論文概要
食肉の消費が動物や環境、人間の健康へ及ぼす悪影響は、かつてなく切迫したものとなっている。ヨーロッパにおいて食肉消費の削減が進んでいることを示したデータもあるが、概して消費者は食肉消費を大幅に減らすことに消極的である。本研究では、ドイツ(1000人)とフランス(1000人)の全国代表サンプルを対象として、食生活のパターンと培養肉に関する認識を調査した。参加者はイプソス・パネルを通じて募集され、オンラインで実施した調査において、現在の食肉消費量と今後の見込み、および培養肉に関する認識について回答した。
その結果、フランスではベジタリアンの割合が比較的低いことがわかった。一方、ドイツでは制限なく肉を食べる人は少数であり、肉食を減らす理由として最も一般的だったのはアニマルウェルフェアへの関心であった。培養肉の市場は、両国において相当の規模で存在するが、フランスに比べてドイツの消費者は培養肉という概念に対してより前向きな姿勢であった。
意外な結果としては、培養肉を受け入れる姿勢が農業従事者や食肉加工従事者でより顕著であったことであり、このことは、現在の食肉生産の方法に極めて近い立場にある人々が代替肉製品を選好する可能性が非常に高いことを示している。培養肉を推奨するメッセージについては、動物や環境への懸念を取り上げるよりも、抗生物質に対する耐性や食品の安全性に関する問題を取り上げるほうが有効であるという結果も一部に見られた。消費者はまた、遺伝子組換え原料を含まないのであれば培養肉を選ぶ可能性は非常に高いと予測していた。
全体として本研究の結果は、ドイツとフランスには非常に大きな培養肉の市場が存在することを示し、この市場において培養肉の受容を推進するために考えられる手段のいくつかを明らかにした。最後に、これら両国は培養肉に関して極めて有望な市場であり、また抗生物質を使用していないことは培養肉の受容を進めるうえで説得力のあるメッセージとなることを強調する。
Christopher Bryant, Lea van Nek, Nathalie C. M. Rolland
2020/08/21
European Markets for Cultured Meat: A Comparison of Germany and France