論文概要
背景・目的: プラントベースの食事では心血管疾患のリスクが減少するが、その一方で、特にビタミンB12をはじめとする特定の微量栄養素に欠乏をきたすリスクは増加する。客観的な栄養評価なしにサプリメント(栄養補助食品)の内服を続けることが、これらの欠乏を予防するうえで十分なのかについては確立されていない。本研究では、若く健康で身体活動レベルの高いドイツ人で、雑食・ラクトオボベジタリアン・ヴィーガンの成人を対象として、栄養摂取量・血中のバイオマーカー・サプリメントの摂取状況・ビタミンB12の栄養状態について分析した。
方法: ドイツ・フライブルク市において、オンライン広告と地元新聞を通じ、年齢・性別・配偶者の有無・身体活動および教育のレベルが同等の115名の参加者を募集した(雑食40人・ラクトオボベジタリアン37人・ヴィーガン38人)。
結果: 摂取カロリーと主要栄養素の分布に関しては3つの食事グループ間に違いはなかったが、食物繊維やコレステロール、数種類のビタミンの摂取量において大きな違いが見られた。食事からのビタミンB12の摂取量は、ヴィーガンで最も少なく0.43(0.58)μg/日、これに対して雑食の人では2.14(2.29)μg/日、ラクトオボベジタリアンでは0.98(1.34)μg/日であった。
血中バイオマーカー36項目に関する多変量解析では、3つの主要なバイオマーカーが参加者の食事グループ分類(クラスタリング)に最も関わっており、これにはビタミンB12の状態についてのバイオマーカー(ビタミンB12・holoTC・Hcy)、鉄(鉄・フェリチン・トランスフェリン)、脂質代謝(ビタミンA・HDL・LDL・総コレステロール・TAG)が含まれていた。従って、3つの食事グループの健康状態に対して最も深く影響しているのはこれらのバイオマーカーが示す代謝経路に関わる栄養素である。
ビタミンB12の状態(4cB12を含む)に関する分析では、雑食の参加者とヴィーガンではビタミンB12は十分であったが、ラクトオボベジタリアンではビタミンB12の栄養状態は不良であった。ラクトオボベジタリアンの参加者では、ヴィーガンに比べてビタミンB12のサプリメントを服用している割合は低かった(それぞれで51%と90%)。
結論: 健康状態としては良好で均質なドイツ人参加者の集団においても、食事内容と健康に関するバイオマーカーには、3つの食事グループごとに測定可能な違いが見られた。プラントベースの食事、特にヴィーガンの食事は、脂質代謝と血糖のコントロールにおいて最も良好なパターンを示したが、ビタミンB12の摂取量は最も少なかった。健康なヴィーガンではビタミンB12を補給することで(中央値250μg/日、2年間)、雑食の健康な人と同等に十分な栄養状態が保たれていた。
Maximilian Andreas Storz, Alexander Müller, Lisa Niederreiter, Amy M. Zimmermann-Klemd, Martin Suarez-Alvarez, Stefanie Kowarschik, Monique Strittmatter, Evelyn Schlachter, Cristian Pasluosta, Roman Huber, Luciana Hannibal
2023/10/18
A cross-sectional study of nutritional status in healthy, young, physically-active German omnivores, vegetarians and vegans reveals adequate vitamin B12 status in supplemented vegans