論文概要
人類と地球の健康を改善するためには、肉の消費を減らすことが不可欠である。多くの学生が習慣的に食事を摂るために利用する大学のカフェテリアは、肉を使わない食事を新しい世代に普及させるうえでまたとない機会の場であり、こうした食事の入手可能性・価格・調理技術などに関する障壁を検証することができる。本研究では、大学のカフェテリアでベジタリアンの主菜を選ぶ行動について、これに関連する個人の特性を分析し、このような選択が食事に含まれる栄養の質に影響するかどうか、また環境に対してどのように影響しているかを検証した。
大学の大型カフェテリアで習慣的に食事を摂るフランス人学生257人を対象として、反復測定による観察研究を実施した。参加者は、3ヶ月間にわたりカフェテリアで食事をする毎に食事トレイの内容を写真に撮影した。オンライン・アンケートでは、参加者の(年齢・性別・専攻分野・教育歴など)社会人口学的な特性について調べるとともに、行動変容に関する能力・機会・動機(COM-B)のモデルにもとづいてベジタリアン食の選択を決定する要因について検討した。
回答者の社会人口統計学的な特性のうち、ベジタリアンの主菜を選ぶ頻度と有意に関連していたのは、女性であるという特性のみであった。ベジタリアンの主菜を選ぶ割合は、肉へのこだわりが強いと低くなり(負の相関:p<0.001、η2=0.189)、環境に関する知識が増えるほど高くなった(正の相関:p=0.034、η2=0.018)。また、食品を選ぶ際の動機とも正の相関があり、アニマルウェルフェア(p<0. 001、η2 = 0.062)、健康(p < 0.001、η2 = 0.044)、倫理(p = 0.002、η2 = 0.039)、自然さ(p = 0.010、η2 = 0.026)、宗教(p = 0.014、η2 = 0.025)、気分(p = 0.022、η2 = 0.020)に関する動機が強まると、ベジタリアンの主菜を選ぶ割合は高くなった。
ベジタリアンの主菜を選ぶ頻度が高い学生では、食事トレイに載せられた食品内容はより健康的で(p = 0.023, η2 = 0.020)、より環境に配慮したものとなっていた(p < 0.001, η2 = 0.349)。これらの知見は、大学のカフェテリアで学生がベジタリアンの主菜を選択する傾向にはばらつきがあり、その要因として関与しているのは所定の食環境における動機であることを強く示唆している。
Laura Arrazat, Fanny Teil, Sophie Nicklaus, Lucile Marty
2025/03/01
Sociodemographic and behavioural determinants of vegetarian main dish selection in a French university cafeteria: A three-month observational study with repeated measures