論文概要
肉の消費を削減する方向への食生活のシフトは、先進国・新興国など、消費がすでに非常に高い水準にある地域、あるいは消費が急速に拡大している地域(中国など)において、生物多様性の喪失と気候変動に対抗するために有効な戦略である。生物多様性の劣化・喪失はかなりの程度にまで進んでおり、世界における森林伐採の70%は、畜産用飼料を栽培するための伐採に起因するものである。さらに、世界全体の人為による温室効果ガス排出量の約14.5%は、畜産(主に工場畜産)に起因すると推計されている。
ここでレビューする研究は、先進国・新興国において食肉消費の削減を実現する可能性に焦点を当てたものである。肉の消費を減らすことによってさまざまなプラスの効果がもたらされるが、その中でも特に重要な効果として、世界における生物多様性の喪失を軽減し、持続不可能な農法の必要性を減らし、温室効果ガス排出量を低減できることが挙げられる。
本稿では、学際的かつ多要因を含むアプローチによって、食肉の消費削減を促進するうえで障壁や契機となる要因、さらに今後の取り組みについて検討する。ここに提示する知見は、人々の肉食行動に影響を与える様々な要因(個人的および社会文化的な要因、外的要因を含む)についての系統的なメタアナリシスから得られたものである。
行動に影響を与える最も重要な要因は、感情や認知的不協和(知識、相反する価値観、実際の行動との間に生じる不協和)、そして社会文化的要因(社会規範や社会的アイデンティティなど)であると考えられる。ターゲットとする要因や人々のグループによって適切な戦略は異なり、例えば、男性や高齢者に対しては、健康上のメリットを説明する、あるいはフレキシタリアニズム(肉の消費量を減らす)を勧めることなどが最も有望なアプローチとなるかもしれない。一方、認知的不協和のような障壁に対処するためには、感情に訴えるメッセージを提供したり、新しい社会規範を促進したりすることが推奨される。
Susanne Stoll-Kleemann, Uta Johanna Schmidt
2016/10/06
Reducing meat consumption in developed and transition countries to counter climate change and biodiversity loss: a review of influence factors