論文概要
赤肉の過剰摂取は、公衆衛生と環境に対して重大な影響を及ぼしている。プラネタリーヘルスダイエット* を達成するためには、全ての先進諸国で赤肉の消費を減らす必要がある。しかし、この問題に対する政策的行動は不足しており、赤肉の消費削減における障壁をいかに克服するかについて探索した研究も十分とはいえない。
本稿では、理念 ideas・利害 interests・制度 institutionsとそれらが政策結果に及ぼす影響を軸とした「3つのI」による政策転換のフレームワークを用いて、過去にオーストラリアでタバコを規制する制度が施行され、成功した経験が、今後のオーストラリアにおいて赤肉の消費削減を達成するうえで教訓となり得るかについて考察する。
利害関係者を対象とした半構造化インタビューの分析から、「3つの “I”」によるフレームワークの説明力を実証するとともに、消費行動の変革を達成するために不可欠となるのは、健康や環境に対する社会的意識の啓発、結束力のある政策ネットワークによる協調行動、政策的介入の漸進的な拡大であることを強調する。さらに、赤肉の過剰消費の削減を目的とした政策に対する障壁の大きさを示しつつ、食肉消費パターンの変化によって政策立案のための好機が近づきつつあることを明らかにする。
* EAT-Lancet ダイエットとも呼ばれ、果物や野菜など加工度の低い植物性食品の摂取を重視し、魚や肉、乳製品の摂取は控えめにする食事法。
Anja Bless
2023/11/23
Learning from the success of tobacco control: how to leverage ideas, interests, and institutions to reduce red meat consumption