論文概要
アニマルウェルフェアや肉食に関連する健康・環境問題への懸念にもかかわらず、肉の消費量はオーストラリアを含め、世界中で増加し続けてきた。ドイツはその例外の1つで、2021年における食肉消費量は過去30年間で最低であった。
事前登録された本研究では、ドイツとオーストラリアからの参加者(各399人)を対象としたオンライン横断調査を実施し、肉消費に関連する社会文化的要因について検証した。参加者は、現状でどれくらい肉を摂取しているか、これから肉消費を減らす意思がどれくらいあるかについて報告するとともに、以下の評価項目について調査票に回答した:種差別、肉を食べる動機、畜産動物に対する共感、畜産に関する認識、肉の摂取における行動コントロールの自覚*、肉が由来する動物について考えることを避け、食事とは切り離して考える態度。
オーストラリアでもドイツでも、肉の味を楽しむ傾向が強くなると肉の消費レベルは増加し、畜産動物への共感が強くなると消費レベルは減少した。行動コントロールの自覚は、いずれの国でも肉の消費を減らす意思の程度を予測できる強い因子であった。
畜産動物への共感、肉の味を楽しむ傾向はそれぞれ、赤身肉と鶏肉の消費量を最も正確に予測できる因子であり、従って、食肉消費を減らすための介入策においては、これらをターゲットにすると同時に人々の食事選択へのコントロール意識を高めることが最も効果的である。
* 社会心理学の計画行動理論における構成概念に一つで、ある行動が自分でコントロールできる範囲内にあるという認識を指し、健康行動を含む様々な行動の分析において広く用いられている。
Katherine Northrope, Tiffani Howell, Emiko S Kashima, Benjamin Buttlar, Gudrun Sproesser, Matthew B. Ruby
2024/01/09
An Investigation of Meat Eating in Samples from Australia and Germany: The Role of Justifications, Perceptions, and Empathy