論文概要
背景: 食生活は、米国における主要な死因である心血管疾患の発症リスクに大きく影響する。ベジタリアンの食事パターンが臨床診療ガイドラインに含まれることが増えてきたことから、こうした食生活によって心血管疾患のリスクが軽減されるのか、またどのような形で軽減されるのかについて最新のエビデンスを検証する必要がある。
目的: ベジタリアン・ヴィーガン・非ベジタリアンの食事パターンと心血管疾患に関する健康アウトカムおよび危険因子の関係について、一般人口集団において健康と推定される成人(18歳以上)を対象としたシステマティックレビュー(SR)をさらに総合的に検討した。
方法: 2018年から2024年3月までに発表されたSRを検索するため、MEDLINE・CINAHL・Cochrane Databases of Systematic Reviews・Food Science Source・SportsDiscusのデータベースを用いた。対象としたSRおよびメタアナリシスでは、心血管疾患リスク因子および疾患の転帰との関係について、ベジタリアン食・ヴィーガン食と非ベジタリアン食で比較検証されていた。SRは2度にわたってスクリーニングされ、研究の質に関する評価はAMSTAR2で行った。全体的なエビデンスの確実性はGRADE (Grading of Recommendation, Assessment, Development and Evaluation)の方法を用いて評価した。
結果: データベースの検索から758報の研究論文が特定され、SRとしては21報が包含基準を満たした。一般人口集団を対象としたSRは基本的に観察研究に基づくエビデンスであった。非ベジタリアン食と比較した場合、ヴィーガン食を含むベジタリアンの食事パターンでは心血管疾患の発症リスク・死亡リスクはいずれも低下しており、発症の相対リスクは0.85(0.79、0.92)、死亡のハザード比は0.92(0.85、0.99)であった。
非ベジタリアン食と比較した場合、ヴィーガンの食事パターンでは、心血管疾患の危険因子の低下が見られ、収縮期血圧の平均差(95%CI)では 2.56 mmHg(-4.66、-0.445)の低下、低比重リポ蛋白コレステロールでは 0. 49 mmol/l(-0.62、-0.36)の低下、肥満度では 1.72 kg/m2(-2.30、-1.16)の低下となっていた。また、新しいメタアナリシスでは、血清CRPにも 0.55mg/l(-1.07、-0.03)の低下が見られた。
結論: 心代謝の危険因子や心血管疾患の発症・死亡のリスクを低減するうえで、臨床医によるベジタリアン食の推奨は考慮されて良い。
Matthew J. Landry, Katelyn E. Senkus, A Reed Mangels, Nanci S. Guest, Roman Pawlak, Sudha Raj, Deepa Handu, Mary Rozga
2024/09/28
Vegetarian dietary patterns and cardiovascular risk factors and disease prevention: An umbrella review of systematic reviews