論文概要
食料の生産と消費における持続可能性は世界的な課題であるが、持続可能な食品技術を導入することで対応することができる。培養肉はそうした技術のひとつであり、従来の食肉生産に比べてより人道的で環境負荷が少ないうえ、食料安全保障の向上にも寄与することができる。しかし、培養肉に関しては欧州食品安全機関 European Food Safety Authority (EFSA) をはじめとする行政による安全規制、食品業界からの抵抗、さらに消費者の不信感などの問題があり、その受容は進んでいない。
新しい食品を定期的に購入し、食べるためには消費者の信頼感が極めて重要であることから、本研究では信頼感に関するドイツ消費者のプロファイルを調査した。オンライン調査で消費者1099人から得られたデータに潜在プロファイル分析を用いて、培養肉とその関係者に対する信頼感において異なる4種類のプロファイルを特定した。
このうち、「信頼感を持つ消費者」のプロファイルは最も少人数のグループで(17.5%)、培養肉に対する信頼感が最も強く、培養肉を購入する意思も最も強かった。これらの人々は、より若く、教育水準が高く、高収入であり、培養肉を採り入れる意思が最も強く、新しい食品技術に対する嫌悪感は最も弱い。しかし、24.3%は「不信感を持つ消費者」であり、EFSA、培養肉、他のドイツ市民や食品メーカーに対して不信感を抱いており、培養肉を購入する意思は乏しい。これらの人々は56歳以上で、教育水準は低く、低収入であり、新しい食品技術に対する嫌悪感は最も強い。
「楽観的な消費者」は、最も大きなグループであり(37.5%)、「懐疑的な消費者」(20.7%)と同じく、培養肉に対する信頼感や、培養肉を購入する意思は定まっていない。これらの消費者はサンプルの60%近くを占めていることから、今後の研究ではこれらのグループとの適切なコミュニケーションの手段をさらに検討し、信頼感を高めることで持続可能な培養肉製品の潜在的な消費者層を拡大することが特に重要となる。
Marie-Catherine Wendt, Ramona Weinrich
2025/04/01
Cultured meat: Identifying trust profiles of German consumers using latent profile analysis