論文概要
背景: 卵とコレステロールの摂取が心血管系の健康や長寿にとって有害かどうかについては盛んに議論されているが、大規模なコホート研究に基づくデータは乏しい。本研究の目的は、卵およびコレステロールの摂取と、米国における死亡率(全死因・心血管疾患・その他の原因によるもの)との関連を検討することである。
方法と結果: 1995から1996年までに米国内の6州と2都市から、全体で521,120人(50~71歳、平均年齢=62.2歳、女性41.2%、非ヒスパニック系の白人91.8%)の参加者を募集し、2011年末までの期間で前向きの追跡調査を実施した。これまでに有用性を検証されている食物摂取頻度調査票を利用し、全卵、卵白/代替卵およびコレステロールの摂取量を評価した。個別の原因に関するハザードモデルにおいてはリスク間の競合を考慮し、カロリー量で調整した摂取量(1日2,000kcalあたり)の最低5分位を基準として用いた。
16年間(中央値)の追跡期間中において、心血管疾患による死亡38,747例を含む129,328例の死亡があった。全卵とコレステロールの摂取量はいずれも、全死因死亡率、心血管疾患による死亡率、がんによる死亡率と正の相関関係があった。多変量調整モデルでは、1日あたり全卵の半分を摂取する毎に関連する死亡率は上昇し、そのハザード比*は全死因で1.07、心血管疾患では1.07、がんで1.07であった。1日当たり食事中のコレステロールを300mg多く摂取する場合、全死因・心血管疾患・がんによる死亡率は、それぞれ19%・16%・24%の上昇が見られた。
媒介モデルによる推定では、全卵の摂取に関連する死亡率のうち、コレステロール摂取によるものは全死因の63.2%、心血管疾患の62.3%、がんの49.6%であった。卵白/代替卵を摂取していた参加者では、他と比較して全死因死亡率、脳卒中・がん・呼吸器疾患・アルツハイマー病による死亡率が低かった。仮に全卵の半分を、同量の卵白/代替卵・鶏肉・魚・乳製品・ナッツ類/豆類などに置き換えた場合、全死亡・心血管疾患・がん・呼吸器疾患による死亡率は低下した。
研究の限界としては、観察研究であること、参加者の自己報告に基づいていること、食事および生活習慣の危険因子に関して広範に調整を行っているにもかかわらず要因間に交絡が残存していることなどが挙げられる。
結論: 卵およびコレステロールの摂取は、全死因・心血管疾患・がんのいずれにおいても死亡率の上昇と関連していた。卵の摂取に関連する死亡率の上昇に関しては、コレステロール摂取による影響が大きかった。本研究で得られた知見からは、心血管系の健康と長寿を推進するためには、コレステロール摂取を制限し、全卵を卵白/代替卵または他の代替タンパク源に置き換える必要があると考えられる。
*単位時間当たりにイベントが発生する相対的な危険度(ハザード比が1.07の場合、危険度は1.07倍となる)
Pan Zhuang, Fei Wu, Lei Mao, Fanghuan Zhu, Yiju Zhang, Xiaoqian Chen, Jingjing Jiao, Yu Zhang
2021/02/09
Egg and cholesterol consumption and mortality from cardiovascular and different causes in the United States: A population-based cohort study