論文概要
長年にわたり、大手スーパーマーケットや外食企業のサプライチェーン管理者は、農場や食肉処理工場におけるアニマルウェルフェアについて監査を行ってきた。その中には他に比べてより効果的なプログラムもある。ここでは、食肉処理工場におけるアニマルウェルフェア監査のために非常に効果的なプログラムを早期に実装した事例について述べる。このプログラムは1999年に実施され、そこから得られた教訓は今日でも有効である。
このアニマルウェルフェア監査プログラムが効果的なものとなった主な要因は4つある。それは、 (1) 企業経営陣が、アニマルウェルフェアに深刻な問題を抱える工場を視察したことで、食肉処理工場の状況を改善しようという意欲を持ったこと、(2) 牛肉・豚肉工場の監査に使用されたアニマルウェルフェアの基準がシンプルで理解しやすく、監査に不合格となる条件について明確な指針が示されていたこと、(3) 複数の営利企業が多数の食肉処理工場で同じ基準を実施していたこと、(4) 高価な新しい設備を大量に購入するのではなく、既存の施設を修繕し、管理を改善することに重点が置かれていたこと、などである。高価な改修が必要となったのは、75工場のうち3工場だけであった。
この事例に関して、サプライチェーン担当者がアニマルウェルフェア向上のために有効なプログラムを実施する際の、獣医師・経営コンサルタントによる支援のありかたについても考察する。営利事業において実用性のあるアニマルウェルフェア評価基準は、研究目的で使用される評価基準よりも簡明である必要がある。
Temple Grandin
2023/08/11
A Successful Case of Implementation of Farm Animal Welfare Audits by Large Meat Buyers