論文概要
動物を人間の食料として消費し、医薬品や娯楽のために利用する現状は、環境と人類の健康、アニマルウェルフェアの観点から問題となっている。本研究では、動物に害を与えるような態度や行動を減らすことを目的とした介入策について検討した。
動物に対する偏見の根底にあるメカニズムは、人間の外集団(アウトグループ)に対する偏見と類似していることから、我々は偏見に関する行動科学研究の知見を総合して種差別を減らすための介入法をデザインした。研究1(603名)および研究2(600名)では、介入を受けるグループと受けないグループに参加者を割り当てた。これに続いて、動物に害を与える態度や行動(研究1・2)、これらを媒介すると想定される要因(研究2)について測定を行った。
偏見を減らす方法に基くこの介入法によって、参加者は動物に害を与える行動を減らす意思をより強く持つようになった(研究1・2)。さらに、介入から1週間後に実施した測定では、動物性食品の消費量は減少していた(研究2)。研究1では介入による種差別的な態度への効果は見られなかったが、より検出力の高い研究2では有意な効果が見られた。
最後に、研究2 に関するパス解析から、動物の立場に立つことや(怒りや警戒など)不正に関連する感情は種差別を減らすことに関わっていることがわかった。一方、動物の扱いについて知ることにはそのような効果はなかった。以上の結果から、本研究で用いた介入法は種差別を減らすことによって持続可能性に向けた重要な一歩となると考えられる。
Mariëlle Stel, Aiko Unterweger
2025/02/06
Towards sustainability by reducing speciesism: The effect of a prejudice-based intervention on people's attitudes and behaviours towards animals