論文概要
肉を多く消費する食習慣は、アニマルウェルフェアや消費者の健康、環境に悪影響を及ぼしている。近年では、どのようなアプローチが肉の消費を減らすうえで最も有効かについて検証が始まっている。中でも特に広く議論されてきたのは、肉の消費を減らすように訴えるのと、肉を全く食べないように訴えるのでは、どちらがより有効なのかという問題である。
肉食を完全に控えるとすれば、食肉消費に起因する負の外部性*を軽減できるが、要求される内容が過大であればそれに対する遵守率が低下する可能性は高くなる。したがって、食肉消費を最も大きく減らせるようなアピール内容を特定するためには、それがどれくらいの人々に受け入れられるのか、受け入れられた場合に消費量がどれくらい減るのかを考量する必要がある。
米国・英国・オーストラリア・オランダからの参加者(705名)を対象とした2つの研究において、自己報告による肉の消費量に加え、肉の消費量を週間で10%から100%までの様々な割合で減らすことを求められた場合にそれを遵守する意思があるかどうかを調査し、予想される肉の消費量を全体に最も大きく削減できるアピール内容を特定した。
予想された通り、要求されるレベルが高くなるほど、参加者がそれを遵守する意欲は低下した。中程度の要求(40~70%)は、控えめの要求(10%)や完全にやめるという要求(100%)よりも有効であった。国によって多少の差はあるものの、どの国のサンプルにおいても最も効果的なのは中程度の要求であった。
本研究の結果は、アピールの内容をどのように調整すれば全体的な食肉消費量を最も大きく削減できるかについて、これまでにない新しい知見を提供するものである。
* ある経済主体の活動によって、直接の関係がない他の主体や社会が負担する費用が発生すること
Sophie Cameron, Matti Wilks, Bastian Jaeger
2023/02/16
Reduce by how much? Calibrating meat reduction appeals to maximize their effectiveness