがとうございます。ただ、ご回答いただいた改善内容では不十分であり、再度要望させていただきます。告発した講習生は、「青いバケツの中に袋を入れ、その中に初生ひなを次々と入れて講師に渡します。講師がそのバケツの中に二酸化炭素ガスを注入し、袋の口をしばる」という方法であったといいます。つまり、多数の雛が折り重なった状態の袋にガスを注入しており、これでは早期の致死は不可能です。さらに、複数の動物の殺処分において、人の手で都度、二酸化炭素ガスを注入するというあいまいな方法は、雛の配置場所と属人的な要素と動物の個体の状態により結果にブレが生じることが容易に予測され、結果があまりに不安定であり、取るべき方法ではありません。そもそも「家畜の農場内における安楽死に関する技術的な指針」にも書かれている通り、「脳幹反射のない(瞳孔の拡大や呼吸の欠如等)確実な死に至るまで、家畜を常に観察する」ことは必須ですが、袋に複数羽入れられた状態で死亡確認を確実に行うことは困難です。つまり、複数羽を袋に入れて人間が二酸化炭素ガスを注入する方法は、安楽に動物を殺処分することも、指針に沿うことも難しいと考えられます。一般社団法人日本種鶏孵卵協会では昨年3月に「ふ化場におけるアニマルウェルフェア推進ガイドライン~雛の安楽殺に関する推奨手法について~」を作成しています。より多くの羽数を殺処分する孵化場での改善が進む中、頸椎脱臼や二酸化炭素充填による方法では不十分です。最低限、アニマルウェルフェアに対応するためには、アニマルウェルフェアの評価が済んでいる海外のガス安楽殺装置を導入することが必要と考えます。サイズ的にはキャビネット式ガス安楽殺装置などが考えられます。自家製の安楽殺装置もあるようですが、これはアニマルウェルフェア上の懸念が残っており、避けるべきです。さらに、畜産業ではなく学ぶ場であることから、畜産業より安楽な殺処分方法が求められます。二酸化炭素のみの殺処分は適切な装置を使えば”まし”ではあれど、苦痛を伴います。養成所では、イソフルランのような吸入麻酔薬を使った安楽殺を採用してくださるよう、切にお願いします。これについては、国内では野生動物の安楽殺で実用化(イソフルラン混合の吸入麻酔で意識喪失後、CO2暴露による致死)しています。ある大学医学部の実験動物(ひよこ)の殺処分方法としてはイソフルランと空気混合気体を、装置を用いて吸引後、より確実に致死させるため頸動脈切断による脱血させる方法での安楽殺が規定されています。(回答)安楽死処置の方法については、一般社団法人日本種鶏孵卵協会が作成された『ふ化場におけるアニマルウェルフェア推進ガイドライン〜雛の安楽殺に関する推奨手法について〜』を参考に、改善方法の検討を進めているところです。なお、麻酔薬の使用については、獣医師が常駐することができないこと、また管理方法の難しさ等から、弊会での対応は困難と考えています。6:雛の扱い改善のためのカメラの導入「都度ベテランの鑑別師が安楽死処置を講じています。」とのご回答がございますが、過去の講習生によると「お腹が裂けてしまい腸が出ている状態で歩いている初生ひなが放置されていた」とのことでした。これは畜産の現場でもあることですが、マニュアルなどで注意書きがあったとしても、現場では守られないといったことが多々あります。これは多数の生きた動物を扱うからこそ起きることであり、いいかげんになったり、見逃したりといったことが起きがちです。数が多く、なおかつ雛や鶏のように小さな動物の場合、1羽1羽が尊い命であることを忘れがちになることは、人間の心理としては容易に起こりうることです。そのことを考慮した指導および監督をする必要があります。と畜場では現在、アニマルウェルフェアや品質の管理のために監視カメラを導入することが国内でも始まっています。カメラが回っていることだけでも、虐待や雑な扱いの予防になりますし、事故があったときの検証も可能になります。講習生および講師が雛を扱う場において、監視カメラを導入してくださいますようお願いします。とくに雛は小さいため、高いところからの監視だけでなく、雛の保管場所や安楽殺を行う場所、弱った雛を入れる箱など個別に設置してください。また、そのデータは講師ではなく、離れた場所にいる貴団体の担当者が随時見れるようなネットワークを作り、虐待の防止に努めてください。(通常売られている監視カメラもオンラインで見れますので容易であると思います)また、貴団体には獣医師が勤務されているものと思います。獣医師が養成所にきちんと関与し、適切な扱いを監視指導してくださることを期待します。(回答)今回の御指摘も踏まえながら、定期的な教育訓練および自主点検を一層強化するとともに、有識者による意見も取り入れ、自主管理につとめます。講師並びに講習生へのアニマルウェルフェアに関する指導とその遵守を、改めて徹底することとしております。監視カメラの設置については、養成所が毎年度更新しながら借りている施設でもあり、現段階での対応は困難と考えます。また、養成所が弊会事務所とは離れた場所にあることも踏まえ、アニマルウェルフェアに沿って適切に管理がされているかの確認を弊会獣医師ほかで実施することとしています。7:不適切行為があった場合のペナルティ虐待や講師として不適切な行為(笑いながら殺すなど)が発生した場合の、行為者へのペナルティを明確にしてください。例えば海外では、虐待が判明した場合即刻解雇などの規定を持つ食肉企業もあります。(回答)今回の御指摘も踏まえながら、講師並びに講習生へのアニマルウェルフェアに関する指導、動物愛護法に沿った適切な対応、それらの遵守を改めて徹底することとしており、現段階ではペナルティについての文書化は考えておりません。クリックして 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