論文概要
肉・魚介類・卵・乳製品といった動物由来の食品は、環境・倫理・健康において様々な問題の原因となっており、それに対する懸念から、多くの消費者がプラントベースの食品を食生活に取り入れている。動物由来の食品は、温室効果ガスの排出・土地の使用・水の使用・汚染・森林破壊・生物多様性の損失などを増大させることで、環境に悪影響を与えている。
畜産業では、年間に何十億頭もの畜産動物が閉じ込められ、屠殺されている。赤身肉や加工肉など、動物由来の食品が人間の健康に及ぼしている悪影響への懸念もある。畜産業では、抗生物質が大量に使用されており、このことは、抗生物質に対して病原微生物が強い耐性を持つことにもつながっている。
プラントベースの食事は、動物性食品を多く含む食事に比べてより健康的だと思われがちだが、必ずしもそうとは限らない。新鮮な果物・野菜・ナッツ類・全粒穀類をより多く摂取することは、健康状態の改善につながるとされている。一方、次世代のプラントベース食品は、肉類・魚介類・卵・乳製品を代替するために設計されているが、代替するはずの動物性食品よりも健康に良いかどうかは不明である。
これら新しい製品の多くは、高度に加工された食品で、飽和脂肪・砂糖・でんぷん・塩分を多く含み、微量栄養素や栄養補助成分、食物繊維の含有量は少ない。さらに、加工の過程で植物組織が破壊され、主要な栄養素が放出されるために、消化管内で急速に消化されてしまうことが多い。
したがって、プラントベース食品を設計する際には、健康への悪影響につながる栄養素のレベルを下げ、健康に有益な影響を及ぼす栄養素のレベルを上げるようにすることが重要となる。さらに、主要な栄養素の消化吸収が早すぎず、同時に微量栄養素の生物学的利用能が高くなるように食品マトリクスをデザインすることも重要である。本稿では、栄養素プロファイルや消化のしやすさ、バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)を制御することによって、次世代のプラントベース食品をいかに健康的なものとするかに関して議論する。
Isobelle Farrell McClements, David Julian McClements
2023/04/25
Designing healthier plant-based foods: Fortification, digestion, and bioavailability