論文概要
本研究には3つの目的がある。その第1は、培養肉に対する消費者の受け入れ方について、米国とシンガポールで比較することである。第2には、米国とシンガポールで培養肉に対する受け入れ方が異なることを説明するために食行動の動機を調べることである。ここでは、具体的には、世間に対して自分をポジティブに見せたいという、社会的イメージにもとづく動機に注目した。第3に、培養肉に関して、有名人や専門家のインフルエンサーがソーシャルメディアで伝える情報に触れることで、人々の受容態度に影響を与えるかどうかを評価した。
分析結果によれば、シンガポールの参加者では、米国の参加者に比べて培養肉を受け入れる傾向は大きく、文化間におけるこのような違いは、シンガポール人では社会的イメージが食行動の動機となっていることによるものであった。すなわち、両国間での培養肉に対する消費者の受け入れ方の違いは、良好な社会的イメージを保つことが食行動の動機になるかどうかの違いとして説明できる。
シンガポール人の文化的特質である「キアス kiasu」は、競争で敗れたり取り残されるのを恐れる態度を意味するが、このような気質が動機となって、他国よりも先駆的な国民であるというイメージを表現するために、培養肉という革新的な食品への受け入れ姿勢を高く示しているのかも知れない。また、培養肉について有名人や専門家がソーシャルメディアで伝える情報は、両国の参加者における受容態度に影響していないことも明らかになった。
新しい食品に関わる産業やマーケティングの担当者は、メディア報道やソーシャルメディアにおいて「世界初の生産ライン」「初の技術的ブレークスルー」など、培養肉の「初めて」を強調することで、製品のブランディングを促進することが可能であり、これはとりわけ社会的イメージに対する関心が高い市場において有効である。
Mark Chong, Angela K.-y. Leung, Verity Lua
2022/03/01
A cross-country investigation of social image motivation and acceptance of lab-grown meat in Singapore and the United States